2016.06.29
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21th New Education Expo in 東京 現地ルポ(vol.1) 高大接続改革の実現と新しい学びのかたち

21th New Education Expo in 東京 現地ルポ(vol.1)

「New Education Expo 2016 in 東京」が6月2~4日の3日間、東京・有明の東京ファッションタウンビルで開催された。現在、教育界で様々な改革が急ピッチで進められているのはご存知の通り。今年度内には次の学習指導要領の答申が出、来年春には高大接続改革の実施方針が発表される見込みだ。小学校から大学まで、あらゆる教育現場で大変革が起きようとしている。一体何が変わるのか。この変革にどう対応すればよいのか。教育現場も、行政も、企業も、家庭も、固唾を呑んで注視しており、会場には3日間合計で約7000人もの方々が訪れた。この熱気あふれるNew Education Expo 2016 in 東京の様子を5回に渡ってリポートする。

第1回目は「高大接続改革」に関するセミナーの模様をお届けしよう。登壇されたのは、日本学術振興会理事長・文部科学省顧問の安西祐一郎氏。中央教育審議会会長(当時)として高大接続改革を牽引し、高大接続システム改革会議の座長として最終報告を取りまとめた、高大接続改革の中心人物である。なぜ今、高大接続改革が必要なのか。何をどう変えようしているのか。安西氏は、時に情熱的に、時に理性的に、語ってくれた。

高大接続改革の成就なくして、日本に未来はない

教育の質的転換を図る教育改革 ~高大接続改革の実現と新しい学びのかたち~

日本学術振興会 理事長
文部科学省 顧問……安西 祐一郎 氏

なぜ今、高大接続改革が必要なのか?

日本学術振興会理事長・文部科学省顧問
安西祐一郎氏

「今、私達は、時代の大きな転換期に立っています。政治も経済も科学技術も、激変しています。米中二つの大国に挟まれて難しい舵取りを迫られる一方で、若年層は減少の一途をたどり、国力の低下が危惧されています。今のままでは、日本が立ち行かなくなるのは、誰の目にも明らか。高大接続改革を成就させないと、日本の将来は無い! と、断言していいと思います」

安西氏の強い口調に、満員の聴衆は水を打ったように静まり返った。責任ある立場にある方が、ここまで断言するのは、並大抵のことではない。その発言の重さに、聴衆は事態の深刻さを肌で感じたのだろう。背筋を伸ばして聞き入り始めた。

「この時代の激変に、教育は対応できているでしょうか? 小・中学校の教育は、かなり頑張っていると感じますが、でも高校はどうか。大学はどうでしょうか? 時代の変化に、全くついていけていないというのが、私の印象です」

手厳しい言葉を意図的に用いながら、だからこそ今、高大接続改革が必要なのだと、安西氏は説く。同時に、高大接続改革への理解が進まないことに、警鐘を鳴らす。

「高大接続改革は、様々な報道や批評、批判を受けてきました。『センター試験がなくなる』『大学入試が変わる』といった表層的な変化に目を奪われ、『高大接続改革=大学入試改革』だと思われがちですが……そうではありません。高大接続改革は、高校と大学の教育改革。質的な転換を図る改革です。江戸幕府から明治新政府に変わった時の近代教育改革に匹敵する、歴史に残る大改革になります」

日本史上屈指の大教育改革の入り口に、我々は今立っているのだと突きつけられ、会場に緊張感が走った。

「にも関わらず、大学入試がどう変わるかに注目が集まるばかりで、『どんな力を身につけさせるのか』『そのために学びがどう変わるか』が、ほとんど具体的に議論されていないのが現状です。

最近ようやく、『思考力・判断力・表現力』が必要になるのだと周知されてきましたが……『思考力・判断力・表現力』が必要なのは、今に始まったことではありません。すでに学校教育法にも『思考力・判断力・表現力』を育むと明記されています。

『アクティブ・ラーニング』も、最近注目されていますね。でも、これも当たり前のこと。ラーニング・コモンズなどの環境整備に注目が集まっていますが、こういう環境を作れば必ずアクティブ・ラーニングになるわけではないし、こういう環境がなくとも、本人が前向きに学べばアクティブ・ラーニングになる。肝心の『アクティブ・ラーニングによって何を身につけるのか』まで議論が進んでいないのは、とても残念なことです。

今日は、高大接続改革では、どんな力をつけることが求められるのか。学び方がどう変わるのか。具体的にお話したいと思います」。

傍観者にならず、一人ひとりに考えてほしい

安西氏は、高大接続改革の出発点となった「課題」を提示した。全文を引用しておこう。

十分な知識・技能を持ち、それを活用できる思考力・判断力・表現力を臨機応変に発揮でき、主体性を持って多様な人々と協力して学び、働く力が身につく教育の機会を、すべての子ども達が持てるようにするにはどうすればよいか?

