このつれづれ日誌にも以前に書かせていただきましたが、2年前、組体操の指揮をとり、6年生の学年主任も務めさせていただきました。
先日、その時に受け持った児童、今は中学生の保護者から連絡があり、「先生に話がある。」ということで、懇談いたしました。
私は、その連絡を受けた時、きっと中学生活になやんでいるのであろうと思いました。詳しいことは載せませんが、中学入学に際し、心配な事柄があったからです。
ですが、私の予想は、大きくはずれました。
「先生、6年生の時は本当にお世話になりました。中学入学前には、心配なことがもっと積み重なって(もっと具体的にお話しましたが)・・・」
やはり、と思いました。
「でもね、先生。今、うちの子は、“学校大好き。友達大好き。夏休みなんか、なかったらいいのに”って、学校に通っているんです。
周りの子が、支えてくれて、理解してくれて、本当にありがたい。でもそれは、6年生の時に、松井先生はじめ、担任の先生方が『生きる』ということを教えてくれた、命を大切にすることを教えてくれたからだと思うんです。今、“学校大好き”って言えるのは、あの6年生の1年間があったからと感じるんです。
そのお礼を言いに来たくて、今日は来たんです。」
お母さんの涙とともに、私も顔を抱えて泣きました。
「お母さん、私はてっきり、中学生活に悩んでいて、お母さんが相談に来られたと思って。
よかった・・・・ でも、それは、私の力ではありません。○○(名前)が、前を向いて進んでいるからです。色んなことがあると思うけど、いいことをつかみ取って、悪いことはスルーして進んでいるんだと思います。あの子の力です。」
「一番がんばっているのは、本人だと思います。でも、周囲の支えがあってのこと。中学校のほとんどの生徒がここの小学校でしょ。周りが本当にあたたかく支えてくれて、だれもが理解を示してくれて、今のあの子があるんです。それは、あの6年生の1年間だったと思うんです。他の先生方にも、ぜひお礼を伝えてください。」
私は答えました。「魂を込めて1年間をつくりました。でも、教師だけでつくり、与える物ではないんです。あの子達が受け止め、一緒に進んだんです。 教師と子どもとで、つくるものなんです。」
話は尽きず、もと担任として、そして同じ母親として、1時間半ほどお話ししました。
「心を育てる組体操」「1年を通して語りかける学年経営」(クリックして過去の記事を参照ください)をはじめ、日々の授業、日記、学級活動など毎日の教育活動を全身全霊を込めてつくりました。
でも、私個人でつくったものではないのです。
きっかけを与えたかもしれませんが、そこには、心を一つに、感じ合いながら進んだ担任団がいる。その担任と共に日々をつくった子ども達がいる。一方通行ではないのです。
私たち教師の願いは一つ。幸せな人生を送れる力を子ども達につけること。
特に、思春期は人生の荒波。それを乗り越えてほしい。心の根っこを小学校でつくって送り出したいと常に思い、日々の教育活動をつくっています。
これからも、私の手元から巣立った彼・彼女たちに、大きな試練は訪れることと思うけど、時に乗り越え、時に交わしながら、しなやかに強く生きていってほしい。
卒業生にいつも私はこういいます。
「いつまでも、あなたたちは、私の教え子です。しんどくなったら休みにおいで。
でも、先生のことなんて忘れてしまうような、毎日を送ってくれたら、幸せです。」
松井 恵子(まつい けいこ)
兵庫県公立小学校勤務
兵庫県授業改善促進のためのDVD授業において算数科の授業を担当。平成27年度兵庫県優秀教職員表彰受賞。算数実践全国発表、視聴覚教材コンクール特選受賞等、情熱で実践を積み上げる、ママさん研究主任です。
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