2020.03.18
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「食品ロス」をへらすために自分たちにできることを考えよう 【食と環境】[小5・学活]

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。今回は兵庫県丹波市立上久下小学校、関裕子先生の授業『「食品ロス」をへらすために自分たちにできることを考えよう』です。

授業情報

単元:「食品ロス」をへらすために自分たちにできることを考えよう
テーマ:食と環境
教科:学活
学年:小学校5年
時間:2時間
2月3日の節分が近くなってくると、スーパーでたくさん積み上げられた恵方巻を目にすることが多いと思います。しかし、ここ数年恵方巻の大量廃棄が問題になっています。様々な取組が行われた結果、廃棄する量も減ってきたと聞いていますが、恵方巻以外にも「食品ロス」は身近にたくさんあります。
児童は、これまでに社会科で食料生産について学習してきました。また、自分が気になった新聞記事についてスピーチをするなどの活動を通して、社会問題について興味を持ち始めています。「食品ロス」についての問題は、児童にとって意欲的に考えることができる教材であると考えました。
社会科で学んだ食料自給率などの問題とも関連付け、現在の日本の食料事情について自分の考えを深め、自分自身が行動していくきっかけになることを期待して取り組んだ学活での2時間の授業を紹介します。

1 「食品ロス」について知る

第1時では「食品ロス」の実態について学びました。1年間で廃棄されている量を知り、「そんなに?」「もったいない!」「日本はたくさんの食べ物を輸入しているのにおかしい!」と児童は驚いた様子でした。
そこで、もし自分が小売店の店主になったら・・・と、「食品ロス」を減らすための作戦を考えました。「お客さんにも協力を呼びかける」「賞味期限をのばす方法を考える」など、一生懸命アイデアを出し合いました。
その後、実際に行われている小売店の取組や、外食産業などのたくさんの分野の様々な取組について知りました。児童たちにどこか安堵した様子が見受けられました。

2 「食品ロスを1番出しているのはどこか」を予想する

第2時では、「小売店」「外食産業」「家庭」などの中から「食品ロスを1番出しているのはどこか」予想しました。児童からは「自分もけっこう残しているから『家庭』だと思う」「でも、私はやっぱり『小売店』かな」などと意見が出ました。
1位は「家庭」。たくさんの児童が予想した通りでした。「家庭」から出る食品ロスが日本全体の約半数ということは、つまり、自分たち一人一人にできることがあるかもしれないと、児童も気づいた様子でした。

3 「アンケート結果」を知る

事前に児童の保護者にお願いして実施した食品ロスについてのアンケート。児童の家庭から出る食品ロスは「食べ残し」や「賞味期限切れ」が多かったです。また、「食べ残し」になる原因は、「好き嫌い」や「料理の作りすぎ」、「夕食前のおかしの食べすぎ」など。「賞味期限切れ」で廃棄してしまう原因は、「買いすぎ」「買ったことを忘れてしまった」などでした。
アンケート結果を知り、自分たちにでもできることがたくさんあると考え、たくさんアイデアが浮かんできた様子でした。

4 「『食品ロス』をへらすために自分たちにできること」を考える

個人で考えを書いた後、グループで交流し合い、出てきた意見を分類しました。分類したことから、「食品ロス」を減らすためにできることについてまとめ、グループごとに発表しました。
出てきたまとめには「家とお店で協力する」、「(食材を)買う前、食事する前などいろんな時に考えて行動する」、「整理整頓する、記録する、がまんするなど様々な方法で取り組む」などの意見が出ました。

5 家庭での取組や丹波市の取組を知る

事前に取ったアンケートで、各家庭での食品ロスを減らす取組についても伺っていました。「買い物に行く前に、家にある食材をチェックしておく」「残ったおかずをリメイクする」「野菜の皮などもスープに入れる」など、各家庭でたくさんの取組をされていることを知り、「ぼくの家でもやっとる」と話す児童もいました。
その後、丹波市内の飲食店で取り組まれている「30・10運動」について児童に伝えました。市内の飲食店からいただいた「30・10運動」のコースターやのぼりを見て、食品ロスを減らすために身近な人たちも様々に工夫した取組を行っているということを児童も実感できたようです。

6.振り返り

授業を振り返り、感想を述べました。「ぼくはまず食べ残しをへらすところから、がんばってみようと思う」というような、自分がすぐにでも行動に起こせるような内容を児童から聞くことができました。
この学習を通して、「食」についての興味を持つとともに、社会問題に関心を持ち、自分にできることはないかと考え、実際に行動に移す。児童がそういったことの大切さに気付き、今後の主体的な生き方につながる一つのステップになればと願っています。
授業の展開例
○企業の食品ロス削減の取組を調べてみよう(特別活動)

関 裕子(せき ゆうこ)

兵庫県丹波市立上久下小学校 教諭
兵庫県「地域の特色を生かした食育推進事業」食育推進校で食育実践に取り組んできました。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 准教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

監修:藤本勇二/文・写真:関 裕子

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