2019.01.15
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部活動について考える(2)

部活動に教員が関わる意味

旭川市立大学短期大学部 准教授 赤堀 達也

前回に引き続き部活動を教育として行う価値について考えていきたいと思います。

前回非認知的能力についてお話しました。非認知的能力とは3つ
・目標に向かって頑張る力
・他の人とうまく関わる力
・感情をコントロールする力
に大別できます。

ちなみに私のチームは、このいずれの力も未熟です。そのチームのエピソードを少しお話しします。
私たちのチームは先の大会でシード権を獲得し、今大会に合わせてチーム戦術を準備して挑みました。一週間前の練習試合では惚れ惚れするほどに素晴らしい完成度を見せていたのですが、いざ大会に入るとその準備した戦術は全く見られず、初戦で大敗を喫してしまいました。後日ミーティングを行い、しっかりと受け入れ、次の大会に向けてしっかりと準備していくことを確認し合い、次の日からの練習に挑みました。普段私はあまり練習に参加できないため、いい機会だと思い、選手たちだけでいつもどのように練習をしているのか見ることにしました。(どんな練習をするか考えられるよう前日から時間を与えました)しかしいつまで経ってもチーム練習になりません。気持ちはあるはずなのですが、それを実行に移せない、どうしていいかわからない結果、個人での自主練習時間が延々と続くことになってしまいました。

これは8月から新チームがスタートし、2~3ヶ月が経ったころの話です。選手たちは、まず目標に向かって進む力がありません。最後の目標はたててあるのですが、細かい目標を建設的に設定することができず、なんとなく練習をしていました。
目標達成のために他者と協力する感覚も希薄です。チーム練習に進めていないのに誰も提言できません。1対1をしている人たちもいましたが、次第に遊んだりふざけたりする関わりになってしまいました。

また紅白戦の試合をよく行いますが、味方のミスに対して怒るか無視するかです。プレーが止まっている時に、そのミスした選手をフォローすることや教えてあげることもありません。そのため現在は、私と顧問の先生たちが一丸となって、プレーよりもこれらを教え込んでいる最中です。 

「目標は長期目標だけではダメで、短期目標を上手に設定することが目標を達成するために大事だということ」
「チームスポーツだから一人が1対1で勝っても試合が負けたら負け。味方同士で協力しないといけないこと」
「休憩している時間や隙間の時間を見つけて、できない子に教えてあげること」
などプレー以前の当たり前のことを何度も何度も繰り返し指導しています。昔に比べて、プレーよりも、このようなことを意識して育成していく必要があるようです。ちなみにこのような選手たちですが、部活がない日は公園や外ゴールでシュート練習をするために集まるくらい向上心の高い子達ばかりです。つまり知らないだけなのです。
もし私がコーチだけの視点しか持ち合わせていなければ、勝つ気がない、やる気がない、お遊びチームと判断すると思います。幸いなことに教員をしているコーチであるため、気持ちの表現の仕方を知らない、仲間と協力の仕方を知らない、目標への進み方を知らないからプレーよりもその点に重きを置いて指導しなければいけないのだと思えます。今の子どもたちはこのようなことが多いです。今こそ教員の部活動への関わりが必要だと感じます。私の部活の先生たちは、それをよく理解して関わってくれているため、選手たちが変わり始めました。

教育課程外に位置づけされている部活動ですが、私の感覚的には五教科よりも大切な社会性や人間性を養うことができるものだと思っています。以前、何かの番組で、外国人が日本人のこんなところがすごいと言っていたことに「電車は並んで待つ」「災害が起きても盗まない」など、普段から秩序を保って生活していることを挙げていました。これは勉強ではなく、普段の学校生活や部活動で身につけた社会性や人間性のその先にあるものではないでしょうか。そのため、私は部活動を行ってから授業を行う方が良いのではないかとさえ思っています。

私が言いたいことは、運動を指導できないからとか、技術を教えられないからとか、その競技を知らないからとかで、そんな教員がいる意味がないと思ったり、肩身の狭いと思って身を引いたりすることはないということです。もしそう感じている方がいたら、子どもたちの培ってきた経験をリスペクトして接することも一つの手だと思います。
「先生は知らないのに口をはさまないで欲しい」と言ってくる子どもに引いてしまう教員もいるようです。しかし、その子どもたちの考え方や態度は正しいですか?そんな発言に対してしっかりと指導を入れて欲しいのです。例え競技を知らない教員でも、その教員の視点が、子ども達を人間らしく、日本人らしく育てると思っています。

教員がやりたくないのにやらされることはあってはならないと思いますが、昔部員に言われた言葉がショックでやりたくないという方、知らない競技をやらされそうだから自信がないという方、きっとそんなあなたの力が必要です。是非お願いします。

赤堀 達也(あかほり たつや)

旭川市立大学短期大学部 准教授・北海道教育大学旭川校女子バスケットボールヘッドコーチ
これまで幼児・小学生・中学生・高校生・大学生と全年代の体育・スポーツ・部活動指導してきた経験から、子どもの神経に着目したスポーツパフォーマンス向上を図る研究を行う。

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