2019.12.13
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教科の中でのプログラミング ~算数の授業でコンパスの製造方法から教えますか~

 実は私......プログラミングをやったことはありません。そんな私でもプログラミングを活用した授業を実施しています。

「プログラミングができること」と「プログラミングを活用して授業ができること」は全くの別問題です。今回は、「プログラミングを活用して授業すること」について紹介します。

※以前に学びの場.comに投稿した指導案をベースに紹介します。そちらの指導案も合わせてご覧ください。

大阪市立放出小学校 教諭 大吉 慎太郎

「20問解きなさい」

授業中や宿題で
「○ページの①~⑳まで解きましょう」
こんな指示をよくしませんか。練習問題の重要性を否定はしませんし、理解を深めるためには質はもちろんですが、量も必要でしょう。私もよくしています。でも、できるなら子どもたち自身が自ら望んで取り組むのが理想ですよね。

算数ニガテなあの子が進んで計算を

今回、紹介するのは5年生の算数「正多角形と角」です。正多角形の作図に関しては、プログラミング活用と特に相性のいい単元として紹介されていることも多いです。もちろん、作図が行えるようにプログラミングを組むことに試行錯誤してもいいのですが、算数の時間では、算数の力を高めることも意識していきたいと考えています。
私はScratchで上記のようなプログラムを利用しました。授業の中ではブロックを組むことではなく、数字の変更を使用します。まずはわかりやすい四角形を作図し、続いて三角形を作図しました。ここで多くの子どもたちは既存の知識(三角形の内角の和は180°)から「3回繰り返す」「60度回す」と入力してしまいがちです。しかし、これでは正三角形を作図することはできません。「○度回す」は外角を表していることは伝えてあげるとよいでしょう。

いくつか正多角形を作成し、そのときの「辺の数」と「角度」を表にまとめていると「辺の数×回す角度=360°」になるということに気が付くと思います。授業ではそこで、本当にそのきまりが正しいのかどうか、他の正多角形の場合も確かめました。私が指定したものから、自分たちで「正○角形」ではどうかということを確かめるようにすると、
「正○角形はどうだろう。」
   ↓
360°になるように計算
   ↓
「プログラミングで確かめよう。」
   ↓
「できた!」
   ↓
「じゃあ正○角形もやってみよう。」
というように、子どもたちは夢中で取り組みました。いつもであったら教科書やドリルの練習問題を「20問解きなさい」といってできた子から終わるところを、解いても解いても……、ひたすら計算に取り組んでいました。それは算数が得意な子ばかりではなく、算数がニガテな子でさえも解き続けていました。この日の授業では「20問解きなさい」とは言っていませんが、子どもたちは結果的に20問以上の問題を自から解いていたことになります。

プログラミングは文房具

本来の「文房具」には諸説あるみたいですが、学校教育で使う道具、勉強道具という意味で「文房具」という言葉を使わせていただきます。授業では教科や単元によって多様な文房具を使用します。それは、その文房具を使えるようにするためというより、「文房具を使って教科の力をつける」「教科を理解する」という目的でしょう。

今回の記事を読まれて「え、プログラミングを使った実証実験?」と感じられた方もいるかもしれません。なぜなら、「プログラミングを組む」という活動はほとんどしていません。しかし、教科の中でのプログラミングはこれで良いと考えます。

たとえば、他の文房具を使用するときに「コンパスはこのように製造されて……」「コンパスの仕組みは……」「分度器とはそもそも……」など解説はしないはずです。コンパスはコンパスとして、分度器は分度器として使用方法や使用する場面を伝えます。プログラミングも同じです。プログラミングを使用することで正確な図形が簡単に描けるということを学べば十分です。あまりプログラミングを特別視せずに今までの授業を大切にしながらプログラミングの力を借りていけばよいでしょう。

追伸
私自身もそうだったのですが、コンパスや3色ボールペンなどの文房具を「分解しては組み立て……」遊んだ経験のある方はいませんか。そうして私は、文房具の仕組みや部品に関する知識が増えて、友だちの文房具が壊れたら修理できるようになりました。これは学校や先生に教えてもらったものではありません。ふだん使っているものは分解し、自分なりの部品を足して遊びたくなってくるものです。プログラミングも同じではないでしょうか。授業の中で使用していくことで、子どもなりの分解や改造を試したくなるものです。

大吉 慎太郎 (おおよし しんたろう)

大阪市立放出小学校 教諭
教務主任として「学校の業務の改善」と「行事の精選」を行なっています。また、「プログラミング教育」や「ICTの推進」にも取り組んできました。授業におけるICT活用についての実践を多くの先生と共有しあっていきたいと考えています。

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