2017.08.16
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夢の焼餅を創ろう(vol.3) 【食と地産地消・食文化】[小3・総合的な学習の時間]

夢の焼餅を創ろう(vol.3)

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第129回目の単元は「夢の焼餅を創ろう(vol.3)」、焼餅創りの最終回です。

食育と授業:夢の焼餅 イラスト

子ども達の学習が探究的なものになり、主体的・協働的に取り組むためには、見通しを持った活動の意識を持つことと振り返りを行うことが重要だと考えます。これまで私自身が実践してきた時にも、子ども達に「何のためにこの活動をしているのか」、「これをするとどうなるのか」と、度々投げかけていました。それがわかっていないと決して主体的な学びにはつながりません。また、自分だけの考えだけではなく、それをクラスメートも含めた多様な他者と交流することによって、学びが再構築されます。そうやって、取り組んだ活動や考え出した意見等は、振り返りを行うことによって、さらに深まったものになっていきます。

いよいよ最終回となりました。N先生と共に、焼餅創りのゴールへ向かって進んでいった子ども達も、振り返りを繰り返しながら、大きく成長していく様子がうかがえました。実際のレシピからの焼餅創りには、Ǹ先生と子ども達が本当に真剣に取り組んでいて、私はほとんど関わることもありませんでした。これこそ、学級担任としての醍醐味だなと感じました。

オリジナル焼餅に挑戦

焼餅を作るにあたっては、粉から皮(餅)を作ることが最大の難関だったようです。粉チームが中心となって探してきたレシピを参考にしながら、実際に作ってみました。見つけたレシピは、米粉と砂糖を合せてレンジで数回に分けて温め、混ぜながら餅にしていくものでした。米粉そのものと米粉ミックスを使って、初めての調理に戸惑いながらも、手順に沿って取り組んでいきました。しかし、レンジで温め過ぎたのか、餅が思った以上に固まりすぎ、餡を入れて丸めるのにとても苦労をする結果となりました。夏休みに家で餅を作り、和田乃屋で餅作りの様子を実際に見た子は、想像との違いを大きく感じているようでした。結果として、作り方をさらに工夫しなければならないということで、再度レシピを考え直すことになりました。

粉から焼餅の皮を作る

粉から焼餅の皮を作る

学級にタブレット端末を置いておくと、子ども達は自分達で時間を見つけて調べるようになっていました。
「どうにかして今度は成功させたい」
という気持ちが伝わってきたとN先生も感じたそうです。そうしているうちに、子ども達の中から、
「前回と材料は同じだが、砂糖の量を減らし、レンジの時間を短くする」
という案が出ました。調べていくと、そのようにして作っている人がレシピを紹介していたそうです。また、
「『滝の焼餅』のレシピを参考にしてみてはどうか?」
と、N先生から助言を受けていた子ども達からは、
「米粉にもち粉を入れて作る」
という案が出ました。「滝の焼餅」は本来、うるち米ともち米を原料にして作るので、そのうるち米の代わりに米粉を使うという考えです。

そこで、子ども達が考えた出した案にそれぞれ「タイムチェンジ大作戦」と「もちもちもち米大作戦」という名前をつけさせました。今回の実習では、順番にそれぞれのレシピで作っていきました。「どちらのレシピの方がうまくいくか」「どちらを自分達の焼餅にしたいか」を意識して取り組むことを子ども達と確認しておきました。自分達オリジナルのレシピで作れることもあって、前回以上に子ども達は、張り切っていたようです。結果として、どちらも前回よりうまくでき、おいしかったとのことでした。

実習後は、ワークシートでそれぞれ「作る時」と「食べた時」に分けて個人で分析し、それを基に全体での話し合いを行いました。最終的に、どちらもそれぞれおいしかったので、自分が選んだレシピで本番も作り、どちらも自分達の焼餅としてお客さんに食べてもらおうという話にまとまりました。自分の意見を熱く主張していた子達も、相手の意見も聞いてから、皆が納得いく形を受け入れられるようになり、N先生も子ども達の成長を実感したと話していました。

焼餅の名前・デザインを考える

子ども達は時間を忘れ、焼餅のネーミングを話し合う

子ども達は時間を忘れ、焼餅のネーミングを話し合う

N先生と子ども達の奮闘で焼餅が形になったので、今度は、名前とデザインを話し合わせてみるように提案しました。話し合う時には、
「理由・根拠に基づくことが説得力を高める大切なポイントです」
と常々から言ってありました。子ども達の話し合いの中で、
「僕は、“小三(こさん)焼餅”がいい。理由は、小松島小学校の小に、三年生の三だから、自分達の焼餅っていう感じがする」
「私は、“特別な焼餅”がいい。理由は地域の特別なものを集めてきたから、その名前がぴったりだと思う」
「僕は、“夢の焼餅”がいい。これからもっとおいしくなっていく可能性があるし、夢のようにおいしく、食べた人の夢がかなってほしいから」
と、子ども達から次々と意見が出てきました。いくつか出てきた名前から一つに絞るのに意見が分かれました。驚いたことに子ども達は時間を忘れて、丸1時間以上話し合いに集中していました。 それほど、子ども達の焼餅への思いが強くなっているということです。N先生も大変嬉しいと言っていました。

話し合いの結果、「夢の焼餅」に決定。名前の通り、子ども達の夢がたくさんつまった焼餅になるだろうと期待が膨らみました。

次に、「夢の焼餅」にふさわしい模様を考えることにしました。「滝の焼餅」の菊の模様を見た時から、子ども達は
「自分達の模様を考えたい!」
と楽しみにしていたのです。子ども達がイメージしやすいよう粘土を使って模様を考えさせることを私からN先生にアドバイスしました。

皆が考えた「夢の焼餅」のデザイン案

皆が考えた「夢の焼餅」のデザイン案

子ども達が考えた模様はどれも夢のあるようなものになっていました。最終選考の視点は、「全員が簡単に描くことができる模様」です。初めのうちはデザインだけを考えていた子ども達も、N先生から
「本番はたくさんの餅を作るよね」
と助言をされると、
「あ、これだったら時間がかかりすぎてしまう」
と気づき、
「○○ちゃんの模様だと、描くのも簡単でかわいいし、見た人も幸せな気分になるね」
など、意見が少しずつまとまってきました。これまでに、色んな場面で話し合いを繰り返し行ってきたことで、以前よりも話し合いがうまくなってきたと、N先生は感じたそうです。「夢の焼餅」の模様は、にっこり笑顔のマークに決まりました。

「夢の焼餅」完成とおもてなし

本番の日を「ハッピースペシャル焼餅会」と名づけ、準備に取りかかりました。自分達で「夢の焼餅」を完成させ、お世話になった地域の方々に食べていただくイベントです。私からN先生には、保護者にも案内状を送り、子ども達と一緒に焼餅作りから参加していただくこと、単にお客様へのおもてなしの試食会だけではなく、自分達のこれまでの取組を発表して見ていただく機会をとることの2点を提案しました。

保護者の方々と一緒に焼餅を作る

保護者の方々と一緒に焼餅を作る

当日の焼餅作りには、半数以上の保護者の方が協力して下さいました。焼餅の材料は、地蔵寺の「宝寿水」と米粉やもち粉を使い、前日には、本別町や轡商店さんからいただいていた小豆を使って餡を作っていました。餡には、かくし味に住職さんからいただいたハチミツも入れました。子ども達は自分達が考えたレシピや模様を保護者に説明しながら、また、餅を上手に丸める保護者の方々から新たに多くのことを学びながら、作業を進めていきました。そして、子ども達と保護者でまず試食をして、おもてなし用の焼餅も作っておきました。

