今回のつれづれは、ものすごくディープなネタです。
でも、特別支援学級の主任レベルの先生方には、ものすごくニーズの高いネタです。
そして、誰も教えてくれないネタでもあります。
事実、私が研究開発したもろもろの仕事の中で、一番、「おおっー!」と驚いてもらえたネタです(笑)。
学校教育には、年間指導計画が不可欠。
あちこちで言われていることで、通常の学級では常識となっています。
でも、特別支援学級に目を移すと・・・年間指導計画がしっかりと整備されている学級はそう多くないことでしょう。
それは、子供たちの障害や習熟度の多様さゆえ、なかなか系統的な年間指導計画を作成できないといった実情があります。
特に、国語・算数では。
「いやいや、特別支援学級ではもっと詳細な個別指導計画があるから」という声もあります。
でも、その個別指導計画は、はたして系統性のあるものになっているでしょうか?
前置きが長くなりました。
タイトルにあるように年間指導計画の作り方です。
特別支援学級(小学校・知的固定)の国語科を例にとって、説明いたします。
まず、特別支援学級に在籍する子供たちの発達段階を5段階に分けます。
1段階 定型発達3~5歳レベル
2段階 定型発達5~6歳レベル
3段階 小学校1年生レベル
4段階 小学校2年生レベル
5段階 小学校3年生レベル
この段階ごとに、年間指導計画を作るのです。
1段階の学習が達成した子供は、次年度は2段階に進めばよいわけです。これが系統性。
もちろん1段階を1年間取り組んだけど、次年度も2段階で取りこぼしたところを学習しようということもできます。
ちなみに、一般的に小学校3年生(9歳)程度の学力があれば、社会生活を送ることができるといわれています。ですので、小学校の特別支援学級では、小学校3年生レベルを最高段階として、しっかりと学力をつけていくのがよいでしょう。
さて、段階ごとの具体的な学習についてです。
1と2段階は、小学校の学習指導要領以前の発達段階です。ですので、「色の名前」「身体の部位」といったところから「模写・視写」「物の名前」など、幼児教育を参考にしながら、1~2か月スパンくらいで、単元を設定します。
3~5段階は、小学校の学習指導要領に準じましょう。教科書を使いましょう。
ただし、教科書を使うときは「焦点化」を意識しましょう。
学習指導要領の目標や、教科書の内容のすべてを授業で行うことは、現実的ではありません。その中から、何を学ばせたいかを「焦点化」、すなわち「厳選」して、授業をするとよいです。
多くの3段階の子供は、2年間かけて、1年生の教科書の内容を終わらせるくらいのスピードがちょうどよいかなと、私の経験上、そう思います。
例えば、3段階の年間指導計画はこのようになります。
4月 えとことばでかきましょう(書く)
5月 しりとり(伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項)
6月 たのしくよみましょう(読む)
7月 ぶんをつくりましょう(書く)
9月 なつやすみにしたことをしょうかいしましょう(話す・聞く)
10月 なにがかくれているのでしょう(読む)
11月 しらせたいことをかきましょう(書く)
12月 だれがたべたのでしょう(読む)
1月 カタカナのことばをあつめましょう(伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項)
2月 たのしかったことをかきましょう(書く)
3月 じゅんじょをかんがえてよみましょう(読む)
学習指導要領の国語科の内容である、話す・聞く・読む・書くを系統的に学習できるようになります。
こういう年間指導計画を学級でしっかりと作っておいて、次に個別指導計画に反映させます。
こうすると、個別指導計画もバランスのよいものとなります。
いろいろな例外は出てくると思います。
「発達段階が3歳以前の子はどうするの?」「自閉の子に読み教材は難しいのでは?」「発達が凸凹の子には?」「学習グループに3・4段階の子が混じっている場合は?」
年間指導計画は、たたき台です。設計図です。
設計図なしに、家は建ちません(笑)。
設計図を基に、その子なりのアレンジをすればよいのです。それが、一人一人の学びに応じた支援なのです。
増田 謙太郎(ますだ けんたろう)
東京学芸大学教職大学院 准教授
インクルーシブ教育、特別支援教育のことや、学校の文化のこと、教師として大事にしたいことなどを、つれづれお話しできたらと思います。
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