2019.03.20
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「振り返り」を掘り下げる

今年度ももうすぐ終わります。授業はほぼ終わっている状態かと思います。勤務校では卒業式や学期末試験も終わり、あとは修了式を残すのみといった段階になっています。

年度末に限りませんが、授業やHRで生徒に「振り返り」を書かせている先生は多いのではないでしょうか?振り返りシートとか、名称はイロイロですが、ごく一般的なやり方だと思います。でも、書かせて終わり・・・では、もったいないと思います。生徒が書いたものは「作品」であり「成果物」です。「完成!」とは言うものの、そこにいかに突っ込んでいくかが、今後の成長に向けたポイントだと思います。
ということで、今回は、授業やHRで書かせる「振り返り」をいかに掘り下げていくかについて、記事を書いてみました。

前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭  山形県立米沢東高等学校 教諭 高橋 英路

振り返りの意義

生徒に「振り返り」をさせる意義は何でしょう?授業の最後や学期の終わりなど、様々な場面で実践している方も多いと思います。用紙に書かせたり、その場で発言させたり、やり方も様々あると思います。

(1)当初の目標を再確認
 振り返りの目的として、当初の目標を再確認し、そこに照らして自身の頑張りを評価するといったことがあると思います。年度当初や授業冒頭に掲げた目標を忘れてしまう生徒もいるかもしれません。しかし、「振り返り」をすることで、目標をもう一度確認し、その達成度を自分で評価することになります。もちろん、「振り返り」の際に教員が目標を忘れてしまったのでは意味がありませんが・・・。

(2)課題を見つける
 最大のポイントは自身の課題を見つけることかもしれません。目標に照らして評価してみると、できていない部分が見えてくるはずです。それがどこなのかを見つけることで、次に何を頑張れば良いかが可視化されると思います。逆に言えば、「良かったです」「頑張りました」という振り返りでは、課題が見つからず、次に繋がらないことになります。

(3)次に生かす
 これは(2)を踏まえた形になりますが、課題を見つけた上で、次に生かすためにどうしたら良いかを具体的に考えるきっかけになります。今回発見した課題を踏まえ、どんな点を工夫すれば良いのかを自分で考えたり、友達や教員などにアドバイスを求めることができます。これによって、自身のステップアップにつながります。

というように、学校に限らず、自分が行った活動に対して振り返ることは意義のあることです。

ツールキット

前述したような生徒の振り返りをさらに意義深いものにするために「ツールキット」というものを紹介します。私は授業の中に、生徒全員が輪になって正解のない問いについて対話する「p4c」という手法を取り入れています。詳細は以下の記事をご覧ください。
https://www.manabinoba.com/tsurezure/016000.html
(教育つれづれ日誌「授業に対話(p4c)を取り入れる」)

「ツールキット」はその「p4c」の対話を深めるために使われているものです。正解のない問いについて対話するといっても、慣れないうちは単に自分の意見を発表するだけになってしまったり、具体性に乏しくその人らしさが出し切れなかったりといったことがあります。また、対話の後に「振り返り」を書かせた場合も同様です。そんなとき、以下の「ツールキット」をうまく活用することで、自分の考えも、他者の考えも深まっていきます。

 ① W=What do you mean?「それってどういう意味?」
  ・・・相手の言っていることが少し分かりにくい部分があり、もう少し詳しく聞きたい。そんなときに使える一言です。

 ② R=Reasons「なぜ?」
  ・・・言いたいことは分かるけど、そう思う理由は何だろう?そう思ったときに一言!普段から使う言葉なので、生徒たちも比較的使いやすい言葉だと思います。

 ③ A=Assumptions「前提は?根拠はある?」
  ・・・対話の中で当然成り立つと思っている前提に根拠はあるだろうか?自分の主張の前提となるものを見出し、それが本当に正しいのか再考する一言です。が、慣れないうちは難しい言葉だと思います。

 ④ I=If「もし・・・なら?」
  ・・・「もし〇〇だとしたらどうなる?」「もし〇〇でないならどうなる?」など、仮定・推論を導く言葉です。これも、生徒たちにとっては身近な言葉であり、考えを深掘りするには使いやすいと思います。

 ⑤ T=True「本当?」
  ・・・主張に対して、それが真実かを確かめる言葉です。本人は当然のように考えて発言しても、他者から見て同意できない場合もあると思います。そんなときに、もう少し詳しい説明を求めることができます。

 ⑥ E=Examples「例えば?」
  ・・・話が抽象的で見えにくいときに使える言葉です。この質問によって、発言者も自分の考えを具体的にイメージできるようになると思います。また、これも普段から使い慣れた言葉なので、生徒たちも最初から使いやすい言葉です。

 ⑦ C=Counterexample「反例は?」
  ・・・ある主張に対して、そうでない例を求める言葉です。これによって、その主張が誤っていることや、限界となる範囲が存在することを示すことができます。

 これら7つの言葉を「ツールキット」と呼び、適切な場面で用いることで、思考を深めていくことができます。

ツールキットの活用

では、「ツールキット」はどのように活用するのでしょうか?
「p4c」の対話を行う場合だと、冒頭で生徒に紹介して、「今日はこれとこれを使ってみよう!」といった具合に活用しています。場合によっては、その日に使ってもらいたい言葉をプリントやカードにして配り、対話の中で意識しやすいようにしています。単に「使ってみよう」というだけでは、なかなか習慣化しません。

また、「振り返り」については、生徒の記述した文章へのコメントで活用しています。「頑張ったね!」「すごいね!」といった褒め言葉は大事ですが、それ以上にコメントの中に「ツールキット」を散りばめています。

(例)
「今日の授業ではうまく説明できて良かった」 → 「例えば、どんなことが説明できましたか?」
「授業を聞いて、やはり環境問題は大変だと思いました」 → 「なぜ、そう思いましたか?」

といった具合です。実際は、文章でなく、もう少し掘り下げたい部分にアンダーラインを引き、「例えば?」とか「なぜ?」といった言葉を簡潔に記しています。

こうしたやり取りを続けるうち、生徒たちの「振り返り」はどんどん変わっていくのが分かりました。今年度、自分の授業での「振り返り」の記述内容を年度当初と途中、年度末で比較・分析してみたのですが、その変容は一目瞭然でした。もちろん、こうしたコメントだけの成果ではありませんが、これも一つの大きな要素にはなっていると感じます。

皆さんは、生徒の書いた「振り返り」、どう活用していますか?

今年度も1年間通して、学びの場.com教育つれづれ日誌の記事を読んでいただき、ありがとうございました。新年度に向け、出会いと別れの季節です。気持ちを新たにしっかり準備していきたいと思います。

高橋 英路(たかはし ひでみち)

前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭
山形県立米沢東高等学校 教諭


クラス担任と、地歴科で専門の地理を中心に授業を担当。生徒達の「主体的・対話的で深い学び」が実現できるよう、p4c(philosophy for children)やKP(紙芝居プレゼンテーション)法などの手法も取り入れながら日々の授業に取り組んでいます。

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