2019.08.20
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サークル対話で大切にしたいこと(4)

ここまで何回かに分けて、1年生1学期のサークル対話「つたえる」の様子を紹介してきました。今回は、そのサークル対話で大切にしたいことについて書きたいと思います。

お茶の水女子大学附属小学校 教諭 本田 祐吾

1年生の1学期は、まだ話し手の話(発表)だけで話し手の伝えたいことがすべて伝わるわけではありません。そこで、聴き手の子どもたちが質問をすることが大切になってくるのですが、子どもたちが活発に質問をし、対話的になっていくためには、何でも話して良い、どんな質問でもして大丈夫、という安心感を子どもたちがもてるようになってくることが大切です。
安心感がもてるようになると、「話したい」という子も増えますし、聴き手になった時もたくさんの質問をするようになってきます。とはいえ、必ずしも常に全員が発言し、聴くわけではありません。

では、どのようにして子どもたちが安心感をもてるようにしていけばよいでしょうか。

その一つは、「話さなくても良い」ということもまた、保証されることではないでしょうか。人には好みがあるのですから、子どもにとってもどうしても興味の持てない話題もあります。そうした時に、そういう気持ちをいけないことだと思わせる必要はないのです。ただ、静かにその発表とやりとりを聴いているだけでも良いのです。場合によっては、ちょっと水筒の水をのんでもよいでしょう。
発表している子も、そうした様子を見ながら、「あ、これはみんなあんまり好きじゃないんだな」と感じることもあります。そうした経験を繰り返しながら、私や他者を知ることにもなりますし、話題の選び方を考えることにもなります。
大切なのは、自分の好きなことを相手が好きとは限らない、同時に相手が好きなことを自分が好きとは限らないことを知っていくことであり、そうした異なる他者を尊重することなのです。他者の「好き」を尊重することは、ひいては私の「好き」が他者に尊重されることなのです。

もう一つは、「聴く」ということです。先ほどの好き嫌いにかかわらず、しっかりと他者の話を聴くことは、要求していくべきことです。低学年の子どもたちを見ていてよくあることは、自分が話したいことを話したり、聴きたいことを質問したりし終えると、隣の子と話し始めて、その後の他者の話を聴かないということです。子どもが、自分の話したいことを話しただけで、他者の話に耳を傾けない、そうした時には私はちゃんと聴くように要求します。もしも、たまたま全員が今は聴かなくていいやと判断した時、自分が話し手であったらどうでしょう。次に話すのが躊躇されることもあるかもしれません。こうしたことをちゃんと子どもに伝えるようにしています。サークル対話では、子どもたち自身が話し手であり、聴き手です。自分たちの手で、対話の場を作り上げる意識をもつことが、ここでは、安心感を一人ひとりが作り上げていくことになっているのだと思います。

こうしたことを大切にしながら、サークル対話を積み重ねていくと少しずつ、子どもたちのサークル対話での振る舞いも対話も少しずつ変化してきます。話し手の伝えたいことが上手くつかめない時も、聴くことが育ってくると、子どもたちなりに質問をしながら、話を理解しようとします。1学期は特に、話し手のことを知ろうとする質問も出ますが、自分の知りたいことを聴くことが中心となります。そうした時も、私は、こういう質問がよいなどと言うことはせず、子どもたちの聴きたい気持ちに任せています。その時意識していたのは、教師も知りたいことを聴くことを大事にしつつ、話し手の伝え足りないことを質問することにも気を配ることです。
私は、それに加えて、全員の発表が終わった後、どのような発表と質問があったかを最後にふり返る時間をとり、それを大切にしてきました。

子どもたちが主体的に「つたえる」を行っていくために、教師がどうあるのかはとても大きいように思います。私は教師ではなく、インタープリターとして、子どもたちを互いにつなぐことを大切にしたいと思っています。そしてさらに、子どもたちとことば、社会など、「わたし」と他者・世界をつなぐ存在でありたいと思っています。

本田 祐吾(ほんだ ゆうご)

お茶の水女子大学附属小学校 教諭
ここ数年は、主として低学年を担当し、就学前教育からのボトムアップを大切にした幼小接続期の研究に取り組んでいます。フレネ教育やイエナプラン教育を参考に、その知見を生かして、個別と協働・プロジェクト型の学習を作っています。子どもたち自身の手で学びや生活を創る中で、教師がどのようにあるべきかを模索しています。

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