社会科とICT活用授業の実践
今回から私の第16期連載がスタートとなりました。
第15期では,多くの読者のみなさまにご拝読頂きまして本当にありがとうございました。連載のスタートクールだったにも関わらず,多くの方々からあたたかいご意見や講演依頼等も頂き,まだまだ若輩者で未熟な私ではありますが,大変感謝致しております。
今回からの第16期もどうぞよろしくお願い致します。
さて,第15期の連載から引き続き,今回も小学校社会科授業におけるICT活用の「ステップ」と「ジャンプ」をお送りしたいと思います。
社会科授業でのICT活用!ホップ!ステップ!ジャンプ! ~その2「子どもが考えを伝えあうツールにする」~
ここからは次の段階の「ステップ」です。第2段階では,ICT機器を子どもたちが考えを伝えあうツールとして活用させていくことを挙げてみたいと思います。
ICT機器の良いところは,はじめのうちはそれを使用するだけで子どもたちの興味・関心を引く事ができることです。
まさに,社会科なら授業の導入には,もってこいのツールです。
迫力のある映像や動画の力というものは,子どもたちにも大きなインパクトがあります。
しかし,日々使って慣れてくるとこちらも相当の教材を準備・提示していかないと授業の中でその良さを引き出すことはなかなかできません。
それは,子どもたちにも「ICT慣れ」が出てくるからです。
ここで危惧していることは,教師側のICT活用が子どもたち側の受け身だけになる活用に偏っていないかな?という意味での「ICT慣れ」です。
ICTに関わる研究会などに参加させていただくと必ずといっていいほど「ICTを必要な場面で効果的に…」というニュアンスの発言や発表が聞かれます。しかし,私は社会科という教科はICTが必要な場面は,精選に精選を重ねてもなお多くあり,効果的だと考えられる場面も,他教科のことを考えてみても非常に多いと思うのです。
では,教師がICT機器をここまで使いこなせるようになったのならば,今度は児童にそのツールを解放してみてはどうでしょうか?
私のクラスでは,電子黒板に提示した資料やグラフ・表に子どもたちが発表を兼ねて,自分たちで読み取ったことや自分の考えを書き込みに出てきます。タッチペンの色をグループで指定しておけば,一枚の資料に子どもたちのたくさんの考えや読み取りが加わった「生きた資料」に早変わりします。電子黒板内で2画面提示をすると子どもたち同士の考えの比較も簡単に出来てしまいます。
また,実物投影機(デジタルカメラを接続提示してもよい)も子どもたちが簡単に操作し,考えを伝えあうことのできるツールの一つです。
私のクラスでは,実物投影機のことを「いい考え見っカメラ!」と子どもたちと呼びながら使用しています。
子どもたちの机上で複数の資料を組み合わせたり,動かしたりして考えをまとめている場合,黒板ならその貼り出しは少し難しいものがあります。
しかし,実物投影機をつかってしまえば,自分の机の上に広がった自分の考えや読み取りそのままが,教室の中へと広がっていきます。
このようにして,教師だけがICT機器やソフトを使いこなすことによって生まれるマイナスファクターとしての子どもたちの「ICT慣れ」を,子どもたちがそれを使って考えを伝えあえるツールにできる!というプラスファクターとしての子どもたち自身の「ICT慣れ」にシフトしていくことで,その活用の裾野は大きく広がっていくのではないでしょうか。
社会科授業でのICT活用!ホップ!ステップ!ジャンプ! ~その3「自分の経験をICT化し活用する」~
ここからは最後の「ジャンプ」の段階に入っていきたいと思います。
最後は,「自分の経験や体験をICT化し活用する」ことです。
これは社会科という教科にとって,とても大切な段階として捉えています。他教科で使うICT活用と社会科におけるICT活用の最も異なる部分がここにあります。
例えば,算数科の図形単元の学習。
静的に捉えている図形を動的に捉えさせたい!という場面でICT活用することはとても有効ですし,私自身も使用しています。
国語科の物語文や説明文で出てくる言葉の意味調べにおいて,その状況や物を映像として提示すること,理科においては,学校では行うことのできない実験を映像として見せる,などその教科に応じた活用の方法は無限に広がっているといっても過言ではありません。
しかし,社会科以外の他教科の場合,ICT活用の方法や場面は変わるとしても,根底となる資料や実験自体は基本的に教師によってその差異は大きくないといえます。
では,社会科の場合はどうでしょうか?
例えば,第5学年社会科で学習する『日本の国土の様子・農林水産業・工業・情報産業』についてICTを活用した資料を作ってください,という課題が出たとします。日本全国100人の教師がそれに参加したと仮定するならば,100通りの資料を提示することができる教科が社会科ではないかと思うのです。
つまり,これは第3学年の地域教材からすでに言えることですが,自分で実際にその場に行き,体験したことや空気感を自分の足で稼いだ資料として映像等を使ってICT化すること,これを中心資料として提示・活用していけることが社会科ICT活用の頂点に近いところだと考えます。
「これは,みんなと授業をするために中村先生が実際に行って撮ってきた資料なんだよ。その地域の人へのインタビュアーは中村先生です!」
と言うだけで子どもたちは,
「えっ!すごい!どんなところだった?自分も行ってみたい!」
「資料集に載ってる写真の反対側の街の様子はこんな風になっているんだ!」
「私が疑問に思ったことをインタビューで答えてくれてる!」
とその土地や産業に興味津々です。もちろん社会科の校外学習では,子どもたちが行くことのできない県外や国外の資料ばかりです。
その資料を子どもたちと読み取りながら,最後は自分自身の実際の経験や体験を添えて,学習指導要領の各学年の目標と内容理解の達成へとつなげていく…これがすべて揃ったならばICTを十分に活用し,社会科における教師個々の授業力の光るクラスの子どもたちに沿ったオリジナルの授業が展開されるのではないでしょうか。
さて,次回も引き続き『中村祐哉のシャカリキ社会科~第3回~』をお送りさせて頂きたいと思います。
次回記事は,10月28日火曜日に公開予定です。次回もぜひお楽しみに!(前期・後期制の学校の先生方,成績等お疲れさまでした。)
中村 祐哉(なかむら ゆうや)
広島県公立小学校 教諭
「社会科教育」「国際教育」「ESD」をメインテーマに,日々授業実践と研究に取り組んでおります。拙い教育実践ではありますが,共に学ばせていただければ幸いです。
同じテーマの執筆者
ご意見・ご要望、お待ちしています!
この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)