2019.06.19
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

恵幸川大作戦!~川西小5年生だけの恵幸川鍋を作ろう!~(vol.1) 【食と感謝の心・食文化・地産地消】[小5・総合的な学習の時間]

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。今回は「恵幸川大作戦!~川西小5年生だけの恵幸川鍋を作ろう!~(vol.1)」です。

新学習指導要領では、総合的な学習の時間についてこれまでの課題とさらなる期待として、「探究プロセスの中でも、『整理・分析』、『まとめ・表現』に対する取り組みが十分ではないという課題がある」としており、「①課題の設定→②情報の収集→③整理・分析→④まとめ・表現」の探究的な学習の過程を一層重視することが述べられています。子どもたちが主体的に収集した情報を整理・分析したり、考えを出し合ったりしながら問題の解決に取り組むためには、①で設定される課題が、子どもたちが本気で解決したくなる課題でなくてはなりません。
本校がある加古川市には、市の職員の自主研修グループが考案をした「恵幸川鍋(えこがわなべ)」という地産地消を謳ったご当地鍋があります。本単元では、地元の食材の恵みが詰まった川西小学校5年生だけの恵幸川鍋づくりを目指して、たくさんの地元の生産者の方々に関わっていただきながら学習を作り上げてきました。様々な課題に直面しながらも、地元の生産者の方々の食材への「思い」を大切にし、何度も話し合いを繰り返しながら子どもたちと作り上げてきた実践を4回に分けて紹介したいと思います。

1.単元構想

本学級の子どもたちは、5年生になるまでに野菜を栽培し調理する活動をたくさん行ってきました。1・2年生の生活科ではサツマイモを栽培して調理をし、3年生の総合的な学習の時間には、自分たちで計画を立てながら「川西農園」を立ち上げ、地域の方々の協力を得ながら畑作りから野菜栽培を行うなど多くの経験を積み上げてきました。また、3年生の社会科のスーパーマーケットを取り扱う学習では、ふだん食べている食材が、全国から出荷されてスーパーマーケットに集まっていることも学習しています。しかし、これまでの学習から野菜を育てる苦労や全国から野菜が出荷されていることは知っているものの、その年の5月に実施した食育のアンケートでは、「地域で取れる食べ物を知っている」の質問に、5年生2クラスの約半数の31人が「知らない」「あまり知らない」と答えるなど、自分たちが住む地域(加古川市)でとれる食材やその魅力について知らない児童が多いことがわかりました。
本単元で教材として取り上げる恵幸川鍋は、前述したように加古川市役所の自主研修グループが考案したご当地料理です。恵幸川鍋は、①地産地消である②旬の野菜を使う③「岡田本家」の酒かすと「高松清太夫老舗」の味噌を使う④加古川を愛するみんなのものである、という4つに、「提供者の鍋へのこだわり」を足した5つの条件(五訓)から成り立っています。五訓にもあるように地域で生産される食材を使うことから、その魅力を知るきっかけとなるだけでなく、自分たちの工夫を加えながら作ることができるので、児童が主体的に学び向かうことができる教材として適していると考え、単元を構想しました。

恵幸川鍋のパンフレット①

恵幸川鍋のパンフレット②

恵幸川鍋の五訓

2.恵幸川鍋との出会い

総合的な学習の時間のテーマについては、教師側が提案をしたり、子どもたちが提案をし、話し合いながら決定したりするなど様々な方法がありますが、本単元では教師側から恵幸川鍋についての提案を行いました。
6月に実施された4泊5日の自然体験活動後に、
「自然体験活動で学習をした環境やエコについて、加古川のご当地グルメの恵幸川鍋という鍋でも学習してみない?」
と提案をしました。恵幸川鍋については、ほとんどの子どもたちがその名前を知らないという状況でしたが、
「エコな活動ができそう!」
「よく分からないけど、おいしいものが食べられそうだしやってみたい!」
となり、今年のテーマを「ECO川大作戦!!」と題し、川西小5年生だけの恵幸川鍋作りを目指していくことになりました。

3.四訓目の決定と大豆づくり

前述したように、恵幸川鍋の五訓の内の四訓目は自分たちのオリジナルを入れることができます。子どもたちとどんな四訓目にするか、つまりは自分たちのオリジナルは何にするかを話し合いました。みんなで話し合った結果、ほとんどの子がこれまでの経験を活かして、
「自分たちで作れるものは自分たちで作る」
という四訓目を考えていたので、その四訓目で決定をしました。
自分たちのオリジナルが決定したら、どんな具材を入れるかを決定していきます。しかし、子どもたちには恵幸川鍋についての知識や情報があまりなく、鍋の具材や調味料について「岡田本家の酒かすと高松清大夫老舗の味噌を使う」ということが分かっているだけであったので、何の食材を自分たちで作っていったらよいか分かりませんでした。そこで話し合いの結果、
「とりあえず味噌にも、豆腐にも、もやしにもなる大豆を育てよう!」
ということになり、大豆を育てる計画を立て始めました。
大豆づくりについて家で調べた結果、ポットを使って大豆の苗づくりをする必要があることがわかったので、まずは苗づくりから行いました。苗については、芽が出る前に鳥に食べられる被害にあってしまうことも調べてきていました。そこで、子どもたちと何度も試行錯誤を繰り返し、「ネットをかける」というアイデアで対策をし、大豆の苗が完成しました。

