2015.03.04
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中村祐哉のシャカリキ社会科 ~第7回『小学校第6学年社会科(公民的分野)授業のキーワード』~

広島県公立小学校 教諭 中村 祐哉

小学校第6学年の社会科『公民的分野』について

 前回に引き続き,小学校第6学年の社会科について,今回は『公民的分野』にスポットを当ててみたいと思います。

 小学校の第6学年社会科では,(各校シラバスにもよりますが)約4ヶ月間ほど取り組む『公民的分野』の学習。先生方は,この分野の学習にどのようなイメージをおもちでしょうか?

 卒業を間近に控えた多忙な時期,子ども達の学びも充実した『歴史的分野』の学習を終えたあとのここでの学習。その内容からも,どこか扱う教材が子ども達にとって抽象的だったり,その学習形態も一種の網羅的なものになったりしてしまう傾向や印象があるように思います。

 ここでは,まだまだ未熟な私の取組ではありますが,『公民的分野』における授業での具体的実践の一部も例として取り上げながら社会科『公民的分野』について考えていきたいと思います。

 

 抽象的・網羅的な扱いにならない公民的分野の学習へ

 では,『公民的分野』の学習が抽象的・網羅的にならないような取組には具体的にどのようなものが考えられるのでしょうか?

 小学校学習指導要領解説社会編(東洋館出版社)にある第6学年『公民的分野』の目標を見ると,

1.我が国の政治の考え方

2.国際社会における我が国の役割

3.世界の国々の人々と共に生きていくということ

という3つの柱を主として押さえることが挙げられています。

 今回は,その中の特に1の部分に関して,抽象的・網羅的にならない授業について考えていきたいと思います。

(※2.3に関しては,今後のつれづれ日誌でご機会があれば,ESDの視点と併せながらお話したいと思います)

 

 それでは,この【1.我が国の政治の考え方】の学習について授業での具体的な取組を例にあげていきたいと思います。

 それは,地域や学校生活の中における身近な話題や懸案事項を議題として,実際に子ども達が議員となって模擬市町村議会を開いてみるという方法です。実際に市町村議会などの映像を見せながら,臨場感溢れる学習の場を教師が設定することで,今まで自分の生活から近くて遠い存在だった政治が,授業での活動を通じて子ども達が身近なものとして捉えることができるようになると考えています。

 これらの取組を行なった次は,選挙活動にスポットを当てていきます。

 実際に子ども達が朝の登校時間を使って模擬演説をしたり,授業では模擬選挙を行ったりしながら,最終的には,模擬国会を開くという実践です。

 模擬国会の議員に立候補した子ども達の選挙ポスターは,実際の選挙ポスターを参考にしながら教師が忠実に再現し,実際の選挙ポスター掲示板さながらの教室掲示を行ないます。そのポスターを背に立候補した子ども達は熱い演説を行なっていきます。模擬選挙活動を中心に,クラス全員でこの『公民的分野』の学習に熱くなれる取組です。もちろん,熱いだけでは学習内容が定着したとは言えないので,社会科用語の整理は随時,調べ学習も取り入れながらおこなっていきます。

 国会議員役は,立候補の有無に関わらずクラス全員が順番に行い,実際の議題を討議し,決議するまでを子ども達に体感させることが大切です。

これらの活動によってその内容は抽象的なものになりにくく,また網羅的な押さえではない授業を展開することができるように思います。

 実際に,この授業展開を過去に4度(4年)ほど取り組んで参りましたが,子ども達の学習のまとめには「今の僕たちの住んでいる街の未来が勉強したシステムで決まっているということを初めて知り,議会に興味をもちました」「家に帰ったら,投票は未来が決まる大事なことだから行こう!と家族に声をかけようと思います」「私たちが普段開いている学級会は,小さな国会みたいなものだとわかりました」など,自分と政治を結びつけながら考えていることが見取れる子どもたちのノートが多くありました。

 

 これからの自分たちを考える社会科の学習とは

 子ども達は,前回,執筆させていただいた『歴史的分野』の学習においては,過去を知り,今回の『公民的分野』では,今を知ります。 

 私は,これらの第6学年も含めた社会科の学習から学んだ既習事項を糧に,時間軸に沿ってこれからの自分たちの地域社会・国際社会を具体的なヴィジョンをもちながら考えていくことのできる〝学びの時間と学びの場〟がある社会科を提案していきたいと考えています。

 そこには,これまでの社会科で大切にされてきたことにプラスして,今回の執筆では膨大な文量となるため,割愛させて頂いたESDの視点を併せた考え方も必要になってくると思っています。

 子どもたちの小さな気付きから追求がはじまり,それが社会科の教材となり,最終的には,自分たちの未来の社会を考える糧となる。

 そんな社会科の授業をこれからも考えていきながら,日々努力していきたいと思っています。

中村 祐哉(なかむら ゆうや)

広島県公立小学校 教諭


「社会科教育」「国際教育」「ESD」をメインテーマに,日々授業実践と研究に取り組んでおります。拙い教育実践ではありますが,共に学ばせていただければ幸いです。

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