通過算(発展編)
前回の続きで、今回は通過算の発展編です。前回、説明した解法ポイントをもとに、今回は列車がすれちがったり、追い越したり、遠ざかって行く場合の問題にチャレンジします。

長さ210m、秒速32mのA列車と長さ140m、秒速18mのB列車がすれ違うとき、出会ってから離れるまでに何秒かかりますか。
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A列車が秒速15mの速さで進行しています。そこへ、秒速22mの速さで進んできた長さ75mのB列車が追い越しました。追い越しにかかった時間は24秒でした。A列車の長さは何mになりますか
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15両編成の急行列車がある駅のホームで立っている1人の人の前を6秒で通過しました。また、ホームを通過するのに13秒かかりました。しばらくして、この急行列車は、同じ方向へ向かう9両編成で、秒速14mの普通列車に追いつき、追い越していきました。列車の1両はいずれも8mです。
(1)急行列車の速さは秒速何mですか。
(2)ホームの長さは何mですか。
(3)急行列車が普通列車に追いてから、追い越すまでに何秒かかりましたか。
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今回は前回の続きです。前回説明した通り、通過算のいちばんの解法ポイントは列車が進む距離(道のり)を求めることです。今回は詳しく説明しませんが、必ず確認の上、今回の内容を読んでください。速さの意味については、もう一度ここで説明します。
(再掲載)
速さは「秒速」「分速」「時速」等で表します。
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秒速・・・ | 1秒間に進む距離を表します(例えば、秒速5mとは1秒間に5m進む速さのこと)。 |
分速・・・ | 1分間に進む距離を表します(例えば、分速300mとは1分間に300m進む速さのこと)。 | |
時速・・・ | 1時間に進む距離を表します(例えば、時速180kmとは1時間に180km進む速さのこと)。 |

秒速5mは1秒間に5m進む速さなので、1分間(60秒)では、その60倍進むことになるので、5×60=300m進むことになります。つまり、分速300mです。結局、秒速5mと分速300mは同じ速さなのです(秒速5m=分速300m)。
※算数では、基本的に速さを「秒速」と「時速」で表します。そして、秒速にはmを使い、秒速3mのように表し、時速ではkmを使い、時速100kmのように表します。ちなみに、よくみかける自動車のスピードメーターに用いられている〔km/h〕は時速のことです。
今回は列車がすれちがったり、追い越したりする場合の問題を解きます。話の中心は、自分が電車に乗って進行しているとき、自分の電車に近づいたり、遠ざかったりする別の電車を見たときの速さです。通過算で列車がすれちがったり、追い越したりする問題は、自分の電車が本当は動いているのだけども止めて考えるという独特な方法で解きます。とてもイメージがわきにくいところです。まずは文章で説明します。
●動く景色

ところで、動いているものには、必ず速さがあります。景色はどのくらいの速さで動いているのでしょうか?もし、皆さんが、秒速10mの速さの電車に乗っているときは、景色は秒速10mの速さで動いてみえます。秒速25mの速さの電車に乗っているときは、景色は秒速25mの速さで動いてみえます。ここで、重要なことは実際には景色は地面に固定されているので、静止しているということです。つまり、動いているのは景色ではなく、電車に乗っている自分であるということです。景色が動くという考え方は、言いかえると、自分は電車に乗って動いているにも関わらず、自分は止まっているという考え方をしていることになります。この本当は動いているのだけども自分を止めて考える方法は、通過算の発展問題(特に追い越しとすれ違いの問題)を解く上でのポイントになります。
●列車のすれ違い

それでは、前方の電車が秒速5mでゆっくりとこちらに向かってきている場合はどうでしょうか?止まっているときと比べて、少し速く近づいてくるように見えます。先の場合とくらべて、さらに秒速5mの速さだけ速く、秒速30mで近づいてくるように見えます。そして、いつかすれ違って後方に去っていきます。去っていくときの速さも近づいてくるときと同じで秒速30mです。
結論はすれちがうときの速さは2つの列車の速さの和になります。イメージがわかない人はこの結論だけは覚えてください。
●列車の追い越し

