2020.04.21
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本なんか読まなくても、立派な大人になれます。

きっと100人の先生がいたら、その100人とも、「本は読んだ方がいい」と子どもたちに言うでしょう。
私だって、「本を読むな」と言っているわけではないのです。
ただ、「本をたくさん読んでいることと、立派な大人になることは、ぜったい関係ない」と言いたいだけなのです。

東京都内公立学校教諭  カナダライアソン大学認定ファミリーライフエデュケーター(家族支援職)  特定非営利活動法人手をつなご(子育て支援NPO)理事 林 真未

本の画像

Photo by Tom Hermans on Unsplash

「読書家」≠「立派な大人」という事実

「本をたくさん読んでいることと、立派な大人になることは、まったく関係ない」
と気づいたのは、私のパートナーが、
「俺は、一生で10冊足らずしか本を読んでいない」
と豪語するのを聞いてからです。
彼は、私の友人たちがこぞって
「気難しくわがままな林真未のパートナーが務まるのは、彼だけ」
と言うほどの包容力を誇る「立派な大人」。
その彼が、本をほとんど読まないというのです。

考えてみると、私が心酔する山本実千代さん(拙著『困ったらここへおいでよ。日常生活支援サポートハウスの奇跡』の主人公)も、尊敬する上野和香子さん(柔道指導者/女子柔道オリンピアン上野雅恵さん・順恵さん、インターハイ3連覇・巴恵さんの柔道3姉妹の母)も、本をたくさん読むタイプではありません。けれど彼女達も紛れもなく、「立派な大人」。

一方、私は、大の読書好き。これまで何冊の本を読んだかわかりません。
小学生の頃は、学校で一番たくさん本を読む子だからと、司書の先生にかわいがられていましたし、国語の成績も抜群でした。
けれど大人になった私は、「立派な大人」とは程遠い、自他ともに認める「気難しい子ども(内面的に)」。
皆さんの周りにも、大の読書家だけれど、必ずしも尊敬できるキャラクターとは言い難い、私のような方がいるのではないですか(^_^;)。

こうして、なんとなく信じていた「読書をしていたら、立派な大人になれる」という私の中の神話は、あえなく崩れ去ったのでした。

紙よりも自然を。読書よりも語らいを。

「ブックスタート」という活動をご存知ですか。自治体等と協働して、新生児のいる家庭に絵本を手渡す活動です。

赤ちゃんの時から本に親しむ。
それに異論を唱える人はいません。だから、多くの場所で歓迎され、実施されています。

けれど、もし私が新生児の親なら、絵本はいらないです。
私なら、赤ちゃんには、木の葉の絵の描かれた紙よりも、本物の木の葉を触らせたい。
絵本に限らず、本って、そこに書かれた(描かれた)内容を味わえて初めて、価値のあるものなのではないでしょうか。
0歳児には、身近にあるさまざまなものも、赤ちゃん向けの絵本も、同じように初めて出会う、同列の「物」。
それなら私は、赤ちゃんを、少しでもたくさんの自然物に出会わせたい。
まずは、海や緑や風や木や石や……、そんな、いろいろな自然との出会いを最優先したいと思うのです。
そして、赤ちゃん向けの絵本なら、布絵本の方が好きだな。

同じように、学校の子どもたちにも、いろいろなものに出会わせたい。
学校には、生身の人間をふくむたくさんの刺激にあふれています。
それなのに、わざわざ本に閉じこめなくてもいいではありませんか。

もちろん、「読みたい」という子から本を奪う必要はありません。
だけど、それなら、
同じように、「読みたくない」という子に無理に本を読ませなくてもいいのではないかと思うのです。

こんなふうに思っている、私のクラスの図書の時間は、実は、ちょっとにぎやかです。
笑いあって語り合って、友だち同士で本を一緒に見るのもOKにしているので、「図書は静かに本を読む時間」という学校の常識を逸脱しています。
あ、ここでもヒソカに「学校ゲリラ」している事がバレてしまいましたね(^_^;)。

でも、一人で本を読むのは家に帰ってからでもできます。
だから私は、図書の時間は、学校でしかできない、本を真ん中にした友だちとの語らいの時間にしてあげたいと思っているのです。

新学習指導要領のメインテーマ「主体的で対話的な深い学び」に添っているということで、許してほしい……。

本は愉しみのためにある。

本は、愉しみのために読めばいいのです。

読み解く力がつくとか、道徳的精神の涵養とか、人格の育成とか、そういう諸々を期待することは、逆に、本という存在の価値を下げる、と私は思っています。

そのような効果を、子ども自身が期待して読むなら、それも愉しみのうちだし、きっと意義のある読書です。
けれど、そのような効果を他者(親や先生や大人たち)が期待して、子どもに本を読ませたとたんに、読書はつまらないものになってしまう。

読書をつまらないものにしてしまうのは、魂をこめて創られた本に失礼です。
もったいない話です。

だから、子どもたちには、ただまっすぐに、愉しみのために本を読んでもらいたい。
将来のためになんて、勉強のためになんて、読まなくていい。
本を読む以外のことが好きなら、それでいい。

だって、本なんか読まなくても、立派な大人になれるのですから……。



(余談ですが、一生で10冊くらいしか読んだことがないと変な自慢をしていた私のパートナーは、50歳を過ぎてから、よく本を読むようになりました。今、本を読まない子どもたちも、もしかしたら、30年後、40年後に、そうなっているかもしれません)

林 真未(はやし まみ)

東京都内公立学校教諭
カナダライアソン大学認定ファミリーライフエデュケーター(家族支援職)
特定非営利活動法人手をつなご(子育て支援NPO)理事


家族(子育て)支援者と小学校教員をしています。両方の世界を知る身として、家族は学校を、学校は家族を、もっと理解しあえたらいい、と日々痛感しています。
著書『困ったらここへおいでよ。日常生活支援サポートハウスの奇跡』(東京シューレ出版)
『子どものやる気をどんどん引き出す!低学年担任のためのマジックフレーズ』(明治図書出版)
ブログ「家族支援と子育て支援」:https://flejapan.com/

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