  • ポットを使った大豆の苗づくり

  • 鳥にはネットをかぶせて対策

苗が大きくなってきたら、次は苗を畑に移していきますが、子ども達の次なる課題となったのが、畑の大豆が虫や鳥に食べられることへの対策のための「大豆畑のトンネルづくり」です。家で調べてきた大豆畑のトンネルづくりについて、グループごとに情報を持ち寄りながらまとめていき、プレゼン大会を行いました。材料、設計図、作り方、おすすめポイントなど、グループごとの工夫が見られる発表で、自分たちの思いをしっかりと伝えることができました。最後はそれぞれのグループの良いところを集めた設計図を作り、見事なトンネルを完成させることができました。

  • グループで設計図を描いていきます  

  • グループごとにプレゼン

  • 苗を畑に移し替えます

  • 大豆畑のトンネルづくり

4.恵幸川鍋の開発者 藤本さんのお話

苗が大きくなってきたら、次は苗を畑に移していきますが、子ども達の次なる課題となったのが、畑の大豆が虫や鳥に食べられることへの対策のための「大豆畑のトンネルづくり」です。家で調べてきた大豆畑のトンネルづくりについて、グループごとに情報を持ち寄りながらまとめていき、プレゼン大会を行いました。材料、設計図、作り方、おすすめポイントなど、グループごとの工夫が見られる発表で、自分たちの思いをしっかりと伝えることができました。最後はそれぞれのグループの良いところを集めた設計図を作り、見事なトンネルを完成させることができました。

子どもたちが考えた恵幸川鍋への疑問

調べてきたことを交流し合う中で、開発した人やルール、食べられるお店など、恵幸川鍋についてなんとなくは分かってきましたが、まだ詳しいことがよく分からない…と、子どもたちは頭を抱えてしまいました。すると、ある子どもが
「開発した人が分かっているのであれば、その人に聞いてみたら?」
と提案してくれ、恵幸川鍋を開発された加古川市役所の藤本さんにビデオレター付きの依頼文を書いてお願いをすることになりました。すると藤本さんが、
「もちろんです!」
と、快諾してくださり、学校にお越しいただくことになりました。

恵幸川鍋についての調べ学習のまとめ

加古川市役所の藤本さんのお話では、
「食べた人の心をあたため、加古川を盛り上げる鍋を作りたい」
「加古川の食材の恵みで、人々を幸せにする鍋を作りたい」
「年間100食以上を作って研究を重ねた」
「生産者のみなさんの思いを大切にしたい」
など、何となくしか知らなかった恵幸川鍋に深くて大きな思いが込められていることを教えていただき、子ども達は驚きながらも真剣なまなざしで話を聞いていました。

  • 恵幸川鍋の開発者 藤本さん 

  • メモをとる姿は真剣そのもの

また、お話を聞くだけでなく、実際に恵幸川鍋を調理して、食べさせていただきました。子どもたちも、
「甘くておいしい!」
「野菜の甘みがあってすごくおいしい!」
「体も心もあったまった!」
と、地元の野菜を使った味噌と酒かすの風味豊かな恵幸川鍋の味に大満足な様子でした。

  • 恵幸川鍋をふるまっていただきました

  • 朝3時から仕込んでいただいた鍋

子どもたちの振り返りやお礼の手紙からも、
「これだけの思いが込められていると知って本当に驚きました」
「ぼくたちもがんばって、藤本さんに負けない恵幸川鍋を作ってみたいと思いました」
など、藤本さんの熱い思いがしっかりと響いたことがよく分かり、子どもたちの心に火をつけていただいたとても貴重な時間となりました。

  • お礼の手紙①  

  • お礼の手紙②

5.加古川の食材調べと野菜づくり

「加古川を盛り上げる!」という藤本さんの熱い思いを聞いた子どもたちの次なる課題は、「加古川で生産される食材を調べて、鍋に入れる具材を決める」ことです。
ご家庭の協力もあり、実際に直売所などのお店に行って取材をするなど、たくさんの加古川産の食材の情報が集まりました。調べてきた食材の中から、自分たちで栽培するものと、生産者に交渉をしていただく(もしくは買う)ものを話し合い、ひとまず、白菜・大根・水菜は自分たちで栽培をし、サツマイモ、かぼちゃ、豆腐、油あげ、ホウレンソウ、ネギ、しいたけ、お米、こんぶは、交渉をしていくことにしました。

子どもたちが調べてきた旬の食材と加古川産の食材

  • 現地取材もしてきた調べ学習のノート 

  • 情報を共有し合います

藤本さんの恵幸川鍋への熱い思いを知ったことをきっかけに学習が本格的にスタートをした恵幸川鍋の学習。調べ学習では、地元の加古川で生産される食材がたくさんあることにも気づくことができました。しかし、加古川産の食材を自分たちの恵幸川鍋に使わせていただくにあたり、食材を「買わせてもらうのか」「ただでもらうのか」ということが子どもたちの中の大きな争点となります。
ゲストティーチャーに様々なアドバイスをいただきながら、何度も話し合いを繰り返していき、自分たちの恵幸川鍋への思いを深めていく様子をVOL.2では紹介していきたいと思います。

藤池 陽太郎(ふじいけ ようたろう)

教員5年目で現在は6年生担任(実践時は5年生を担任)。幼児教育の「遊び」をヒントに、子ども達が「遊ぶように学ぶ」授業づくりを目指して、日々研鑽を積んでいる。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 准教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

監修:藤本勇二/文・写真:藤池陽太郎/イラスト:学びの場.com編集部

※当記事のすべてのコンテンツ(文・画像等)の無断使用を禁じます。

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop