小学校第6学年の社会科(歴史的分野)
今年度も残すところ約1ヶ月半となりました。各学年,まとめの時期に入り,先生方におかれましてはお忙しくされておられる時期かと思います。
それと共に,この時期は全国的にも大学附属の小・中学校を中心として大きな研究発表協議会や公開授業研究会等が続く,私たち教師にとっては新しいものを多く吸収でき,学びを深めることができる時期でもあります。
かく言う私も,先週の2月6日から7日にかけて,地元・広島で行なわれた『第96回広島大学附属小学校研究発表協議会』に参加させて頂きました。『グローバル化社会を生き抜く子どもの育成』をテーマに各教科,大変先進的な研究をされておられ,非常に勉強になった研究発表協議会でした。
普段,アウトプットの多い教師という仕事の中で,大切なインプットの機会を与えて頂いたことにも,とても感謝致しております。
さて,今回のつれづれ日誌は,小学校最終学年である第6学年の社会科授業づくりについて,キーワードを挙げながら考えていきたいと思います。とはいうものの,第6学年の社会科に関しては,『歴史的分野』と『公民的分野』に指導内容を大きく分けることができます。
その『歴史的分野』においては,授業の中心として『人物の働き』と『代表的な文化遺産』,そして『歴史的事象』について学習していくことになっています。
今回は,その中でもさらに『人物の働き』(歴史上人物)にスポットを当てながら,お話を深めていきたいと思います。
小学校社会科学習指導要領では42人が例示されているが…
小学校社会科学習指導要領の第6学年内容取扱いでは「卑弥呼」から「野口英世」までの42人を取り上げるよう例示されています。
しかし,その部分の解説には但し書きのような意味合いの文が付け加えられています。
『児童にとって我が国の歴史を初めて学習することから,児童の興味・関心を重視し,取り上げる人物や文化遺産を精選する必要がある。』
(※小学校社会科学習指導要領第3章各学年の目標及び内容・第6学年の目標と内容より抜粋)
この文の中の『精選』という言葉に注目してみましょう。
自分自身が歴史好きの先生や,中・高等学校の教員免許状社会科をお持ちで小学校第6学年社会科を指導されておられる先生なら,詳しく教材研究をするあまり,この人物の偉業についても教えたい!あれもいいエピソードだからこの人物も扱いたい!と思わずなったことは,一度や二度ではないとお察し致します。私自身も,もちろんその一人です。
教材研究の段階では,きっと年間で100人以上の歴史上人物が授業登場の候補になったのではないでしょうか?
社会科全般においても言えることですが,資料の『精選』というものは非常に頭を悩ます部分でもあり,教材研究における大きなテーマの一つとも言えることです。そこを歴史上人物を取り上げる場合でも同じように,学習指導要領に沿って小学校での歴史の授業を行なうために…という点に配慮したいものです。
調べてみると,小学校の社会科教科書自体も,どの教科書会社の教科書を開いても50人以上の歴史上人物を登場させています。多い教科書会社では,80人近く掲載されている教科書もあります。
では,これだけ多くの歴史上人物を,前述した児童の『興味・関心』を重視しながらも『精選』する,というバランスを取りながら,小学校の社会科授業の中で扱うかどうかを考えるポイントはどのようなところにあるのでしょうか?
『歴史上人物の働き』『代表的な文化遺産』『歴史的事象』が結びつく人物にスポットを!
そのポイントは,小見出しに挙げた3点が重なる人物ということがキーワードとなります。
歴史上人物としての働きがあることはもちろん大前提ですが,その人物に関連がある代表的な文化遺産(有形・無形は問わない)があり,そして小学校の歴史学習の範囲で扱うことができる歴史的事象がある場合には,この3点が重なる人物ですので授業に登場させる最優先人物になります。
小学生の基礎的・基本的知識としての定着率が高い歴史上人物である「卑弥呼」や「聖徳太子」は,実際にこの3点が重なる人物です。
指導要領に例示されている42人を扱うことはもちろんですが,それ以外の人物を授業に登場させたい場合には,まずこれに当てはまるかを一人ずつ精査していくと,児童の『興味・関心』を重視しながらも『精選』するという授業におけるバランスを保った歴史上人物を登場させることができると思われます。
この部分にスポットを当てながら小学校第6学年の歴史分野を押さえていくことで,その後の中学校・高等学校の社会科・歴史科の学習に向けての素地となるものが形成されていくのではないかと考えています。
中村 祐哉(なかむら ゆうや)
広島県公立小学校 教諭
「社会科教育」「国際教育」「ESD」をメインテーマに,日々授業実践と研究に取り組んでおります。拙い教育実践ではありますが,共に学ばせていただければ幸いです。
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