2016.06.07
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若い教員の学級経営 ~PDCAサイクルを生かす~

帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師 鈴木 邦明

6月に入りました。

新年度が始まって、2か月が経過したことになります。

クラスの状態はどんな様子でしょうか?

 

今回も若い先生たちの学級経営について書きたいと思います。

 

多くの場合、若い先生たちは、時間を掛けて、エネルギーも掛けて、仕事に取り組んでいます。

しかし、がんばっても、状態が徐々に悪くなっていっているということがあります。

その原因を簡単に言うと「方法が間違っている」ということです。

以前に書いたように、「事務仕事」に時間を掛け、エネルギーを掛けていてもなかなか学級の状態は良くはなりません。

 

より良い学級経営のための「考える」と「見る」ということについて、よくビジネスなどで用いられる「PDCAサイクル」を用いて考えてみたいと思います。

 

P (Plan:計画)

D (Do:実行)

C (Check:評価)

A (Act:改善)

 

若い先生たちを見ていると「Do(実行)」が多すぎるように感じます。

教員の仕事は、子どもと色々と関わったり、学習指導をしたり、一緒に遊んだりと何となく「活動的」なイメージがあるかもしれません。

そういったイメージからか、若い先生たちはよく動きます。

しかし、教師は「動く」以上にもっと「考える」ことが大事なのではないかと思います。

授業において何かをするには、それにあたっての意図があります。

その意図(ねらい)はどういったものなのか、それを行う上で配慮すべきことは何なのかなどについてしっかりと考える必要があります。

また、授業などを行った後には、その授業が効果的に行われていたのかを評価(見る)する必要もあります。

若い先生達は、PDCAサイクルにおけるP、C、Aにもっと時間を掛けるべきかもしれません。

「考える」「見る」ということに今以上に力点を置くことで、クラスの状況がより良いものへと変化していくことでしょう。

 

ところで、「考える」と「見る」について少し詳しく書きたいと思います。

まずは「考える」についてです。

大学を出たばかりの若い先生も、それまでの生活(学生生活など)の中で「考える」ことは、十分にしてきたはずです。

特に学生は学ぶこと、考えることが本分です。

しかし、学生時代の学びは、「作られた」学びとでも言うことができるかもしれません。

それと比べ、教師は学びを「作る」立場になります。

子どもがしっかりと考えることができるように「考える」必要があります。

子どもは一人一人が違っており、多様です。

教師は、そういった状況で、より良い学びをさせるためにはどうしたら良いのかということを「考える」のです。

学生時代の課題のように、分かりやすい解答がある訳ではありませんし、子どもの状況も日々刻々と変化します。

質の高いレベルでの「考える」ことの繰り返しが、教師の仕事の質を上げていくことにつながるのでしょう。

先ほども書いたように若い先生たちは、あまり深く考えないまま、行動をしてしまい、徐々に状況が悪化していくということがよくあります。

しっかりと、じっくりと「考える」ことを続けてください。

 

次は、「見る」についてです。

「見る」ことも、できているようでなかなかできていないものです。

教室で黒板の前に立ち、30人位の子ども達を前にして話をする状況で、果たして全ての子どもの様子を把握できているでしょうか。

離席をする、勝手なことを話す、消しゴムで遊んでいる位であれば、分かると思います。

少し集中がなくなってきた、姿勢が少し崩れてきたなどは、気付けないことも多いと思います。

また、教師が見ている子どもの姿は、その子どもの一部分でしかありません。

教師の前では、とても良い振る舞いをしている子どもが、教師の眼の無い所では、ずるいことや悪いことをしているということもあります。

教師が実際に目にしている状況というものは、十分に子どもの様子を捉えられていないと考えると良いでしょう。

そういった状況で私が行っていることは、「情報が入る仕組みを作る」ということです。

保護者会では、上で書いたように教師は全てを見えている訳ではないので、子どものことで気になることがあれば、小さなことでも良いので連絡をして欲しいと伝えています。

ある親から自分の娘(Aさん)が近頃、Bさんともめているようだということを聞いていたとします。

私の頭の中には「AさんとBさんがもめている」という情報がインプットされます。

普段の生活の中で、AさんとBさんが一緒にいるような場面を目にしたら、少し注目することになります。

この「注目する」ということが大事になります。

やり取りを見ていて、どちらかが怪訝な表情をした時には、積極的に関わっていきます。

親からの情報が無い状況では、AさんとBさんが一緒にいるだけでは、注目をしないはずです。

怪訝な顔をしたとしても、すぐに対応はしないかもしれません。

しかし、親からの情報があれば、早目の対応ができます。

こういったことを保護者会などで話し、親からの情報が集まるようにします。

 

また、子どもからの情報も集まるように工夫をします。

それは「ずるいこと」があったら、すぐに先生に言って欲しいと子ども達に伝えることです。

基本的に子ども達は「ずるい」ということには敏感です。

先生の見ていない所で掃除をさぼっていた、漢字テストの時に隣を覗いていた、嘘をついている・・・。

そういったことがあれば、対応をするので早目に知らせて欲しいと子ども達に伝えます。

おしゃべりな感じの子どもには特にお願いをしておきます。

そうすると、教師が見えない部分の情報が集まるようになります。

 

もう少しで、夏休みです。

難しい状況の先生方は気分を切り替えながら、がんばってください。 

鈴木 邦明(すずき くにあき)

帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師
神奈川県、埼玉県において公立小学校の教員を22年間務め、2017年4月から小田原短大保育学科特任講師、2018年4月から現職。子どもの心と体の健康をテーマに研究を進めている。

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