小学校第5学年社会科教育実践『付箋の自動車』
私の担当している小学校第5学年では,社会科は『わたしたちのくらしと工業製品』の学習に入っています。
我が街・広島は大手自動車メーカーが本社を構えており,工業製品に関する学習は機械(自動車製造)を選択し,その学びをすすめています。昨日は,大手自動車メーカーへ社会科見学にも行って参りました。
さて,本稿タイトルにも入れさせて頂いた『付箋の自動車』という実践は,私がこの単元の導入(第2時)におこなっているものです。
日誌添付写真にもありますように,子どもたちが私の自動車に数百枚にものぼる付箋をどんどん貼りつけていきます。
貼っている付箋には,本単元第1時に子どもたちが書き込んだ『わたしの知っている自動車パーツ』が載っています。
つまり,自分の知っている,または気が付いている自動車パーツだけで本当に自動車が完成できているのか,「実際に自動車に貼って確かめてみよう!」という学習活動です。
今回は,いわば,学校内でおこなえる『プチ社会科見学』の実践としてもご紹介していきたいと思います。
子どもたちの気付きと主体的な学びの姿
子どもたちも普段何気なく乗っている自動車ですが,「いろいろ意識してみると面白い!」と感じさせるのが,この付箋を活用する実践における一つ目の教師側の意図です。
付箋を書きながら子どもたちは,
「あの音が出るのってなんだっけ?あれ!あれよ!」 (注…クラクションのことですね。)
「運転席のことってあんまり知らないなぁ~。」 (注…運転席は,子どもたちは助手席や後席から見えるだけなのであんまり知らないかもですね。)
「ペダルって右がアクセルなんよ!知っとった?」 (注…満面の笑みでなんだか嬉しそう!【パート1】)
「ブレーキって二つあるんよ!知っとった?」 (注…たぶんフットブレーキとサイドブレーキのことでしょう。満面の笑みでなんだか嬉しそう!【パート2】)
「前の席の真ん中にガチャガチャするところがあるよね?先生!」 (注…シフト系パーツのことです。ガチャガチャするところですね。)
など,子どもたち全員が経験のある自動車乗車から見い出す課題ですから,とても意欲的且つスムーズに単元に入っていくことができました。
そして,子どもたちは,自分で書いた付箋をグループ内で紹介した後,どうしても答え合わせをしたがります。
そこで教師は,
「今までの学習のお米や魚・釣り竿は教室に持ち込めるけど,自動車は無理だなぁ。」とつぶやくと…子どもたちの笑い声の後に,
「先生のクルマ,見に行って確認したい~!!」
と子どもたち側から主体的に『観たい!聞きたい!調べたい!確認したい!』の学習活動に入り込んでいくことができます。
これがこの付箋を活用する実践における二つ目の教師側の意図です。
子どもたちから『見学したい!調べたい!』とならない限り,その学習時間を組むべきではないと考えています。
それは,教師が授業展開の中から子どもたちに主体性をもたせながら導いていくべきものだと感じています。
その後,日誌添付写真にもありますように,付箋を実際に私の自動車に貼り,付箋が貼られていない,子どもたちが知らないパーツも自動車にとって必要であり,工夫や努力が込められた工業機械製品だと単元を通じて子どもたちに気付かせていきたいものです。
付箋は社会科教師の必須アイテム
今回の実践で使用したアイテム『付箋』は,小学校社会科教師の必須アイテムにしても良いくらい活用できる単元が多いのが特徴だと感じています。
今回ご紹介させて頂いた実践以外にも,例えば同じ小学校第5学年なら『日本の国土と人々のくらし』の単元導入の時間で,子どもたちが予備知識として知っている世界の国々を付箋に挙げさせていったり,『わたしたちのくらしと食糧生産』の米作りの学習では,米に関する疑問を一人ひとりが挙げていく際に活用しました。一人で50以上の疑問を挙げる子どももいました。漁業についての学習では,知っている魚の名前をとにかくたくさん挙げさせ,それを食べられるか食べられないかに分類した後,単元の導入として日本で食べられている魚介類TOP10クイズへとつないでいきました。
ここまで挙げさせて頂いたように,単元の導入部分における子どもたちの興味・関心・意欲を高める際の活用が主といえます。
この付箋活用の留意点は,たった3つ!
1.付箋一枚に一つの事柄・名称等しか書かせないこと。
2.個人の付箋書き込み時間には制限をもたせ,限られた時間でできるだけ多くの事柄・名称等を挙げさせること。
3.付箋の書き込みが終わった後は,必ずグループ等で紹介・分類・整理させること。
私の担当している小学校高学年の学級の子どもたち(中学年では活用していない)は,『新しい学習単元(導入単元)』=『付箋を使った学習』という形にも慣れつつあります。
付箋の書き込みには,ある程度の慣れは必要なので,はじめは長めに時間をとりながら活用していくと,だんだんと子どもたちの多様な意見や想定以上の予備知識にこちらが驚かされるほどです。
これからも社会科単元導入における付箋活用の実践を積み上げながら,子どもたち自らが社会的事象を『観たい!聞きたい!調べたい!確認したい!』となる学習の展開につなげていけるよう,更に改善を進めていきたいと考えています。
中村 祐哉(なかむら ゆうや)
広島県公立小学校 教諭
「社会科教育」「国際教育」「ESD」をメインテーマに,日々授業実践と研究に取り組んでおります。拙い教育実践ではありますが,共に学ばせていただければ幸いです。
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