2018.11.05
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モヤモヤを残す

前回、正解のない問いに対する抵抗をなくすということで、「問いに向き合う」という記事を書きました。
https://www.manabinoba.com/tsurezure/017782.html

こうした「問い」に限らないのですが、学校ではユニバーサルデザインの考え方の導入などもあり、「指示を明確に!」とか「発問を分かりやすく!」といった声も聞かれます。私もそういったところはだいぶ配慮して、こちらの言葉足らずや説明不足で誤解を生んだり、何をしたらよいか分からなかったりということがないように気をつけているつもりです。

一方、学校におけるあらゆる事柄が分かりやすく明快である必要はあるのでしょうか?

前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭  山形県立米沢東高等学校 教諭 高橋 英路

授業でモヤモヤ

先日、他校の先生の授業を見学する機会がありました。その中で、既習の語句が分からないといった場面がありました。教員側が簡潔に説明したり、その場で調べさせたり、覚えている生徒に説明させたり・・・いろんな対応が考えられると思います。しかし、そこではあえて説明をせず、「こういうとき(分からないとき)はどうしたら良いだろう?」と投げかけ、そのまま次へ進みました(もちろん、次に進んだことで内容が全く理解できなくなるという事態にはならないと見極めた上でした)。きっとモヤモヤした気分になった生徒もいたことでしょう。

また、別の授業では、生徒たちが「正解のない問い」に一生懸命取り組んでいました。全員がしっかり取り組み終えたのですが、書き上げたプリントは集めず、全体での共有もしませんでした。「これで合ってるかな?」「周りの人はどう考えたのかな?」と気になってモヤモヤした生徒もいたかもしれません。一方で、プリントを回収されず全体でも共有されないからこそ本音を書きこんだ生徒もいたかもしれません。

2つの授業とも、毎回それをやっているということではなく、年間を通しての大きな流れの中でのことです。しかしながら、このようにあえてモヤモヤ感を残す授業は面白いなと感じました。そこで見た生徒たちはその状況に慣れているようで、「答えください」とか「今すぐ教えてくれないの?」といった声はありませんでした。むしろ、授業が終わった後も授業中のモヤモヤ感を楽しみ、先生に話に来たり、友達に聞いたり、家で調べたりといった活動に繋がっていくと感じました。

行事でモヤモヤ

秋と言えば文化祭の時期で、多くの学校で様々な催しが行われていると思います。通常の授業と異なり、行事にはイレギュラーなことがつきものです。時間が足りない、時間が余った、係の生徒が欠席した・・・いろんなことが考えられます。こうした状況を苦手と考える生徒もおり、あらかじめ全体の流れや本人の役割などを説明しておくことで、見通しを持って安心して行事に参加できるということはあると思います。しかし、どんな場面でもそれで済むかと言えば、どうしても予期せぬことは起こるものなので、なかなか難しいです。予期せぬ事態に遭遇したときに、周囲の人に聞いたり、誰かと一緒に考えたりするという解決方法を学ぶことも大切だと思います。

これも流れを丁寧に伝えておくこととのバランスや、生徒一人ひとりの状況を見極めることが重要だとは思いますが、「想定外にならないように」という過度な配慮で、問題を解決しようという姿勢や方法を学ぶチャンスを失うのも、せっかくの行事がもったいないと感じます。どうしたら良いか分からずモヤモヤするのが気持ち悪いという人もいるとは思いますが、それを周囲と共有することで楽しめるようになれば良いのかなと思います。

ということで、自分自身、モヤモヤしている生徒に対して何かをやってあげなくては!という気持ちが先行してしまうことがあるのですが、あえてモヤモヤ感を残している場面を見て、ハッと気づくことがあります。なんでもかんでもモヤモヤしたままではマズイと思いますが、モヤモヤ感を楽しめるようになれたら良いなと思って記事を書きました。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

高橋 英路(たかはし ひでみち)

前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭
山形県立米沢東高等学校 教諭


クラス担任と、地歴科で専門の地理を中心に授業を担当。生徒達の「主体的・対話的で深い学び」が実現できるよう、p4c(philosophy for children)やKP(紙芝居プレゼンテーション)法などの手法も取り入れながら日々の授業に取り組んでいます。

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