2015.07.03
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中村祐哉のシャカリキ社会科 ~第9回『子どもたちにとって古いとは…』~

広島県公立小学校 教諭 中村 祐哉

 子どもたちにとって『古い』とは?

 これまでのつれづれ日誌でも書かせて頂きましたが,今年度は社会科専科として,3・5・6年生7クラスの社会科授業を担当しています。公立一般小学校では,設定されることが少ない社会科専科という立場を通じて,学年を超えて見えてくる教科の特性・系統性と,児童の発達段階に応じた指導を毎日の授業から学びながら,社会科を専門とする私としては,大変勉強になる一年を過ごさせて頂いています。

 今まで5・6年生の学級担任をさせて頂くことがほとんどだった私は,今年度初めて3年生の子どもたちの社会科授業を担当しています。今までの教材研究の積み上げのある5・6年生は児童の実態に合わせブラッシュアップした教材を使用しながらも,3年生の地域教材における単元開発には,今,最も力を注いでいるところであります。

 そんな中,6月初旬から『わたしたちの市のようす』という単元の学習に入りました。

 小学校学習指導要領解説・社会編(文部科学省/平成20年・東洋館出版社)では,この単元で扱うべき内容の一部として,以下のように記されています。

 

○身近な地域や市(区,町,村)の特色ある地形,土地利用の様子,主な公共施設などの場所と働き,交通の様子,古くから残る建造物など

 

 その中で,今回は,かなり絞られたピンポイント記事になるのですが,子どもたちの中にある『古い(古くから残る建造物)』という言葉の認識にスポットを当てながら筆を進めて参りたいと思います。

 

子どもたちの『古い』という認識を知る

 ここの単元で,市内のようすへ学習内容を広げて行く前に,まずは地域における『古くから残る建造物』を授業で取り上げることにしました。

 そこで,子どもたちに身近な『古い』建物についてフィルターを掛けることなく発問してみると,「小学校」や「コンビニエンスストア」など,地域にあるほとんどの建物が『古い』という認識だとわかります。

 3年生の子どもたちにおける『古い』という基準は,自分が生まれる前・もしくは物心がつく以前からある建造物は,すべて『古い』という認識なのです。

 

『古い』という時間軸を整理させる学習活動

 大人でも『古い』という認識は,時・場合などによって,人それぞれだと思います。

 新しいものと比較して『古い』,他のものと比較して『古い』というように,そこの判断基準は様々ですが,比較という視点をもっています。

 しかし,子どもたちはどうでしょうか?時間軸を扱うにあたって,まずは,比較という視点をもたせるところからスタートする必要があるのかもしれません。

 そこで,いつくかの建物を写真に撮ったものを電子黒板に提示しながら,子どもたちの手元にも同一カードをもたせ,まずはそれらの建物を『古い』と感じる順に並び替えさせる学習活動を取り入れました。

 すると,例えば「お寺→小学校→コンビニエンスストア」というように,ほとんどの児童が並び替えを行うことができました。

 ここでもう一度「古い建物を教えて?」と発問すると全員が「お寺」と答えました。

 他の建物と自然と比較しながら,最も古い建物を問いているわけではないのですが,子どもたちは「お寺」を選択しました。

 つなげて,「他にも地域に古い建物があるのかな?」と問うと,今度は,「神社」や「城跡」などが挙がり,単元の学習の中へ入っていくことができました。

 また,この後に控える3年生・社会科の学習単元にある「昔の道具とくらし」にも汎用性をもたせながら活かせる活動だと感じました。

 

 次回は,夏休みに入っている学校も多いかと思われます7月22日水曜日の公開になります。まだまだ,未熟な教育実践記事ではありますが,今後ともどうぞよろしくお願い致します。

中村 祐哉(なかむら ゆうや)

広島県公立小学校 教諭


「社会科教育」「国際教育」「ESD」をメインテーマに,日々授業実践と研究に取り組んでおります。拙い教育実践ではありますが,共に学ばせていただければ幸いです。

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