国語科での防災教育実践(リポート4)

東日本大震災を取り上げた授業を、さいたま市立海老沼小学校 教諭 菊池健一さんが4回にわたってご紹介します。最終回の今回は、3.11の新聞記事のスクラップをした様子をリポートしています。
8回目の3.11を迎え

スクラップを作成する児童
前回までの国語科の学習で、防災に関する意見文を書き、新聞社に投稿しました。意見文のいくつかを新聞に取り上げてもらうことができ、児童は自分の意見を社会に発信できたことで自信をもつことができたようでした。そして、さらに震災や防災について考えていこうとする意欲も感じられました。
今回の学習のまとめは、3月11日の新聞スクラップです。3月11日には各新聞社が東日本大震災関連の記事を掲載します。それらの中から自分が選んだ記事をスクラップして、今回の学習で学んだことと関連づけてこれからの自分の生き方について考えてほしいと思いました。
児童は新聞記事の中から震災に関係する記事を自ら選び、進んでスクラップに取り組みました。
3.11の新聞記事をスクラップ
3月11日の新聞には様々な角度から東日本大震災を取り上げた記事がありました。例えば、
- 現在も5万人を超える方が避難生活を送っていることを取り上げた記事
- 津波の被害で亡くなった娘さんの遺骨を探し続ける方の記事
- もうすぐ避難指示の解除が出される福島県の大熊町の記事
- 大震災が起こった際の公助の必要性を取り上げた記事
- 亡くなった方のために花を手向けている人を取り上げた記事
など、たくさん見つけることができました。児童は、これらの記事から自分の心が動かされた記事を選び、スクラップしました。そして、記事の内容をまとめ、感想を書きました。
「今でもたくさんの方が避難をしていることを知り、自分が普通に行っていることがとてもありがたいことだということに気がついた。国語の授業でも考えたように、私たちにできることを少しでもやっていきたい。」
「小学生の娘さんを亡くされた方が今でも娘さんを愛し続けていることを知って胸がいっぱいになった。ゲストティーチャーの記者が言っていた『被災地の人は心もけがをしている』ということを思い出した。」
「これから震災が来た時に、安全に避難できるようにしていかなければならないと思う。」
など、これまでの学習とも関連付けて感想を書くことができました。
卒業する自分が思うことを書く

児童の感想文
スクラップの最後に、今回の震災を取り上げた学習を通して、自分のこれからの生き方にどう生かせるかを考えました。これまで、国語科の学習で意見文を書く目的で震災や防災について取り上げてきましたが、単に書く内容としてだけではなく、児童の心を耕すものとしても扱ってきたつもりです。そのまとめとして、児童に自分の生き方について見つめさせたいと思いました。
「今回の学習を通して、人とのつながりが大切だと感じた。家族や友達をこれまで以上に大切にしていきたい。」
「人のためにできることを少しでもできるような人間になりたいと思った。」
「自分がしていることを一生懸命行うことが、自分も他人も大切にすることだと思う。」
など、いろんな考えが書かれていました。子どもたちはこの学習を最後に卒業していきます。これから中学校高校と多くのことを学んでいくことになると思います。その中で、今回の震災を取り上げた学習を思い出し、さらに発展させていけるよう願っています。
文・写真:菊池健一
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