2018.01.22
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被災2年目の熊本からの発信 ~5年生の荒れが多かったのは~(第2回)

1月17日で、阪神淡路大震災から23年。14日、16日で、熊本地震から1年9ヶ月。
報道されることはどんどん少なくなっています。
日常が戻ってきているのですから、ある意味ではいいことです。
しかし、忘れてはいけません。これで災害は終わり、ではないからです。
まだまだ復興の道は続いています。
発信し続けて、風化を防ぐことが使命だと思います。
また、次の災害に役立てることが必要となります。

今回も前回に続いて、1月荒れについて書かせていただきます。



熊本市立龍田小学校 教諭 笹原 信二

激しい学級崩壊と静かな学級崩壊

1月荒れが起こる理由の一つに、気温の問題があります。
寒暖差アレルギーと呼ばれる症状です。
一日の気温差、また一日の中でも朝夕と昼の気温差が大きいと、
身体や神経がついていけないのです。
交感神経と副交感神経のバランスが乱れます。
交感神経が極度に優位になると暴れたり、反抗したり、
副交感神経が極度に優位になると落ち込んだり、めんどうくさがったり。
ここに、激しい学級崩壊と静かな学級崩壊がうまれる原因がありそうですね。

水戸黄門の「印籠」

低学年・中学年の荒れは、教師がスルーすることと、
本気になることの使い分けをうまく行えばなんとかなるものです。
学級づくりが上手な教師は「すべ」をたくさんもっておられます。
水戸黄門の「印籠」ですね。
盛り上げるところはしっかり発散させて
「印籠」を使って、落ち着かせる、このタイミングが絶妙なのです。
大きな声を張り上げるのではありません。
教師が大きな声で指導すると、子どもたちはさらに声が大きくなり、
いたちごっこになります。
「印籠」という名前の「すべ」をたくさん身につけたいものです。

もちろん巧みな教師は、もともとそういう騒然とした場面をつくられないです。
ルーティーン化、システム化がしっかりしていれば、もともと荒れはおきません。

卒業式で変わる6年生、変わらない5年生

3月10日(金)6年生を送る会

3月10日(金)この日から体育館が使えるようになりました。3・11の黙祷からのスタートでした。

高学年の荒れ。
6年生の荒れは、卒業というゴールが見えてくるので、意外とおさまってきます。
そして、これではいけない、と思っている子どもが必ずクラスにいます。
キーパーソンを見つければ、卒業に向かって良い方向に向かうはずです。
卒業式の練習を通して「揃う」ことの大切さも学びます。

本校の場合、卒業式に体育館が使えるかどうか微妙な状況でした。
教師側も不安でしたが、子どもたちはもっと不安だったと思います。
自分の学び舎で卒業式を迎えられない、通常では考えられません。
本校はなんとか使うことができましたが、残念ながら使えない学校がありました。

問題は5年生。5年生の荒れは難しいです。
熊本地震のあった年は4月、5月の前半がありませんでした。
例年なら、6年生が1年生を世話したり、委員会活動などで苦労していたりする4月。
この様子を、5年生は見ていないのです。
さらには、荒れてきた6年生の、よくないところはマネをしたがります。
いいところを見ず、よくないところをまねるのですから、
ますます負のスパイラルに陥ります。

こんなとき「最高学年になる自覚をもとう」などと正論をかざしても、
子どもたちは言うことを聴きません。
授業もまともに聴いていないのに、このような言葉は響きません。
どんどんよくない方向にすすみます。

4月、5月という土台(基礎)がしっかりできていないので、
多くの学校で1月荒れが5年生で多かったのでしょう。

5年生を少しでも救えたのは、やはり卒業式です。
卒業式の練習、6年生のいいところをたくさん見ます。
いつもより多くの教師が関わります。
形の上では、落ち着きを取り戻す時間ができます。
やはり「チーム学校」です。一人よりも複数、いろいろな人間との関わりが大切です。

とは言うものの、本質的に解決したことにはなっていません。
実は、次の年度にもつながってしまうのでした。(続く)

笹原 信二(ささはら しんじ)

熊本市立龍田小学校 教諭
37年の教師人生を終えたが、もう少し学びたく再任用の道を選択。過去の経験を生かしつつ、新しいことにもチャレンジしていきたい。

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