なぜ社会科にこだわるのか
今回で連載の最終回となりました。2年間にわたって書かせていただきましたが、主に社会科を中心に取り上げてきました。実は私が社会科にこだわって追求していこうと考えたのは、7~8年ほど前のことだと思います。それまでは、どちらかと言えば「学級経営」に力を注いでいました。
では、なぜ社会科にこだわるようになったのか。最後にそのあたりを書かせていただきます。
大阪市立野田小学校 教頭 石元 周作
小学校社会科の目標
あらためて確認すると、現在の学習指導要領において小学校の社会科の目標は、次のように定められています。
「社会的な見方・考え方を働かせ、課題を追究したり解決したりする活動を通して、グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の形成に必要な公民としての資質・能力の基礎を次のとおり育成することを目指す」
ここでいう「次のとおり」は、社会の仕組みを理解する「知識・技能」。
社会的事象の意味や因果関係を考えたり、考えたことを選択・判断したりする「思考・判断・表現」。
主体的に問題を解決しようとする「主体的に学習に取り組む態度」という3つの資質・能力の要素です。
この目標からあるべき子どもの姿は
①社会的な見方・考え方を働かせることができる
②課題を追究して解決することができる
③公民としての資質・能力の基礎をもつことができる
と整理できると思います。
しかし、この現在の学習指導要領上の定義においても、例えば①の「社会的な見方・考え方」については、学習指導要領上では「社会的事象等の意味や意義、特色や相互の関連を考察したり、社会に見られる課題を把握して解決にむけて構想したりする際の視点や方法」となっています。
しかし藤瀬(2022)が整理しているように、社会科教育の中では「転移可能な概念的知識」「子どもが既に身に付けている認知的な枠組み」「学問固有(地理学や歴史学など)の視点とそれを捉える方法」と3つの使い方がされてきており、「児童生徒が見方・考え方を働かせる授業とはどうあるべきかしっかり議論を深めたい」と述べています。
また、②の「課題を追究・解決する」については、いわゆる「問題解決学習」を意味していますが、唐木(2022)は「問題解決学習では本来、『問題』を学習者の生活経験から生じるものに限定して捉えるのに対し、社会系授業では、問題を社会問題としたり、教師から提示したりすることもある」と述べています。
③の「公民としての資質」についても、社会科教育の中で言われてきた「公民的資質」ですが、唐木(2016)は、公民的資質の定義を「理解や態度、能力などを含んだ非常に幅広い観点からつくられている」ことを指摘しています。
つまり、目標ひとつをとっても様々な解釈ができ、それを常に考え、他人と議論していくことが大切にされています。
考え続ける
これまでの連載で様々な授業実践を紹介させていただきましたが、自分なりにこだわっていたのは、「対抗社会科」のように、社会の事象を多角的・多面的に捉えるということです。
多角的に捉えようとするとたくさんの「ひと」が登場しますし、多面的に捉えようとするとたくさんの比較事象が必要になります。
一つ「わかった」となったら「本当にそうなのか」と考えたり、「違うとらえはないか」と考えたりといわゆる「批判的思考」を働かせることです。そういった「批判的思考」を持ち、考え続けてほしいと思っています。
そのことが持続可能な社会をつくっていく原動力の一つになると思っています。
ただ、「なんでもあり」という悪しき相対主義に陥らないために、対話したり、議論したりすることで納得解を生み出す力もつけてほしいと思います。
それが社会科でできると思っていますし、やりやすいと考えています。だからこそ、社会科にこだわっています。
「ひと」との出会い
そして、やっぱり社会科は多様な立場の「ひと」と出会うことができます。社会をつくっているのは「ひと」だからです。
「ひと」との出会いによって自分が成長していくことを確信しているからこそ、子どもたちに出会ってほしいですし、出会う場をつくっていきたいと思っています。
重要なこと
一度この連載でも引用させていただきましたが、永田(2022)は公民的資質・市民的資質の定義において
「公民的資質・市民的資質の定義は必ずしも統一的なものではない。公民的資質・市民的資質はこれまでも今後も何者かが統一することがないことが、社会科として重要なことである」と述べています。
社会科という教科を「何者かが統一することがない」からこそ面白いし、素敵であると思います。私の連載もぜひ「本当にそうなのか」と批判的に読んでいただけたらと思います。
2年間の連載、ありがとうございました。
参考資料

石元 周作(いしもと しゅうさく)
大阪市立野田小学校 教頭
ファシリテーションを生かした学級づくりと社会科教育に力を入れて実践してきました。
最近は、書籍からの学びをどう生かせるかや組織開発に興味があります。
統一性がない感じですが、子どもの成長のために日々精進したいと考えています。
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