この課題を解決するために、高校教育、大学入試(大学入学者選抜)、大学教育を改革するのだ。その内容をおおまかに整理しておくと、

□高校教育の改革

  • 2022年頃、学習指導要領改訂
  • 歴史総合、地理総合、数理探究、公共など、新しい科目を導入
  • 英語や情報などの科目で教える内容を更新
  • 2019年、「高等学校基礎学力テスト(仮称)」開始(プリテストは2017年から)

□大学入学者選抜の改革

  • 2020年、センター試験に替わる「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」開始(プリテストは2018年から)
  • 従来の2次試験に該当する各大学の入学者選抜試験を、多様な方法による多角的評価へ。小論文やプレゼン、集団討論、面接など

□大学教育の改革

  • ディプロマ・ポリシー(卒業時の能力)、カリキュラム・ポリシー(教育内容)、アドミッション・ポリシー(入学条件)の三つのポリシーを具体的に設定

目に見えやすい表面的な変化をざっと挙げただけでもこれほどある。特に「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」では、従来のセンター試験がマークシート方式だったのに対し、記述式の問題も導入される予定で、大きな話題になっている。急激な変化に、教育関係者からは危惧する向きもあるが、安西氏はそんな弱気な声を一喝する。

「『今までやったことがないから、できない』と二の足を踏む人もいます。『記述式問題が入るそうですが、どんな問題になるのでしょうか?』と、質問してくる先生も、とても多かったです。そんな時私は、『どんな問題を作ればいいか、ご自分でも考えて、作ってみてください』と、お答えしていました。

子ども達にどんな力をつけさせたいか。その力がついたかどうかを図るには、どんな問題が適しているか。それを一生懸命考えて問題を作れば、我々が想定している問題と自ずと似てくるはず。大事なのは、一人ひとりが当事者意識を持って考えること。子どもには、『アクティブ・ラーニングしなさい』と指導しておきながら、大人は誰かが問題を作ってくれるのをボーッと待っているなんて、ずるいですよね?」

そして安西氏は、「高等学校基礎学力テスト(仮称)」や「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の出題イメージ例をいくつか紹介し、解説を加えてくれた。すべてを紹介したい所だが、スペースの都合上、「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の国語の問題例と安西氏の解説を、お伝えしよう。

上の写真にある「問題イメージ」をご覧いただきたい。公立図書館に関する新聞記事を読んで、今後の公立図書館のあるべき姿について考え、200~300字で記述する問題で、従来のセンター試験とは大きく趣が異なるのがわかるだろう。(なるほど、こういう出題傾向に変わるのか……)と、「わかったつもり」になって一人うなずいていると、そんな浅はかな思考を見透かしたように、安西氏の鋭い声が飛んできた。

「こういう出題例が適当なのか、難しいかどうかは、よく議論の的になります。しかし、大事なのはそんなことではない。この問題を解くには、どんな力が必要なのか。その力を身につけるにはどんな学習が必要なのか。それを具体的に論じ、考えることが大事なのです」
 と、安西氏は、もう1枚のスライドを提示した。そこには、国語において重視すべき学習プロセスと、評価すべき具体的な能力を網羅し、構造化した図が描かれていた。その一部を抜粋すると、

【重視すべき学習プロセス】
多様な見方や考え方が可能な題材に関する文章や図表等から得られる情報を整理し、概要や要点等を把握する

【(そのプロセスで)評価すべき具体的な能力】
ア)与えられた文章や図表等の中から情報を収集したり取り出したりする力
イ)文章や図表等の情報を整理し、解釈する力
ウ)文章や図表等の情報を要約したり、一般化したりする力

こういう能力を身につけさせるのがまず先にありきで、その力がついているかどうかを測るために、記述式の問題が導入されるのだ。この順序を、履き違えてはならない。

「どんな力をつける必要があるのか、皆さんにも具体的に考えていただきたい。例えば『書く力』一つとっても、その中には、様々な力が含まれます。

書くべき内容について、思考、探索、自発的質問、抽出、判断、表現する力や、知識や経験。読み手についての理解と感性、単語・文・文章などの読みと理解などなど……。

こういった力を、長い時間をかけて養って初めて、文章を『書く力』が身につくのです。どういうカリキュラムを作り、どんな学びの場や道具を与え、どんな学習をすれば、こういう力が身につくのか。一人ひとりに考えてもらいたいと思います」

