2018.02.07
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被災2年目の熊本からの発信 ~5年生の4学期になってしまう~(第3回)

5年生での荒れ。クラス替えが行われて、6年生になってリセット。
こうなればいいのですが、まず、こうはいきません。
むしろ、6年生の1学期ではなく、5年生の4学期になってしまうことが多いのです。
その理由について、今回は書きました。

熊本市立龍田小学校 教諭 笹原 信二

人間関係構築を阻む 拡散と見えなかった問題

地震で外壁が崩れた体育館

本震により体育館の外壁が崩れ落ちました。地面にも亀裂が入っていました。

理由はいくつかあります。

まず、クラス替えで問題が収束されるより、
拡散してしまうことが多いことです。
荒れていた子どもたちが、
別のクラスにいた子どもたちを巻き込む形です。
くすぶっていた子どもたちにも火がついてしまいます。

次に、荒れによって見えなかった問題が
クローズアップされてくることです。
よく「ささいなトラブル」を書かれている文章を見ます。
大人は「それくらいのことで」と思いますが、
その当事者にとっては大問題なのです。
トラブルには大小はないのです。
「小事が万事」なのです。

時には、仲間はずれになっていたり、冷たい人間関係につながっていたり。
荒れによって、こういう問題が5年生では見えていなかったのです。
従って、5年生の問題が収束していません。
学年集会も開催できる状況ではなかったため、クラス間での共有化もできていません。

クラス替えで、人間関係を新しく構築しないといけません。
この人は、というレッテルを貼られている子どもたち。
そのレッテルを張り替えるのはかなり困難です。

教師も不安が先立つ

断水のためプールの水を使用したトイレ

断水のため、トイレはプールの水を運んで使いました。共助の大切さを学びました。

もしかすると、これが一番の問題だと思うのが、多くの学校で、
6年生の担任が新しくその学校に異動してきた教師だということです。
内情を知っていれば、荒れた学年を担任希望する教師は
とても少なくなります。
従って、異動してきた教師が担任になるケースが多かったようです。
その学校のシステムに慣れていない、異動してきた戸惑いもある、
教師も新学期は希望と不安が交錯しています。
校務分掌は?保護者の協力は?運動会はいつ?その地域独自の行事は?
印刷機はどこにある?等々。
熊本地震のため、昨年度は実施できなかった行事等が復活するのか?
という問題もあります。
指導経験の豊富な教員でも、やはり大変です。

そこに「あの学年は大変だよ。」「あの子は。。。」
実際に子どもたちに会う前に、こういう予備知識が入ります。
不安の方が先立ちます。

実際に子ども達との出会い。できるだけ真っ白い目で見ようとします。
「6年生になったら違う。」とは言わないようにしながら、褒めようとしていきます。
実態をつかんでいきます。少しずつ問題が見えてきます。
「大変だ」ということの一端が見えてきます。

学年始めの事務に忙しい中にも記録を残していきます。
子どもたちの中に模索しながら入っていき、
課題をつかみ、その課題を解決するための方策を考えていきます。

こうして2週間ほどが過ぎていきます。
そこには、また新たな問題が見えてくるのです。(続く)

笹原 信二(ささはら しんじ)

熊本市立龍田小学校 教諭
37年の教師人生を終えたが、もう少し学びたく再任用の道を選択。過去の経験を生かしつつ、新しいことにもチャレンジしていきたい。

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  • 清水 智

    長野県公立小学校非常勤講師

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