「問い」に向き合う
年度当初の授業で「地理は好き?得意?」と聞くと、「暗記だから好き、得意」とか「暗記だから嫌い、苦手」といった回答が返ってくることがあります。暗記科目だと思われていることにショックを受け、ちょっと残念な気持ちになってしまいます・・・。こうした傾向を変えることはなかなか難しく、授業で扱った地名だけを丸暗記しようとしたり、どんな問いに対しても「答えは?」と聞きたがる生徒もいます。もちろん最低限必要な知識もありますが、最終的には授業で習得した知識や技能を活用して、正解のない問いについてあれこれ考えてもらいたいと思っています。そこで、授業やHRなどで、正解のない問いに触れる機会を設けることで、そうした習慣が自然と身につくようにと考え、記事を書いてみました。
前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭 山形県立米沢東高等学校 教諭 高橋 英路
授業の中で
授業の終わりにけっこうボリュームのある「振り返りシート」を書かせています。年度当初に示した学びの姿勢や学習活動の内容について、項目ごとに自己評価したり、考えたことや感じたことを自由記述(完全に自由ではありませんが・・・)したりするものです。
自由記述欄には、
①本時の学びの姿勢に対する評価
②学習内容について考えたこと
③学習内容について疑問に思ったこと
④次時に向けた決意
以上、4つのポイントを書くことを求めています。この中の③については、調べればすぐに分かるような単なる知識を問う質問ではなく、学習内容に関連した正解のない問いを書くことになっています。例えば、気候の分野を学んだ後に「人間にとって最も住みやすい気候環境は?」といった具合です。ここで出された問いは、全体で共有したり、単元の最後の授業で実際に全員で話し合ったりして活用しています。授業で何度も繰り返すことで、授業以外でも問いを考えてくれ、「今度の授業で◎◎◎◎について話をしてみたい!」といった提案をしてくれる生徒も出てきました。
SHRで
毎日のSHRでは、こちらで準備した正解のない問い(「空の色は何色?」など、教科に関わらない一般的な内容のもの)について答える時間を設けています。全員でなく数名ですが、ちょっとした時間でやり取りしています。即答が難しい問いの場合は、SHRが始まる少し前に数名にA4版のホワイトボードを渡しておき、答えを書いてもらいます。ボードの裏面にマグネットがついているので、SHRで黒板に貼って紹介することができます。また、事前に答えを考えてもらう場合は、答えを考える時間を省略できるので、出てきた答えに対してさらに質問したりすることも可能です。
本当にちょっとした取り組みなのですが、始めてみると、SHR前に問いについてあれこれ話をしたり、休み時間に廊下を歩きながら問いに対して話をしたりする光景が見られるようになりました。
こんなさりげない取り組みを通して、少しでも「正解のない問い」に対するアレルギーのようなものがなくなれば良いなと思います。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
高橋 英路(たかはし ひでみち)
前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭
山形県立米沢東高等学校 教諭
クラス担任と、地歴科で専門の地理を中心に授業を担当。生徒達の「主体的・対話的で深い学び」が実現できるよう、p4c(philosophy for children)やKP(紙芝居プレゼンテーション)法などの手法も取り入れながら日々の授業に取り組んでいます。
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