2021.10.29
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食品ロスをなくそう 【食と感謝】 [小5・社会]

食品ロス削減は、政府や自治体の報告を待つまでもなく、喫緊の課題です。SDGsの「ゴール12つくる責任つかう責任」にも深く関わる課題です。食品ロス削減のための資質や能力を育成することが、学校教育で求められています。食品ロスの削減については、これまで「残さず食べる」という消費の場面での取組が中心でした。その取組は、もちろん大切にしながら、対象とする食品ロスの場を広げることが、その削減のための主体性を引き出す鍵になると考えています。
そこで、私たちの研究会では、生産から流通までの場で既に食品ロスが発生していることを例に「曲がったキュウリ」(2020916日)や、「おやさいクレヨン」(20201228日)の実践に取り組んできました。このように食品ロス削減の対象を広げることは、この問題に向き合う担い手を増やすことにもつながります。

授業情報

テーマ:食と感謝

教科:社会

学年:小学校5年生

今回のエコフィードの事例もそうした問題意識から取り上げました。エコフィード(ecofeed)とは、“環境にやさしい”(ecological)や“節約する”(economical)等を意味する“エコ”(eco)と“飼料”を意味する“フィード”(feed)を併せた造語です。食品残渣等を利用して製造された飼料であり、肉質や嗜好性の向上事例が寄せられています。飼料自給率の向上等を図るうえで重要な取り組みとされます。農林水産省も積極的に推進しています。
授業の実践にあたっては、リボーンセンターに協力いただきました。リボーンセンターは、食に関する中間支援団体です。災害備蓄食品をこども食堂等に寄贈するフードバンク事業を実施。学校給食に提供し食品ロスの教育、防災、被災地のボランティア支援等を行い、食べられない食品は飼料化を進め、リデュースとリサイクルで資源循環の仕組みを見える化し、地域活性化とネットワークの拡充を図っています。

1 食品ロスについて知っていることを話し合う。

授業の冒頭、子どもたちの経験や既習内容を引き出し、本時学習につなげるようにしました。「食品ロスのことを知っていますか」と聞くと、「私たちはたくさんの食品ロスを出している」「社会科で学習しました」「SDGsのゴール12『つくる責任つかう責任』につながる」と、どんどん言葉が出てきます。授業の冒頭で既に子供たちの中からSDGsの12番目のゴールについて話があり、子どもたちのこれまでの学習の成果が確認できました。
子どもたちの発言を受けて、「食品ロスを減らすことが大切かな」と返します。子どもたちは、「大切!」と答えてくれます。

2 食品ロスをなくすための方法を話し合う。

食品ロスとエコフィードが学べる教材「ろすのんはどうして泣いているのかな?」

「食品ロスを減らす方法を教えてください」と聞くと、「好き嫌いなく食べる」「食べ切れる量だけ買う」の発言に続いて、「旬のものを買う」「地産地消を大切にする」の発言。子どもたちの発言を、買い物、保存、調理、食事の場面から整理して板書していきます。
さらに、「もう買っているのに、また買ったりしない」の発言に「ため買いだね」と返します。「ということは、みんなけっこうため買いをやっているな」と言うと、どっと笑いが起こります。「買う時に、棚の奥から取って買うのもよくない」の意見に「なるほど、それは手前取りするっていう大切なことだね」と説明します。
「みんなの意見を黒板に書く時に、どうして分けていたか分かる?」と問いかけると「ああ!買うところと」「そう、食べることを分けている!」子どもたちは気付いてくれました。子どもたちからどんどん意見が出てきて、食品ロスの問題は、子どもの関心事に上がってくるんだと実感できた場面でした。

3 食品ロスを出さない工夫をしても残ってしまったものについて話し合う。

食品ロス削減の取り組みをする中でどうしても残ってしまう廃棄物を生かすための工夫としてエコフィードに出会っていく、そのような授業づくりが大切となります。授業では、「みんなが、工夫してもどうしても出てしまう食品ロスがあります。どうしたらいいかな」と聞きます。
「肥料にする」「豚の餌にできる」「飼料にする」「分別すると利用しやすい」の意見。そこで、「豚の餌にするためにどんなことに気を付けるといいかな」と問いかいけます。「すりつぶして食べやすくする」「くさっていないように」「豚の害にならないようにする」の発言がどんどん出てきます。

「金属が混ざらないようにしないといけない」「異物がはいっているといけない」「ウイルスもだめ」とエコフィードをつくる過程での留意事項が子どもたちの言葉から生まれてきます。この活動を通じて、エコフィードという言葉を知らなくても、子どもたちの視点で考えることを通して、エコフィードの取組の工夫に気付けいていけることが分かります。
エコフィードの説明を整理するために、この授業に先立って制作した教材を配布します。教材の紙面をもとに食品ロスを利用するエコフィードの取組を紹介します。

4 エコフィードを活用する利点について考える。

今度は、「エコフィードを活用するとどんないいことがあるかな?」と、子どもたちの視点でエコフィードの価値を見つけるようにします。「餌代が安くなる」「食品ロスを片付ける費用が少なくて済む」「環境にやさしい」「食べ物を大切にできる」の意見をもとに教材で確認します。「飼料にかかる費用が少なくできる」「廃棄物を処理する費用が少なくできる」「SDGsを進めることができる」の記述を確認して、「やはり、SDGs12が出てきたね」と話します。設備を準備するのに費用がかかる課題はあることも触れて、「おいしい肉ができるって書いてあるけど、ほんとうにそうか、給食でトンカツが出ます。味わってみてね」と話して授業を終えました。

4時間目の授業後、エコフィードの餌を食べて育った豚肉が給食に提供されました。
以下は、給食の時間の校内放送の内容です。
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今日のとんかつに使われている豚肉は、兵庫のブランド豚「ひょうご雪姫ポーク」です。この雪姫ポークは、エコフィードと呼ばれる食品廃棄物を利用して作られた餌を食べて育ちました。環境に配慮されているだけでなく、廃棄される予定だった麺やパンを食べて育っているのであぶらが多く乗っていておいしいですぜひ味わって食べてみて下さい。
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ワークシートは、裏面に「います。」と続きます。

トンカツを食べた子どもたちの感想です。

●今日食べたお肉は、あぶらがとてもおいしかったです。お肉がプリプリでした。
●やわらかくてジューシーでした。また食べたいです。

コロナ禍で給食が黙食の時間になっていることは仕方ありませんが、少しでも豊かな時間を提供できたかもしれません。

授業の展開例

〇5年生社会科「食生活と食料生産」の学習で、各自治体の食品ロス削減の取組を調べましょう。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 准教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

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