2022.09.08
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学びは遊びから

勉強は自分からしないけど、ゲームなど遊ぶことは自分からすすんでやる子がいると思います。
しかし、教師や保護者の願いとしては、自分からすすんで学んでほしものですよね。
今回はそんな「遊び」をテーマに行った、体育の「マット遊び」の実践になります。

沖縄県宮古島市立東小学校 教諭 五條 晶

【遊びの大切さ】

低学年の担任となり、前回書いた「生活科の大切さ」など改めて気づいたことがたくさんあります。
その中で今回は「遊び」の大切さについて書いていきたいと思います。

「遊び」の中で得るものはとても大きいです。

1つ目は「作り出す発想力の向上」です。
小学生の時、「帰り道に白線だけを歩いて帰れたら勝ちね!」とか「影を踏まずに帰れたら勝ちね!」など遊びながら帰ったことはありませんか?
こうして自分たちでルールを作って、「白線しか渡れない」という違う世界に入り込み遊びながら白線の上でバランスを取って歩く力がついていたのかもしれません。
遊んでいくうちに、「3回まで白線以外を歩いてもOKね!」など、できるかできないかのギリギリのルールを作り出すなど遊び方の工夫をしていました。

2つ目は「コミュニケーションの能力の向上」です。
遊んでいくうちに、作り出されたルールを友達同士で共有するためにコミュニケーションが必要です。
このルールも一人だけ面白いでは、遊びは成立しません。みんなができるかできないかのギリギリを提案しあうところで、交渉し合っていく中でコミュニケーション能力が育まれます。
また、上の学年や下の学年と関わって遊ぶことで、遊びのルールを優しくしたり難しくしたりとみんなで遊ぶことで思いやりや協調性も育まれます。

3つ目は「試行錯誤する力の向上」です。
遊びの中で、簡単にできるようになると「次はこうしよう!」と挑戦していきます。そこで失敗や成功を繰り返し、自然と失敗したら次はこうしようかなあと失敗に前向きな子が増えます。
こうして試行錯誤する力が向上していきます。

学習指導要領でも「遊び」というワードが表記されています。

小学校の体育では、3年生以上は「器械運動」「水泳運動」のように運動と表記されていますが、1・2年生においては「器械・器具を使っての運動遊び」「水遊び」のように「遊び」と表記が変わっています。このように、文科省でも「遊び」を重要視している姿勢が感じられます。

【1つの課題を自分なりに乗り越える】

雲の上のコロコロランドのコース

ここでは、体育の「器械・器具を使っての運動遊び」の実践について書きたいと思います。
テーマは「マットから落ちずに、転がったり歩いたりしていけるかな?」と設定しました。
マットから落ちないことを意識させる工夫として、マットの上は雲の上として、落ちたらゲームオーバーとしました。

まず行ったことは、写真のような様々なコースで遊ばせることです。
提示したコースは「ジグザグランド」「トンネルランド」「さかみちランド」「協力ランド」「アニマルランド」「くもわたりランド」です。
ここで、面白いのは1つのコースでも進み方や転がり方が子どもによって違うことです。

例えば、ジグザグランドのようにジグザグにマットが置かれたコースでは、最初は縦に転がる子がほとんどでした。しかし、連続で前転がりをしていくうちに何人かがマットから落ちてしまいました。
そこで、落ちた子が考えた転がり方は、横になって転がることでした。理由を聞くと「横になりながら転がれば、マットが見えて落ちずに止まれる」と言いました。
また他の子は前に3回転がると落ちてしまうからと、大きく2回、前に転がるという作戦を行っていました。
このように、1つのコースを遊ぶ中で子ども自身が自分なりの遊び方を作っていきます。

【自分たちで作ることが遊びの醍醐味】

遊び方を提示することで、試行錯誤することに一層磨きがかかります。
1つのものを自分なりに乗り越えていいんだという安心感を与える材料として、写真のように遊び方を提示するのも手です。
ある程度遊んだら、今度はグループで好きなコースを作って遊びます。
自分で作るのは遊びの醍醐味です。
今まで遊んだコースをもとに、マットを組み合わせて自分たちのグループだけのオリジナルコースを作ります。

ここでも、グループのメンバーとコミュニケーションを取りながら進めていきます。
自分たちで作っている分、話し合いも活発です!
そして、自分たちで作っている分、準備がとても早い!

【自分で作るから自然とアイデアが湧いてくる】

子ども同士で作ったコース

実際に自分たちで作ったコースが写真のコースです。
ここで面白いのは、自分たちでコース作る過程で教えてないこともどんどん作ってしまうことです。
子どものアイデアは本当に自由。
ゴムひものついたコーンをクロスさせて、どうやったら進めるのかやってみたいと作っていました。

ここで、1つ注意することはテーマを意識させることです。
遊んでいく中で、コースを走ったり、ジャンプしたりする子がいます。こうしたときは叱るのではなく、テーマに戻ります。 
テーマは「マットから落ちずに、転がったり歩いたりしていけるかな?」です。
テーマに戻ることで、目的が明確になり、アイデアも広がります。

【おわりに】

「自分自身が障害物になりたい」と大の字に寝る子

最初に書いたように、遊びはいろいろな力が身につきますが、一番嬉しいのは子どもが本当に生き生きする姿が見られることです。

この写真は、遊びの中で「自分自身が障害物になりたい」と大の字に寝る子の姿です。
こんな発想なかなか思いつきませんが、楽しそうに行動する姿がクラス全体をいい方向にもっていきます。

どんな実践をやっていても、一番の目的は子どもが生き生き楽しく授業ができることです。
そうした姿は教師主導では、なかなか見られない姿と思います。

「子どもが作る」遊びのある授業をこれからもやっていきたいです。

五條 晶(ごじょう あきら)

沖縄県宮古島市立東小学校 教諭


授業を通した「みんなで分かる!」「みんなが楽しい!」集団づくりを目指し、試行錯誤しています。

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