2019.06.20
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

サークル対話でつくる、子どもたちの生活(1)

現在勤務している学校では、就学前教育からのボトムアップを大切にした低学年教育を行っています。具体的には、サークル対話・計画表にもとづく個別の学習・プロジェクト型の学習を中心に取り組んでいます。今回から、何回かに分けてサークル対話について、紹介したいと思います。

お茶の水女子大学附属小学校 教諭 本田 祐吾

サークル対話はことばの通り、全員がサークル=輪になって話をするものです。
サークルの作り方は、私の学校では4人掛けのベンチを7台と、保護者と子どもで一緒につくった牛乳パック椅子をいくつか使っています。普段から子どもたちの机がグループ机になっているので、教室中央にサークルベンチを置き、その周囲をグループ机が囲むような教室配置になっています。

このサークルを、私のクラスでは生活の様々な場面で使っています。そのサークルを中心とした1日の生活を少し紹介したいと思います。


7時50分。一番に教室に来た子どもの「おはようございます!」の声から、教室が動き始めます。半分くらいの子どもたちが登校する頃になると、自分の荷物を整理し終えた子どもたちが、誰ともなく、教室の隅に置かれた4人掛けのベンチと牛乳パック椅子を運び出し、全員が輪になって座れるように並べます。

8時10分。輪になったベンチに子どもたちが少しずつ集まり、思い思いの場所に陣取ります。後から来た子が座る場所を見つけられないと、座る場所を少しずらして「ここ空いているよ!」と言う子や、周囲を見回し「あそこが空いてる!」などの声を掛けあいながら、一つの輪ができ上がります。

日直は、全員が座ったのを見届けると、朝の健康観察を始めます。健康観察は、両隣に座る子に「元気?」と声を掛けあいながら、互いの今日の体の調子をたずねます。「◯◯さんは、少しおなかが痛いそうです」「◯✕くんは、咳が出るって」隣の子から聞いた、からだの調子を皆に伝えます。

次に、今日の時間割の確認です。朝、ベンチを用意している子たちと別に、1日の時間割を考える子(これも「ひとしごと」です)たちが集まって、時間割を組んでいます。その際、 本校の低学年では、年によって若干違いがありますが、音楽と図画工作は専科になりますので、それと体育の校庭・体育館の使用割り当ては決まっていますので、それを考慮しますが、それ以外は前日までの学習の様子などを考え、子どもたち自身の手で時間割りを考えます。子どもたちなりに、どうしてこの学習を入れるのかをとてもよく考えていて、なるほど、と私も納得するつくりかたをします(話し合いもです)。その子たちが、まず自分たちが組んだ時間割を皆に伝え、それに対しての質問や意見を聞きながら、多数決ではなく、全員で合意をしてその日の時間割が決まります。

実践当初は、自分のしたいことの主張が多く出ますが、日を重ねるうち、“すべきこと”と“したいこと”を考えながら決められるようになります。「今日は、体育がある」「昨日は『えらぶ』の時間が少なかったから、今日は多くした方がいい」など、意見を出し合いながら調整し、時間割が決まります。

時間割を決めたのちは、それぞれの学習計画を立て、1日の学習が始まります。
大抵は計画を立てた後、サークル対話を行っています。このサークル対話は、子どもたちと「つたえる」と呼んでいて、生活の中で発見・経験したことなど、みんなに伝えたいことがある子が一人ずつ話します。一人の話が終わると、分からないことやもっと知りたいことを質問し、自分の思ったことや感じたことを率直に語り合い、聴き合います。この「つたえる」の様子については、次回、書きたいと思います。
 
この「つたえる」だけでなく、国語や算数などの学習でもサークルをよく使います。例えば国語の学習では、教科書の音読を聴き合ったり、物語について話し合うときもサークルになって話すことがあります。
その他にも、学習のふりかえりや連絡、学級で起きた問題を話し合う場面など、1日の生活の様々な場面でサークルになって話し合いをしています。

ともにいる・ともにつくる・話し合い、聴き合う場が常にあることで、学習だけでなく、生活においても自分たちでつくるという意識が育っていきます。

本田 祐吾(ほんだ ゆうご)

お茶の水女子大学附属小学校 教諭
ここ数年は、主として低学年を担当し、就学前教育からのボトムアップを大切にした幼小接続期の研究に取り組んでいます。フレネ教育やイエナプラン教育を参考に、その知見を生かして、個別と協働・プロジェクト型の学習を作っています。子どもたち自身の手で学びや生活を創る中で、教師がどのようにあるべきかを模索しています。

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop