その動画、何回見返しましたか? ~一回きりで楽しむ良さもある~
先日、スマートフォンに保存した写真や動画を整理していて、旅行に行ったときに撮った動画を発見しました。水晶玉をまるで宙に浮いているかのように見せるパフォーマンスです。路上のパフォーマンスを見た私は、ポケットの中からサッとスマホを取り出し熱心に動画を撮りました。目の前で素晴らしい生のパフォーマンスが行われているにもかかわらず、私の視線はスマホの画面。
(ぱち......ぱち......ぱち......)
脇に力を入れて画面がぶれないように慎重に拍手をして動画の撮影が完了。私は満足してその場をあとにしました。
それから10ヶ月。一度も見返すことなく、その動画を削除することになりました。
大阪市立放出小学校 教諭 大吉 慎太郎
晴れの舞台はやっぱり残したい!?
気がつけば年度末。今の学級で過ごす時間も残りわずかとなりました(これを書いている時点で20日ほどです)。
各クラスの最後の参観では一年の締めくくりとして発表会形式の授業を行ったところも多いのではないでしょうか。運動会や学習発表会などの発表の場、入学式や卒業式の晴れの舞台など、学校の行事にはわが子の成長が観られる機会がたくさんあるのですが、これらの学校行事ですごく気になることがあります。
それは保護者の方がジーッとしておられることです。
みなさん、とても集中しておられます。
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動画を撮ることに。
「気軽に撮れる」は長所?短所?
現代では、スマホを一人一台持っていることはほとんど当たり前、小学生ですら持っていることが珍しくありません。カメラ機能を使って日常の一部を切り取って、写真や動画として残すことは驚くほど簡単になりました。
スマホに保存しておけば、何度でも見返すことができます。その日、都合が悪く足を運べなかった家族や親戚とも動画を見ながら子どもの成長の楽しみを共有できるなど、良い面がたくさんあります。
しかし、その反面、少し寂しさを感じてしまうこともあります。
(ぱち……ぱち……ぱち……)
スマホを片手に持っているので、もう片方の手しか使えないため、うまく拍手ができません。しかも、録画中の画面をできるだけ揺らさずに。
たしかに、動画で保存することは便利ですし、なにより楽しいです。さきほども書いたとおり、その場にいない人とも成長を共有できます。しかし、生だからこその楽しさや感動があるのではないかとも感じます。
一回きりの発表を隅から隅まで見て生で味わう。そして、その良さを感じたら全力で拍手を送る。そういう楽しみ方もあります。
家に帰って、一緒に動画を見ながら「がんばったね」と励ましてあげることも楽しみの一つかもしれません。それと同時に、子どもの発表を目の前にして、その場で拍手を送る。拍手でその発表にいっしょに参加し、ともに作り上げる。そういう楽しみ方もあります。
保存して、じっくりと楽しむのもいいですが、発表にいっしょに参加するのも素晴らしい体験ですよ。ぜひ、体験してみてください。
ICTの良さ、体験の良さ
前回まで、『Kahoot!』でのICT活用や『Scratch』を使ってのプログラミング学習などを勧めておきながら、今回は機器ではなく、生の良さを書いたわけですが、何事も使い方です。
もちろん、ICT機器には便利な面がたくさんありますし、活用していくことで子どもの学びが深まることは間違いありません。また、その活用は今後もどんどん加速していくでしょう。同時に、生で感じることや実際に体験することの良さもあります。
子どもだけでなく、われわれ教師や保護者の方もそれぞれに良さがあることを知っておきたいですね。
大吉 慎太郎 (おおよし しんたろう)
大阪市立放出小学校 教諭
教務主任として「学校の業務の改善」と「行事の精選」を行なっています。また、「プログラミング教育」や「ICTの推進」にも取り組んできました。授業におけるICT活用についての実践を多くの先生と共有しあっていきたいと考えています。
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