各大学が行う入学者選抜についても、改革が進められる予定であり、すでに動き始めた大学も多い。例えば東京大学は、平成28年度から全学部で推薦入試をスタートさせ、大きなニュースになった。大阪大学では、平成29年度からAO入試、推薦入試、国際化学オリンピック入試などによる選抜を行う「世界適塾入試」を導入。私立大学でも、早稲田大学や関西学院大学、上智大学などが入学者選抜改革に着手している。

その例をひもときながら、安西氏は入学者選抜改革の要諦を、こう述べた。

「大事なのは、多様な入学希望者を、多様な方法で、多角的に評価すること。現在のAO入試・推薦入試・一般入試の区別をなくし、調査書、活動報告書、各種大会や顕彰等の記録、資格や検定試験の結果、推薦書、入学希望理由書、面接、ディベート、プレゼンなど、様々な選抜方法を研究し、採用してほしい。

例えば工業高校や農業高校などの専門高校の生徒は、豊富な実習実践経験を積んでいますが、従来の入試 によくあるようなペーパーテストでは評価できません。様々な学校で、様々な分野で、一生懸命学んできた人達が報われる、入学者選抜制度に変えていくべき。これは子どもに限りません。何歳であろうと大学で学びたいと願う人々に学ぶ機会を提供し、そういう人達が報われる社会にならないと、これからの日本は立ち行かなくなると思っています。

もっとも、どのような選抜方式を採用するかは、『大学自治』の原則にのっとり、各大学の判断に委ねられますが……この時代の激変期に直面しながら、なお変わろうとしない大学なんて、もういらないと、個人的には思います」。

高大接続改革は、社会改革である

次に、安西氏はなぜか、「第5期科学技術基本計画」なるものに言及し始めた。これは、科学技術基本法に基づいて政府が決定する長期的な科学技術政策であり、今年1月に「第5期」が閣議決定された。

21th New Education Expo 2016 in 東京 現地ルポ[1]:日本学術振興会理事長・文部科学省顧問 安西祐一郎 氏

「『第5期科学技術基本計画』では、『オープンイノベーション』が提唱されました。要は、自分の研究室に閉じこもって研究するのではなく、大学や企業などの垣根を超えて、他者と協働で知恵を出し合って、新たなサイエンスやテクノロジーを創造していこうという考え。このように日本の社会を転換していかねば、日本の未来はないと、科学技術の分野でも考えられているのです。示し合わせたわけではないのに、高大接続改革と目指す方向は同じ。つまり、教育分野に限らず、日本の社会全体が、将来に不安を感じ、未来のために改革しようと動いているのです」

教育関係者は、社会の動きにもっと関心を持つべきではないか。同様に、社会で働く人々も、もっと教育の現状を知ろうとすべきではないかと、安西氏は言う。

「人工知能が人間の仕事を奪う、と話題ですが、雇用に影響を与えるのは人工知能だけではありません。例えば大正時代、日本には約3万5000もの職業がありました。それが80年後には約1万8000とほぼ半減。手工業から機械による大量生産へ産業がシフトした結果です。社会の変化で、雇用市場は激変する。当たり前のことですよね。

雇用市場の動向と教育は関係ないと言う人もいますが、現実問題として、子ども達はこういう社会の中で、仕事を探し、働いていくのです。子ども達に幸せな人生をおくらせてあげるには、これからの時代に必要な力を教育で身につけさせてあげるのが、我々の責務ではないでしょうか」

そして最後に、安西氏は今後目指すべき「新しい『学び』のかたち」について、熱弁をふるってくれた。「新しい『学び』」を形成するのは、「基礎知識・技能の習得」「思考力・判断力・表現力の育成」、学びの方法(一斉、個別、協働)、学びの場(教室、校内、家庭)、学びの道具(デジタル教科書、タブレット)など、様々な要素があるが、特に重要なのは、「主体性」を育むことだと、安西氏は言う。

