2017.12.15
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未来へつなぐ手紙

止まっていた時間が動き出すような感覚です。8年前に小学校6年生を担任し、卒業式の前日に8年後(20歳)の自分に宛てた手紙を書きました。8年間、私が預かっていたものをこの年賀状のタイミングで送るつもりです。

帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師 鈴木 邦明

目の前のことばかり気にしていませんか?

学校現場は本当に忙しい状況です。私は22年間、小学校の教員をしていましたが、私が採用された20年位前は、学校の置かれた状況がもっとのんびりしていました。平日の放課後に教職員サッカーの練習会が毎週あったり、5時頃に退勤したりすることがよくありました。情報機器の発達などによって、本来は業務が効率化されていくはずなのですが、学校にパソコンなどが導入されて以来、業務が格段に増えていったように感じます。それに伴って教員の余裕もどんどん減っていっているように感じます。それに加え、現在は「勤務評価」が導入されている自治体が多いと思います。それらは、基本的に一年間での評価になるので、短期間で成果の出るものに力を入れることになります。また、その妥当性の面から数値で表すことができるものであることも多く、数値化しにくいものに関しては評価がしにくいという面があります。

教え子の成長した姿に接することから感じること

数年前、教え子が働いている所を見た事があります。初めてでした。小学校の教員をしているとなかなか自分の教え子が働いている所を見る機会はありません。多くの仲間に助けられながら、働いていました。涙が出そうな程、感動しました。詳しくは「長期的視点を持つことで日々の子どもとの関わりの質を上げる」に書いてあります。

また、教え子の結婚式に出た事があります。やはり小学校の教員は、教え子の結婚式に出ることはあまり多くありません。小学校6年生で担任したクラスの中の子ども同士が結婚をしたので、その時の担任として呼ばれたのでした。その式の間、受け持っていた時の事、会っていなかった時の事、現在の事、そして、これからの未来の事を考えていました。幸せになって欲しいと心から思いました。「幸せ」って何なのだろう、小学校の教員にできることは何なのだろうと考えていました。

8年後の自分へ

話を葉書に戻します。保管の封筒によると、本当は「平成30年3月1日」にこれらの葉書を送ることになっていたようです。しかし、少し早いのですが、今回の年賀状のタイミングで送ることにしました。彼らは年明けの1月に成人式をする人たちです。その前のタイミングでこの葉書を送った方が色々なことのきっかけになるのではと考えました。8年間、また生まれてから今までの自分の成長について考えるかも知れません。小学校時代の仲間と集まるきっかけになるかも知れません。

彼らの葉書と一緒に私からの年賀状も送る予定です。8年前と私自身も少し変わりました。大きく変わってはいませんが、職種が変わり、日々やっていることが変わりました。大きく社会貢献が出来ているかは分かりませんが、日々努力は続けてきたつもりです。そういったことを伝えていくことが、これから社会において中心となって働いていく彼らに何か伝えることになるのではと考えました。

教育は「種まき」

教師が目の前の事だけでなく、少し先、さらに先の事を意識するようになるとその時その時の行動が変わってきます。確かに今は大事です。しかし、私たちは未来の社会を生きる人達を育てているのです。将来どんな社会になり、どんな人が求められるのかということを考え、それを目の前の子どもに伝えていく。そういった行為は、先程書いたように短期的に成果の出るものではありません。まさに「種まき」のようなものだと思います。芽が出ない種もたくさんあるのだと思います。しかし、その可能性を信じ、種を蒔き続けることが、教育に関わる私たちに求められているのだと思います。そういったことが、子どもの育ちにつながり、将来の社会がどんなものになろうとその社会の中でしっかりと生きていくことのできる人材を育てることにつながるのだと思います。

鈴木 邦明(すずき くにあき)

帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師
神奈川県、埼玉県において公立小学校の教員を22年間務め、2017年4月から小田原短大保育学科特任講師、2018年4月から現職。子どもの心と体の健康をテーマに研究を進めている。

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