結論は追い越すときの速さは2つの列車の速さの差になります。イメージがわかない人はこの結論だけは覚えてください。

長さ210m、秒速32mのA列車と長さ140m、秒速18mのB列車がすれ違うとき、出会ってから離れるまでに何秒かかりますか。
■ 解法
A列車に乗って考えます。自分(A列車)が止まっていると考えると、B列車は32+18(=2つの列車の速さの和)で秒速50mで近づいてくるように見えます。
前回と同様に下図の先頭の赤い印に注目して、出会ってから、離れるまでのB列車の移動した距離を求めると、350mになります(このとき、A列車は止まっていると考えます)。

結局、B列車は、秒速50m(1秒間に50m動く速さ)で、350mの距離を移動することになるので、出会ってから、離れるまでに350÷50=7秒かかることになります。
■ 答え:7秒

A列車が秒速15mの速さで進行しています。そこへ、秒速22mの速さで進んできた長さ75mのB列車が追い越しました。追い越しにかかった時間は24秒でした。A列車の長さは何mになりますか。
■ 解法
A列車に乗って考えます。自分(A列車)が止まっていると考えると、B列車は22-15(=2つの列車の速さの差)で、秒速7mで近づいてくるように見えます。

B列車は秒速7m(1秒間に7m)でA列車を24秒かけて、追い越すので、追い越す間に進んだ距離は、7×24=168mです。これは上の図よりA列車とB列車の長さの和になるので(先頭の赤い印に注目)、A列車の長さは、168-75=93mとなります。
■ 答え:93m
※列車がすれちがったり、追い越したりするときの進む距離(道のり)は両列車の長さの和になっていることを問題1、問題2で再確認してください。
最後に通過算の総まとめの問題を解いてみましょう。まずは、自力でチャレンジしてみてください。
15両編成の急行列車がある駅のホームで立っている1人の人の前を6秒で通過しました。また、ホームを通過するのに13秒かかりました。しばらくして、この急行列車は、同じ方向へ向かう9両編成で、秒速14mの普通列車に追いつき、追い越していきました。列車の1両はいずれも8mです。
(1)急行列車の速さは秒速何mですか。
(2)ホームの長さは何mですか。
(3)急行列車が普通列車に追いてから、追い越すまでに何秒かかりましたか。
■ 解法
まずは、急行列車と普通列車の長さを間違いのないように計算することが前提になります。1両が8mなので、
急行列車は15×8=120m、普通列車は9×8=72mとなります。
(1)前回の問題1(ふみきりで立っている人の前を列車が通過する問題)と同様に解くことができます。速さを求めるためには、どれだけの時間にどれだけの距離を進んだかを問題文から読み取ります。
まず、通過するのにかかった時間は6秒。進んだ距離はこれまでと同様に、列車の最前部に注目すると、列車の長さと等しくなるので120mです。
結局、6秒で120mの距離を進んだわけですから、1秒では、120÷6=20m進んだことになります。秒速は1秒間に進む距離ですから、この急行列車は秒速20mということになります。
■(1)答え:秒速20m
(2)前回の問題2(鉄橋を渡る問題)や問題3(トンネルを抜ける問題)と同じように解くことができます。
列車は、ホームを通過するのに、秒速20mで13秒(1秒間に20m進む速さで13秒)かかったので、
20×13=260m進んだことになります。
このホームを通過するために進んだ距離(260m)は上図より〔ホームの長さ〕+〔急行列車の長さ〕なので、進んだ距離(260m)から、急行列車の長さ(120m)を引けば、ホームの長さが求められます。
したがって、ホームの長さは、260-120=140mとなります。
■(2)答え:140m
(3)今回の問題2と同様に解くことができます。普通列車に乗って考えます。自分(普通列車)が止まっていると考えると、急行列車は20-14=6(=2つの列車の速さの差)で、秒速6mで近づいてくるように見えます。
上の図より、急行列車は秒速6m(1秒間に6m動く速さ)で、普通列車に追いてから、追い越すまでに192m進むことになるので、かかる時間は192÷6=32秒となります。
■(3)答え:32秒
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