2015.01.27
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中村祐哉のシャカリキ社会科 ~第5回『小学校第5学年社会科授業のキーワード』~

広島県公立小学校 教諭 中村 祐哉

 小学校第5学年の『社会科』を学習指導要領目標から読み解く

 さて今回は,昨年11月以来の「シャカリキ社会科」つれづれ日誌になります。前回の第3・4学年に引き続き,第5学年の社会科授業について学習指導要領から授業のキーワードを見つけながら考えていきたいと思います。

 まずは,小学校社会科学習指導要領にある第5学年の目標を見ていきましょう。


(1) 我が国の国土の様子,国土の環境と国民生活との関連について理解できるようにし,環境の保全や自然災害の防止の重要性について関心を深め,国土に対する愛情を育てるようにする。

(2) 我が国の産業の様子,産業と国民生活との関連について理解できるようにし,我が国の産業の発展や社会の情報化の進展に関心をもつようにする。

(3) 社会的事象を具体的に調査するとともに,地図や地球儀,統計などの各種の基礎的資料を効果的に活用し,社会的事象の意味について考える力,調べたことや考えたことを表現する力を育てるようにする。

 

 ここに挙げた目標や指導要領内の内容項目を読み込んでいくと,「国土の様子」「国民生活との関連」「社会的事象」という言葉が重なって見えてきます。つまり社会科としての系統性から見ると,第3・4学年の「地域(各都道府県)の様子」が「国土の様子」となり,「地域の人々の工夫と努力」が「国民生活との関連」「社会的事象」とつながり,より『地理的視野』が広がった発展的な学習内容になっていることが伺えます。

 これらの系統性や学年を越えた学習内容のつながりにもスポットを当てながら考察を深めていきたいと思います。

 

〝自分たちの住む地域→自分たちの住む県→自分たちの住む国〟と系統性をもった『地理的視野の広がり』を生かす

  第3・4学年の社会科は「地域教材」と呼ばれるもので,ここの副題で述べるところの「自分たちの住む地域」,そして「自分たちの住む県」の様子について学習します。続く第5学年では「自分たちの住む国」について学習していきます。この第5学年の学習の後は,第6学年の「歴史」と「政治」についての学習を挟んで,中学校・地理単元の「アジアの国々」や「世界の国々」の学習へとつながっていきます。

 ここで注目したいキーワードは,社会科の学習によって培われていく子ども達の『地理的視野の広がり』を授業や教材づくりに生かしていくということです。端的にまとめると,現在学習を進めている単元において,「地域教材」等の既習事項の中から出来るだけ児童の身近なことがらに置き換えて説明できるものや,子ども達に調べさせられるものがないのかという点からまずは授業をスタートしてみるということです。

 前回の「シャカリキ社会科」でも述べさせて頂きましたが,第3・4学年の「地域教材」における強みは実際に自分たちで学習単元で扱う場所に見学に行くことができることです。

 しかし,第5学年では学習の対象地域や都道府県は自分たちの住む地域でもなければ県でもありません。(※自分たちの住む地域や県が教科書等で取り上げられている場合を除く)

 つまり,相当な機会がない限り,なかなか授業の中で対象の場所に行くことは難しい状況にあるといえます。

 それでは,第5学年の社会科単元や教材における強みはどこに見いだしていけばよいのでしょうか?

 私は,そこに前述したキーワードでもある,子ども達の『地理的視野の広がり』を生かした授業構成と教材づくりにあると考えています。

 

 『地理的視野の広がり』の先にあるものとは?

  地理的単元の学習の中で,もっとも汎用性をもって活用できるものは地図帳であるといえます。

 地図帳から見えてくる学習単元とのつながりを子ども達に可視化して提示するものが第5学年の社会科授業の中心資料であるべきだと考えています。

 中心資料は,学習単元地域の特徴をとらえた写真であったり,対象を比較出来るグラフだったりと教材研究をすればするほど出てくる多くの資料の中から授業を担当する子ども達に沿ったものになるよう手を加えながら精選していく必要があります。

 この資料の精選作業は社会科における重要な教材研究のひとつであるとともに,資料集めなしには資料の精選もありえません。

 教師が教材研究の中で精選した資料と地図帳を使うことで「国土の様子」を掴むことが出来ます。「国土の様子」からは都市の規模や地域ごとの地理的特徴(気候など)が読み取れ,次第に「国民生活との関連」が見え始めます。これらのことと「社会的事象」を結びつけていくことが第5学年の社会科の基本構造にあると考えています。

 つまり,第5学年の社会科は「子ども達の教室」と「地図帳から見えてくる地理的学習単元対象地」をどこまで近づけることができるのだろうか,という点にあると思います。そこには教師側のICT機器やソフトの活用はもちろん,子ども達の自発的な調べ学習を促せるような単元構成も必要になってくるでしょう。教師自身が実際に現地に赴いて制作する教材も非常に有効です。

 今までの第3・4学年の社会科における社会科見学で,「その場に行けて確かめることができた!」という子ども達の納得やおどろき・満足感を第5学年社会科では,「その場に行って確かめてみたい!」という子ども達の意欲と果てしなき探究心へとつなげていけるところに「(実際にはなかなか)子ども達が行くことができない地理的単元」の強みを見いだしていくことができればよいのではないでしょうか。

 そして,最後に忘れてはならないこと。

 それは,子どもたちの机の上に広げられた地図帳の先には,人々の日々の生活が広がっているということ。

 ここが見えるように授業展開していくことこそが『地理的視野の広がり』を生かす最たるものだと感じています。

 第5学年の社会科でその礎を教師がしっかりと押さえ,子ども達に思考・判断・表現させることで今後の社会科へ取り組む子ども達の姿勢や意欲・関心にも大きく影響してくるものだと実感しています。

中村 祐哉(なかむら ゆうや)

広島県公立小学校 教諭


「社会科教育」「国際教育」「ESD」をメインテーマに,日々授業実践と研究に取り組んでおります。拙い教育実践ではありますが,共に学ばせていただければ幸いです。

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