その後、いよいよ「ハッピースペシャル焼餅会」が始まりました。事前に、子ども達は国語で書き方を学習していた案内状を郵送していました。当日は、地蔵寺の住職さん、轡商店さん、市役所の方、そして遠方にもかかわらず、和田の屋さんが来て下さいました。今回初めて子ども達はお客さんを招いて、“おもてなし”をしました。司会をする人、来て下さったお客さんを教室に案内する人、お茶を入れて焼餅と一緒に出す人、会の最後にお客さんにインタビューをする人など係に分かれました。

「夢の焼餅」ストーリーをプレゼンテーション

「夢の焼餅」ストーリーをプレゼンテーション

まずは、「僕達の焼餅ストーリー~夢の焼餅ができるまで~」と称して、スクリーンにプレゼンテーション資料を映し、寸劇と共に、自分達の今までの活動やその時の気持ちなどを紹介しました。「小豆栽培」から「レシピの考案」まで、子ども達の焼餅に対する思いが伝わったようで、見て下さったお客さんや保護者から、
「こんなに子ども達が頑張っていたとは思わなかった。感動した」
と感想をもらいました。

それから、お客さんに「夢の焼餅」を食べていただきました。
「とても美味しかったよ」
という言葉に子ども達は大喜びでした。その後の振り返りのワークシートにも、その時の嬉しかったことや楽しかった気持ちが言葉や絵に表れ、伝わってきました。

遂に出来上がった「夢の焼餅」

遂に出来上がった「夢の焼餅」

単元の最後の振り返りとして、お世話になった方へそれぞれの感謝の思いを手紙にして伝えました。子ども達が
「自分達の焼餅が完成できたのは、協力して下さった方々がいるおかげである」
ということを実感し、心から感謝の気持ちを持ったことがわかりました。

実践を終えて

単元終了後、N先生に感想を聞いてみた所、以下のようなお話をしてくれました。

○子ども達自身が、自分の成長を実感していたことが嬉しい。
○子ども達同士の話し合う力が向上したと感じた。
○根拠を基に自分の考えを説明できるようになった。
○学んだことを教科や他の学習にも活かすことができるようになった。
○支え合い助け合う人間関係が構築できた。
○子どもによっては、教科学習以外で活躍できる場が設定できた。
○保護者からも高い評価をいただいた。

私が総合的な学習に力を入れて関わってきたのは、子ども達の成長ぶりが目に見えるからです。子ども達が課題を解決しようと一生懸命に取り組んでいる姿、子ども達がやり遂げたことが地域や保護者の方から評価された時の笑顔などを見ると本当に嬉しくなります。苦労しながらも夢中で取り組んできたこの半年間の実践は、N先生自身の教師としての成長にもつながったように思います。それも私の何よりの喜びとなりました。

村井 徹志(むらい てつし)

徳島県小松島市北小松島小学校 教頭
鳴門教育大学大学院修了後、総合的な学習の時間が始まった2000年より毎年実践に取り組んできました。

地域の和菓子屋さんへ企画提案し、実際に商品化した「和菓子プロジェクト」や離島の海水から塩を作り、販売した「伊島塩物語」などの10年間の実践は、地域情報をインターネット上で表現する「マイタウンマップ・コンクール」(2010年に終了)に出品し、9作品が入賞しました。そのうち「伊島塩物語」は、最高賞である内閣総理大臣賞を受賞(作品は、 http://necchu.info/mtm/ から見ることができます)。

管理職となった現在も、県教委指定学校訪問指導員(総合的な学習の時間)や県小教研総合的な学習の時間研究大会等で指導助言者として、総合の授業作りに関わらせていただいています。

今回、紹介した「夢の焼餅を創ろう」は、前任校で総合的な学習の時間を中心にして学級経営をしたいという若手教諭に単元作りから授業実践まで深く関わり、コーディネーターとして作り上げた実践です。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学文学部教育学科 専任講師 小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

監修:藤本勇二/文・村井徹志/イラスト:あべゆきえみうらし~まる〈黒板〉

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