2023.09.27
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

『つなぐ・つながる』子どもの振り返りで「授業」をつなぐ

1時間1時間の授業をどのようにつないでいますか?
「今日は、教科書の、このページだね」って教科書ベースでつなぐのは、教科書を教えることになるんじゃないでしょうか。
私は、前の時間の「振り返り」、子どもの振り返りをもとにつないでいきたいと考えています。
つまり、1時間の授業を「点」じゃなくって「線」にする。しかも、子どもを主人公にしながら。
子ども自身が「私が学んだことが、今日の授業につながっているんだね」そう思えるように。

浜松学院大学 現代コミュニケーション学部 子どもコミュニケーション学科 教授  前浜松学院大学短期大部 幼児教育科 特任講師 川島 隆

授業の振り返り、どうしてますか?

(授業を)ふり・カエル

授業の終末に行う「振り返り」。皆さんは、どのようにされていますか?
私は、大学の授業でも、小学校での授業でも、かなり、この「振り返り」を大事にしています。
小学校に初めて赴任した何十年前か前には、「体育日記」と称して、1人1冊のノートを持たせて、1時間ごとの体育の授業の振り返りを続けていったこともありました。
当時は、子どもが授業をどんな思いで受けているのか、どんなことを感じているかを知りたい、という授業者の思いから、はじめたものでした。
しかし、重ねていくうちにこの「振り返り」が子ども自身に、とっても意味あるものになっていると考えるようになったのです。

「振り返り」への、私の問題意識

月日は流れて、数年前。
「振り返り」を書くということについて、書いている当事者の子どもは、どのように受け止めているのだろうか、考えているのだろうか。
ただただ「書かされている」だけだったら、……意味を感じていなかったら、そんな不幸なことはありません。
やはり子どもが、なぜ「振り返り」を書くのかということを自覚して取り組まなくてならないと思うのです。
勿論、発達段階に応じてその理解の有り様は、異なるのですが、はっきりしておかなくてはならないのは、何故「振り返り」を書くのか、そして「書く」と「振り返る」とどんないいことがあるのかを自覚していることだと思うのです。

「振り返り」にかかる課題を考える

「授業におけるふりかえりの実践的研究」をもとに筆者作成

全国学力・学習状況調査では、平成26年度から29年度までの4年間ですが、こんな調査をしています。
(学校質問紙)「授業の最後に学習したことを振り返る活動を計画的に取り入れましたか」
(児童質問紙)「授業の最後に学習内容を振り返る活動をよく行っていたと思いますか」
この結果を見てみると。
学校では、「振り返る活動」をしているとの回答が90%を超えているのに対し、児童は、70%台を推移しています。
この結果が意味するものは、どういうことでしょうか?
実施率と子どもの認識率には明確な差があるのです。
このことは、森脇(2021)の指摘しているところです。
教師は、振り返らせたつもりでも、子どもは「振り返り」をしていると感じていないということだと思います。
この点をとっても、「振り返り」を自覚化させて取り組んでいくことの必要性があると思うのです。

「振り返り」が十分に行われていない理由

森脇(2021)は、「授業におけるふりかえりの実践的研究」の中で、「振り返り」が十分に行われていない理由を幾つか挙げています。

その一つは、タイムマネジメントの問題です。
1時間の終末に行う、「振り返り」は思ったように授業が進まないと十分な時間を確保することが難しいのです。
でも、教師が思ったように授業を進むのもどうかと思います。
教師が敷いたレールの上を走らされるほどつまらない授業はないからです。
だからといって、予測不能な、子どもの反応で授業を進めていくと終末の「振り返り」は、どこかに飛んでいってしまうことだって起こりかねません。

私がまだ若い頃、先輩教員から「授業内容を7割にしておくことだよ」と教えられました。
教師は、ここまでやりたいと、どうしても欲張ってしまうのですが、学ばせたい内容は、そういう教師の思いの7割にとどめてゆとりを持つと、45分でちょうど収まるようになるというのです。
(分かっているけど、今でも欲張ってしまう私です)
そうすれば、「振り返り」の時間も十分に確保できるというわけです。
タイムマネジメント。
要は、どう1時間の授業を構成するかが一番の問題といえそうです。

二つ目、教師の「振り返り」に対する認識の問題

そして、二つ目は、教師の「振り返り」に対する認識の問題です。
私の「振り返り」に対する意識については、前述したとおりですが、「振り返り」をすることがどういう意味を持つかを教師が持っていなければ、授業の中で実現させていくのは難しいでしょう。
子どもが書いて「振り返る」のですが、その意義を教師が理解し、納得することがまずもって重要だということです。
さらに、このことは、教師が実感することが大事だと思います。
子どもに振り返らせたら、こんないいことが、私にもあったと。

三つ目は、複雑さや臨機応変な対応を要すること

さらに、授業終末で行う「振り返り」は、子ども主体で行う活動であり、そのことが複雑さや臨機応変な対応を生むことになります。
教師にとって容易なことではありません。
授業の導入と比較すると、よく分かると思います。
導入の場面は、教師があらかじめ明確な意図を持って創っていけるのですが、終末は授業展開が予測できない状況が生まれ、しかも、個別の対応が生じている中で、まとめ、振り返ることになるのですね。
全てを教師の予測の範囲内で行うのは、難しい状況にあります。
そこで、どのように「振り返り」に向かえるようにするか。
毎時間のことだけに難しい問題であると言えます。
では、これらの課題を克服し、ふり返りを次の授業へと「つないで」いくには、……。

むすびに

2期18回にわたって綴ってきた「つなぐ」「つながる」シリーズ。
何とか締めくくりを、と思って語ってきたつもりですが、「振り返り」の問題点ばかりを挙げて「振り返り」を、どう次につなぐかに言及しないまま結びを迎えてしまいました。
なんと見通しがないことでしょう。
授業だったら、ダメ授業ですね。
ここまでお付き合いくださった皆さんにあらためて感謝の気持ちをお伝えしつつ、今期の区切りとしたいと思います。
ありがとうございました。
つづく。

参考資料

川島 隆(かわしま たかし)

浜松学院大学 現代コミュニケーション学部 子どもコミュニケーション学科 教授
前浜松学院大学短期大部 幼児教育科 特任講師


2020年度まで静岡県内公立小学校に勤務し、2021年度から大学教員として、幼稚園教諭・保育士、小学校・特別支援学校教員を目指す学生の指導・支援にあたっています。幼小接続の在り方や成長実感を伴う教師の力量形成を中心に、教育現場に貢献できる研究と教育に微力ながら力を尽くしていきたいと考えております。

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop