2017.09.06
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「アグネスの教育アドバイス」連載100回記念スペシャル企画(#01) アグネス×現役教師 3つの対話――競争心をポジティブに活用するには?

「アグネスの教育アドバイス」連載100回記念スペシャル企画(#01)

アグネス・チャンさんが学校や家庭教育の悩みについて考える本連載が、記念すべき100回を迎えました。奇しくも今年は次期学習指導要領が告示された年。そこで、9月~12月はスペシャル企画として、アグネスさんと現役教師が一対一で身近な教育課題について深く語り合う「3つの対話」と、全員参加の「クロストーク」をお届けします。さて、アグネスさんと先生方は「主体的・対話的な深い学び」を実践できるでしょうか!? 第1回目は、沖縄アミークスインターナショナル小学校・中学校校長の安居長敏さんとの対話です。

アグネス×現役教師3つの対話

第1回アグネス×安居長敏「競争心をポジティブに活用するには?」対話動画

受験、就職、恋愛・結婚、老後の安定……人生に競争はつきもの。格差社会とも言われる今、学校は、家庭は、子どもに競争社会を生き抜くための方法を教えなくてもよいのでしょうか? 対話1つ目は、アグネスさんと安居長敏さん(沖縄アミークスインターナショナル小学校・中学校校長)が、これからの社会を生き抜くための「競争心」について考えます。静かにスタートした対話は、やがて白熱したものに。ラストの大人への提言では、お二人の息の合った掛け合いが見られます。ぜひ、ご注目を!

競争心の希薄な子どもが増えている!?

安居長敏(敬称略 以下、安居) 競争と言うと、勝ち負けや損得といった側面ばかりをクローズアップしすぎではないでしょうか。競争心は向上心となり、子どもの成長に良い循環をもたらす大切なものだと思います。しかし、日々学校で子ども達を見ていると、競争を避ける子や、競争心そのものを持たない子は少なくないと感じます。それには、日本の学校教育の平等主義が影響しているのではないでしょうか?

アグネス・チャン(敬称略 以下、アグネス)  確かに、「皆、平等に」という考え方は、日本の教育現場だけでなく社会全体に浸透していると思います。東日本大震災のような大災害の時にも利他の心を忘れない、日本人の和の精神は素晴らしいものです。その半面、自分を抑えて周囲と足並みを揃えなければ、和を乱したと否定的に捉えられがち。それは「出る杭は打たれる」ことにもつながり、子ども達のプレッシャーになっているとも考えられます。

学法法人アミークス国際学園「沖縄アミークスインターナショナル小学校・中学校」校長 安居長敏さん

安居 日本の中だけで物事が完結するのであれば、周囲との調和を最優先する農耕民族的な平等主義も悪くはないのかもしれません。ただ、これだけ世界がグローバル化してくると、それだけでは立ち行かなくなってきますよね。

アグネス そう思います。テクノロジーが進化し、誰も考えつかないような新しい発想が求められるこれからの時代、人が真似できないものを何か一つは持っていないと、世界の中で淘汰されてしまうでしょう。

安居 競争心が希薄であればなおさら、未来を切り拓いていくことが難しくなってしまうと思います。

競争心をポジティブな方向に導くには?

アグネス この競争社会にあって、我が子の将来を心配しない親御さんはいないでしょう。競争に勝てなければ、「負け組」というレッテルを貼られかねないのですから。

安居 ただ、競争には有意義な面もあると思います。私自身は他者との競争の中で生じた「負けたくない」という気持ちがモチベーションとなり、自分との競争につながっていきました。

アグネス・チャンさん

アグネス 競争相手が他者から自分自身へと転じる中で、安居先生が得たものは何ですか?

安居 「もっと成長したい」という向上心が生まれました。そして、目標に向かって試行錯誤を繰り返すうちに、課題解決力やコミュニケーション能力などの社会で求められる能力・資質が磨かれていったように思います。

アグネス そんな風に競争心を自分自身に向け、ポジティブな方向に導いていくためには、主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)などを通して、子ども達に「自分で考え、学ぶ楽しさ」を教えることが大切だと考えます。どんなに小さな発見であっても先生が褒めてあげることで、子どもは次へ、また次へと目標を見つけて頑張っていけるのではないでしょうか。

安居 なるほど。家庭ではどうすればよいでしょう?

アグネス 子どもが興味のあることを家族皆で楽しみ、後押ししてあげるとよいでしょう。子どもが今の自分を超えるための目標を一緒に立てて、それをクリアするプロセスを応援してあげるのも有効だと思います。

安居 競争の結果ではなく、その過程で得た学びや成長を重視するということですね。そのためには、先生や親が「待つ」ことも必要かもしれません。子どもが夢中になって取り組んでいる時には、無理に次に進もうとしないことも大切だと思います。

人生に勝つとは、どういうこと? 大人も意識改革を!

安居 とはいえ、ポジティブな競争で自分の能力を磨けば競争社会で勝てるのか? 残念ながら、必ずしもそうとは限らないでしょう。一芸に秀でた人材を選抜・採用する大学や企業はあるものの、現時点ではごく一部です。

アグネス しかし、今や年功序列や終身雇用制度は崩れ、大企業であっても経営破綻に陥る時代。広く浸透している「良い大学を出て良い会社に入っておけば大丈夫」という価値観は、もはや意味を失いつつあると感じます。

安居 だから先生や親御さんには、あえてこう言いたい。「これまでの価値観や自分の成功体験を捨てて子どもに接してみませんか?」と。

アグネス そう。重要なのは「子どもが何を学び、どんな人になりたいか」であり、その実現に一番ふさわしい進路を子どもが親や先生などとよく話し合って決めることでしょう。先々、子どもがどれだけお金や地位を手に入れても、望んでいない道に進んで達成感や喜びを一切感じていないとしたら? あるいは、希望する道を選ばなかったことを後悔し続けていたら? それは「人生に勝った」とは言えないのではないでしょうか。

安居 そう思います。子どもがどのような道を選択するにしろ、自己実現のためには、やはり自分との競争で能力を高めることが必要になりますね。

アグネス はい。他者との競争を自分との競争に変え、昨日より今日、今日より明日と成長し、自らの人生を切り拓いていく。子ども達が、そんな風にポジティブに競争心を活用できるよう、私達大人が働きかけていかなければならないと思います。

《参加教師プロフィール》

安居 長敏(やすい ながとし)

学法法人アミークス国際学園「沖縄アミークスインターナショナル小学校・中学校」校長。私立高校で20年間教員を務めた後、コミュニティFMを2局設立し、パソコンサポート事業を起業。再び学校現場に戻り、滋賀学園中学高等学校校長などを経て、2017 年4月より現職。「創造的な思考者・自主的な学習者・挑戦する人」の育成に取り組む。

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アグネス・チャン

アグネス・チャン

1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)

AGNES CHAN OFFICIAL SITE ~アグネス・チャン オフィシャルサイト

企画・構成:宝子山真紀/文:吉田教子/写真:言美 歩/イラスト:あべゆきえ

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