「主体性とは、自分の目標を自分で見出し、実践する力です。親や教師に指示されたから学ぶのではなく、自分の意思で学び続ける力です」

認知科学の大家でもある安西氏は、「主体性」を持つことの効果を、自身の著書の内容を引き ながら説明してくれた。その全文を引用するので、ぜひ読んでいただきたい。

  1. 主体性とは、自分の目標を自分で見いだし、実践する力(≠一人よがりに主張する力、≠人の意見に従わない力)
  2. 自分の目標をもっている人の心は、その目標が達成されやすいようにはたらく。(『問題解決の心理学』安西祐一郎, 中公新書, 1985)
  3. 主体性は、人の心を感じる力、想像力、臨機応変力、並行処理力、人間としての一貫性をもたらす。
  4. 主体性は、学び続ける力、内省する力、創造的に思考し実践する力をもたらす。
  5. 主体性は、答えのない問題に挑戦する力をもたらす。
  6. 主体性は、チームワーク力をもたらす。

このメッセージは、子どもだけではなく、我々大人にも向けられていると、私は感じた。学校でも企業でも家庭でも、「主体性」は、未来を切り拓く鍵となる。

高大接続という大改革が目前に迫り、社会も激動を続けている現在、大人も一人ひとりが主体性を持ち、この困難な時代を乗り越え、子どものため自分のため家族のため日本のために、未来を創造していかねばと、安西氏の話を聞いて強く思った。

高大接続改革は教育改革であり社会改革であると共に、個人の意識改革でもあると、言えるのかもしれない。

展示ゾーン

[アクティブ・ラーニング・ファニチュア]アクティブ・ラーニングを加速させる家具・教具

今年の展示ゾーンも、100を超える企業が出展し、大いに賑わっていた。教育につながる様々なハードやソフトが展示されていたが、場内を見学して回っていると、「ん?」と気になるコーナーを発見した。看板には、「アクティブ・ラーニング・ファニチュア」と書かれている。アクティブ・ラーニングの家具? どういうことだろう? 怪訝に思いながら足を踏み入れてみると、やはり机や椅子などの家具が並んでいた。

「このコーナーでは、アクティブ・ラーニングしやすい学習環境を作る家具を展示しています。たとえばアクティブ・ラーニングではグループワークをよく行いますが、班の形に机を並べ替えるのに手間と時間がかかりますよね。そこで内田洋行では、『可動性』をキーワードに、一斉授業・グループワーク・プレゼン発表など、学習内容に応じて机や椅子のレイアウトを、簡単に、素早く変えられる家具を提案しています」
 とのこと。

communeはマグネットで連結できるので、ドーナツ型に机を並べても、ぐらついたりズレたりしない

その一つが、このアクティブ・ラーニング用ワークテーブル「commune(コミューネ)」。机の脚にはキャスターが付いており、移動が楽。さらにこの製品ならではの工夫がある。机の前・右・左の合計6箇所にマグネットがついており(オプション)、机同士を磁石でつなぎ、安定させられるのだ。

レイアウト変更しやすければ、グループワークをする機会も増え、アクティブ・ラーニングを促しやすくなる、というワケだ。

VIMの机は縦565ミリ×横720ミリの広い机面を持ちながら、コンパクトに収納できる。ビビッドカラーの椅子は班分けに便利

不要な時にはコンパクトに収納し、片付けられるのも、アクティブ・ラーニング・ファニチュアの特長だ。このcommuneや、左写真の「VIM」シリーズは、机の天板を跳ね上げて、スーパーマーケットのカートのようにスタックできる。研修室など教室の隅に片付けても、場所を取らない。

机だけでなく、椅子にも教育向けならではの工夫が凝らされている。VIMシリーズは、元々オフィス用の家具として販売されていたが、教育現場向けにリリースするにあたり、赤や青など色のバリエーションを追加。「各グループの色を決めて、班分けしたい」という、教育現場のニーズを反映したという。

現代アートのようなデザインが目をひく「buoy」も、学習用の椅子だ。底面がゆるやかな球状になっており、バランスボールのように前後左右に揺り動かせる。
「ずっと同じ姿勢で座っていると集中も途切れやすく、エコノミー症候群の恐れもあります。このbuoyなら前後左右に揺すって姿勢を変えられますので、そんな心配がありません」
 実際に座ってみると、バランスボールのように自由に傾けられる面白さがあると同時に、一定角度以上は倒れないので安定もしている。ずっと座っていたくなる、不思議な心地良さだった。

写真手前がbuoy 。高さを無段階で最大14センチ調整できる。上写真の通り、高さ変更レバーが取っ手も兼ね、移動もさせやすい。media:scape Lounge with Hoodは左右後ろに長いスリットがあり、先客を邪魔することなく空席か否かを確認できる。カラーバリエーションも豊富で、座面や背もたれ、フードの色をカスタマイズできる

ユニークな形の椅子といえば、「media:scape Lounge with Hood(メディア:スケープ・ラウンジ、フード付き)」も、目立っていた。これは、ベンチ型ソファに、左右と後ろを覆うフードがついたもの。なぜこのような形状になっているのだろうか。
「人間の集中力は、一度途切れると元に戻るのに22~23分かかると言われています。フードがついているのは、他人の視線や周りの雑音を遮断するため。周りに邪魔されることなく、学習に集中できます」
 試しに座ってみたが、自分(たち)だけの空間にいるようで、とても落ち着く。シートも広々としており、2人並んで腰掛けても狭さは感じない。
「現在、大学を中心にラーニング・コモンズなどの学習空間を作る動きが加速していますが、悩みの種になっているのが場所の確保です。このソファを用いれ ば、ソファを置いた所がすぐに学習空間になります。エントランスやロビー、渡り廊下などの空きスペースを、有効に活用できます」。

たかが家具、されど家具。アクティブ・ラーニングを促すには、学習環境づくりも大切なのだと実感した。

家具だけでなく、アクティブ・ラーニングを促す教具の数々も展示されていた。特に「これは便利そう!」と感心したのが、写真の「アクティブボード」だ。

ドーナツ型に並べたcommuneの真ん中に、「アクティブボード」を置く。これなら各机のスペースを広く使え、ボードに四方から書き込める

以前、「実践の場から」でリポートした北区立豊川小学校のように、グループワークでホワイトボードを使う学校が最近増えている。グループ内で出た意見や議論を、画板大の大きなホワイトボードにまとめて発表するのだが、このホワイトボードを、より教育現場向きに使いやすく改良したのが、このアクティブボードだ。S・M・Lの3サイズがリリースされているが、裏面の四辺にマグネットがついているのが大きな特長だ。Sサイズなら黒板に6枚同時に貼り付けられる。これなら各班の発表を見比べやすく、教師が解説を加えたり注釈を書き込んだりもしやすい。

白地に色ペンで書くのでとても見やすく、模造紙と違って何度でも消して書き直せる。サイズが大きいので、たくさんの考えを書き込め、整理もしやすい。導入すればすぐにでも効果を上げられる、オススメの教具である。専用のスタンドやカートも用意されているのも、嬉しい所だ。

[アクティブ・ラーニング支援アプリ]私物のスマホをAL用教具に早変わりさせるアプリ

ここまではアクティブ・ラーニングを促すアナログな家具や教具を紹介してきたが、アクティブ・ラーニングを加速させるデジタル教具も展示されていた。特に注目を集めていたのが、「MOVARI」というアプリ。学生の私物のスマホを、アクティブ・ラーニング用教具に早変わりさせるアプリである。
MOVARIでできることは、大きく分けて三つ。

(1)ファイルの共有
 任意のメンバーでグループを作成し、グループ内で各種ファイルを共有できる。ワードやエクセル、パワーポイントで作ったファイルはもちろん、動画、音声、画像、pdfなどに対応。スマホだけでなく、PCからも利用できるので、自宅のPCで作成したファイルをMOVARIでアップし、グループメンバーで回覧する使い方もできる。

(2)オンラインでディスカッションできる
 コメントを書いたり、「いいね」をつけたりできる。例えば、授業が終わった後に、オンライン上でディスカッションの続きをしてもいい。コメントのやりとりを、教員が閲覧できるのも嬉しい。進捗状況を正確に把握でき、指導に活かせる。

(3)クリッカー機能も搭載
 教員はMOVARIでアンケートや選択問題を簡単に作れるし、学生はスマホで回答できる。回答は自動で集計され、その結果を全員ですぐに見られる。MOVARIがあれば、クリッカー専用端末はもう不要だ。

このMOVARIは、私物のスマホで使う前提で設計されている。このような私物のモバイル端末を学習や業務で使う方式はBYOD(Bring Your Own Device)と呼ばれ、最近注目を浴びている。その良さはどこにあるのだろうか。

「最近はノートPCやタブレットを学生に持たせる大学がほとんどですが、重かったりかさばったりで、授業で使う時しか持ってこない学生も多いのです。でも、自分のスマホなら、常に肌身離さず持ち歩いていますよね。私物のスマホをアクティブ・ラーニング用のデバイスに変えることで、授業中でも授業外でも、大学でも図書館でも自宅でも、いつでもどこでも、場所と時間を選ばず学習できる。学びたいと思った時に、学べる環境を作ってあげることが、学生達のアクティブ・ラーニングを活性化させると考えています」。

写真:言美 歩/取材・文:長井 寛

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