2021.05.21
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食べないのに使うのはなぜ? 【食と文化】[小5・家庭科]

「和食」の特徴の一つが、「自然の美しさや季節の移ろいの表現」です。

私たちは、自然の美しさや四季の移ろいを食事の場で表現することを楽しんできました。季節の花や葉などで料理を飾りつけたり、季節に合った調度品や器を利用したりして、季節感を楽しむ、そうした「和食」のよさに目を向けることができるように願って授業を構想しました。

自然の美しさという目に見えないものに気付くことができるように、桜餅や柏餅、給食の献立など子どもたちに身近な食べ物を取り上げるようにしました。

食べないのについてくる葉っぱの秘密や、その意味を考える5年生の1時間の授業です。

今回は、私、藤本と芦屋市朝日ヶ丘小学校栄養士の沖本沙紀先生がティーム・ティーチング(TT)で授業を行いました。

授業情報

テーマ:食と文化

教科:家庭科

学年:小学校5年生

時間:1時間

1 桜餅の葉っぱ

桜餅の絵を描いて、葉っぱに関心を持たせる

授業は、桜餅の絵を描くことから始まりました。
ホワイトボードに桜餅の絵を描きながら、「ピンクのおもちだよね」「葉っぱがついているよ」「どんな葉っぱだったかな」とグループで話し合います。
桜餅の絵を描くことで、葉っぱの形や色に関心をもつことができたようです。子どもたちが描いた絵を紹介した後、藤本が、写真をもとにオオシマザクラの葉っぱを使っていることを説明します。

子どもたちに桜餅の葉っぱを食べるかどうかを聞くと、ほとんどが食べないという意見でした。ちょうど参観されていた先生方にも桜餅の葉っぱを食べるかどうかを聞くと、子どもたちは興味津々でした。

2 柏餅の葉っぱ

柏餅の絵を描いて、葉っぱの形を思い出す

次に、柏餅を取り上げます。
絵を描きながら、「どんな葉っぱの形をしていたかな」「柏ってどんな植物なのかな」「柏餅の葉っぱは食べないな」と話し合っています。
子どもたちの絵を紹介した後、柏の葉について藤本が説明します。
ドングリの木なんだと驚いた様子で聞いています。

柏餅の葉っぱを食べるかどうか聞くと、食べないという反応。
それを受けて「どうして、食べないのに付いてくるの」と聞きます。
桜餅や柏餅の葉っぱについて考えることはあまりありません。

栄養士から柏餅のいわれを説明

栄養士の沖本さんから、柏の葉は新芽が出ないと古い葉が落ちないという特徴があること。
子孫ができなければ家が断絶してしまう武家社会では重宝され、端午の節句に食べる習慣ができたことを説明します。
この話を受けて「柏餅のいわれ以外にも葉っぱに理由があるかもしれないね」と子どもたちに返します。

3 葉っぱを食べ物に利用した例

食べられない葉っぱのついた食品を考える

「葉っぱを使っている食べ物を考えれば、葉っぱを使う理由が分かるかもしれないね」と聞き、グループで探します。
柿の葉寿司、粽は予想していましたが、「バラン」が出てきました。もちろん、子どもたちは名前を知りません。絵に描いて紹介してもらいました。緑の形をしている、お弁当に付いてくる、下がギザギザなど子どもたちの反応をもとにその特徴を確認します。

授業計画の段階では、葉っぱの意味が分かった後に、「バラン」を栄養士が提示することを想定していました。この場面で出てくるのであれば、子どもたちには自然なはずです。授業の後半で名前やその秘密を考えることを伝え、知っているけど名前が分からない、その意味をこれまでの学習から考えることにしようと投げかけることで学習の文脈に載せることができました。
結果的にはこれでよかったのです。子どもたちの気付きや言葉を大切にすることがあらためて大切であることを実感できました。

4 食べないのに葉っぱを使う理由

葉っぱを使う理由をグループで話し合う

桜餅、柏餅、粽、柿の葉寿司など身近にある葉っぱを使った、食べないのに食べ物についてくる葉っぱには、きっと秘密があるはずです。
その食べ物に葉っぱを使う理由をグループで話し合います。

話し合った結果をホワイトボードに箇条書きに整理していきます。
子どもたちからは、「香りがよい」「いわれがある」「見た目がきれい」「彩がいい」「食べる時に手につかない」などの理由が出てきました。

そこで、栄養士から、生の桜の葉を塩漬けすることで桜の香りが生まれる、笹団子(殺菌力や抗菌力)、粽(蒸す時に他の食材とつかないようにする)、柿の葉寿司(乾燥を防ぐ)、笹団子(保存)を伝えます。
さらに学校給食でも、「桜の花ご飯」や「重陽の節句の菊入そうめん汁」が出ていることを話します。
子どもたちは、「おいしい」「大好き」「そうなんだ」と口々につぶやいています。

  • 給食献立「桜の花ご飯」

  • 給食献立「重陽の節句の菊入そうめん汁」

5 「バラン」の意味

「みんなが見つけたこの緑のもの(バラン)は何のために入っているかな。これまでの葉っぱがついている理由に当てはまるかな」と聞きます。
「緑があるときれい」「彩りがいい」「自然の葉っぱだといつでも手に入らない」「自然の葉っぱだと腐りやすいから」の意見が出てきます。それを受けて、ハランの植物からバランになったことを紹介します。自然のものを真似る「見立て」についても話します。

これまでの学習を踏まえて振り返りを書いて授業を終えました。振り返りのワークシートには、「今日の学習は、あなたにとって役立ちましたか。それはどんな点ですか、教えてください」と書かれています。

以下が子どもたちの振り返りです。
〇私は今までおもちなどについている葉のことは考えたことはなかったけど、葉を使うことでいろどりが豊かになったり、見た目がよくなったりと昔から工夫されて使われていたことが分かりました。

〇役に立ったと思います。なぜならいろいろな由来が分かったからです。詳しく言うと、ぼくはばらんがあまり好きではなく、ただしきりのために入っているならいらないと思っていたけど、今日の授業で葉っぱを見直しました。

〇私は、葉に願い事がこめられていることは知りませんでした。昔の人が、何かに見立てて物を作ったことも知ることができました。葉が何に使われているのかを生活の中でも見つけたいです。

食べられない葉っぱがついた食品について、話し合った結果をホワイトボードにまとめる

授業の展開例

授業の展開例

・花食は、万葉集に登場するほど昔から日本の食文化に存在しているそうです。
今回の授業でも取り上げた重陽の節句の菊のような食べる花について調べてみましょう。
【5・6年家庭科】

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 准教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

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