2014.08.26
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

特別支援学級の年間指導計画の作り方~小学校国語編

東京学芸大学教職大学院 准教授 増田 謙太郎

今回のつれづれは、ものすごくディープなネタです。

でも、特別支援学級の主任レベルの先生方には、ものすごくニーズの高いネタです。

そして、誰も教えてくれないネタでもあります。

 

事実、私が研究開発したもろもろの仕事の中で、一番、「おおっー!」と驚いてもらえたネタです(笑)。

 

学校教育には、年間指導計画が不可欠。

あちこちで言われていることで、通常の学級では常識となっています。

 

でも、特別支援学級に目を移すと・・・年間指導計画がしっかりと整備されている学級はそう多くないことでしょう。

それは、子供たちの障害や習熟度の多様さゆえ、なかなか系統的な年間指導計画を作成できないといった実情があります。

特に、国語・算数では。

 

「いやいや、特別支援学級ではもっと詳細な個別指導計画があるから」という声もあります。

でも、その個別指導計画は、はたして系統性のあるものになっているでしょうか?

 

 

前置きが長くなりました。

 

タイトルにあるように年間指導計画の作り方です。

特別支援学級(小学校・知的固定)の国語科を例にとって、説明いたします。

 

まず、特別支援学級に在籍する子供たちの発達段階を5段階に分けます。

 

1段階  定型発達3~5歳レベル

2段階  定型発達5~6歳レベル

3段階  小学校1年生レベル

4段階  小学校2年生レベル

5段階  小学校3年生レベル

 

この段階ごとに、年間指導計画を作るのです。

1段階の学習が達成した子供は、次年度は2段階に進めばよいわけです。これが系統性。

もちろん1段階を1年間取り組んだけど、次年度も2段階で取りこぼしたところを学習しようということもできます。

 

ちなみに、一般的に小学校3年生(9歳)程度の学力があれば、社会生活を送ることができるといわれています。ですので、小学校の特別支援学級では、小学校3年生レベルを最高段階として、しっかりと学力をつけていくのがよいでしょう。

 

 

さて、段階ごとの具体的な学習についてです。

 

1と2段階は、小学校の学習指導要領以前の発達段階です。ですので、「色の名前」「身体の部位」といったところから「模写・視写」「物の名前」など、幼児教育を参考にしながら、1~2か月スパンくらいで、単元を設定します。

 

3~5段階は、小学校の学習指導要領に準じましょう。教科書を使いましょう。

ただし、教科書を使うときは「焦点化」を意識しましょう。

学習指導要領の目標や、教科書の内容のすべてを授業で行うことは、現実的ではありません。その中から、何を学ばせたいかを「焦点化」、すなわち「厳選」して、授業をするとよいです。

多くの3段階の子供は、2年間かけて、1年生の教科書の内容を終わらせるくらいのスピードがちょうどよいかなと、私の経験上、そう思います。

 

例えば、3段階の年間指導計画はこのようになります。

 

4月  えとことばでかきましょう(書く)

5月  しりとり(伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項)

6月  たのしくよみましょう(読む)

7月  ぶんをつくりましょう(書く)

9月  なつやすみにしたことをしょうかいしましょう(話す・聞く)

10月 なにがかくれているのでしょう(読む)

11月 しらせたいことをかきましょう(書く)

12月 だれがたべたのでしょう(読む)

1月  カタカナのことばをあつめましょう(伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項)

2月  たのしかったことをかきましょう(書く)

3月  じゅんじょをかんがえてよみましょう(読む)

 

学習指導要領の国語科の内容である、話す・聞く・読む・書くを系統的に学習できるようになります。

 

こういう年間指導計画を学級でしっかりと作っておいて、次に個別指導計画に反映させます。

こうすると、個別指導計画もバランスのよいものとなります。

 

 

いろいろな例外は出てくると思います。

「発達段階が3歳以前の子はどうするの?」「自閉の子に読み教材は難しいのでは?」「発達が凸凹の子には?」「学習グループに3・4段階の子が混じっている場合は?」

 

年間指導計画は、たたき台です。設計図です。

設計図なしに、家は建ちません(笑)。

設計図を基に、その子なりのアレンジをすればよいのです。それが、一人一人の学びに応じた支援なのです。

増田 謙太郎(ますだ けんたろう)

東京学芸大学教職大学院 准教授
インクルーシブ教育、特別支援教育のことや、学校の文化のこと、教師として大事にしたいことなどを、つれづれお話しできたらと思います。

同じテーマの執筆者
  • 吉田 博子

    東京都立白鷺特別支援学校 中学部 教諭・自閉症スペクトラム支援士・早稲田大学大学院 教育学研究科 修士課程2年

  • 綿引 清勝

    東京都立南花畑特別支援学校 主任教諭・臨床発達心理士・自閉症スペクトラム支援士(standard)

  • 岩本 昌明

    富山県立富山視覚総合支援学校 教諭

  • 郡司 竜平

    北海道札幌養護学校 教諭

  • 植竹 安彦

    東京都立城北特別支援学校 教諭・臨床発達心理士

  • 渡部 起史

    福島県立あぶくま養護学校 教諭

  • 川上 康則

    東京都立港特別支援学校 教諭

  • 中川 宣子

    京都教育大学附属特別支援学校 特別支援教育士・臨床発達心理士・特別支援ICT研究会

  • 髙橋 三郎

    福生市立福生第七小学校 ことばの教室 主任教諭 博士(教育学)公認心理師 臨床発達心理士

  • 丸山 裕也

    信州大学教育学部附属特別支援学校 教諭

  • 下條 綾乃

    在沖米軍基地内 公立アメリカンスクール 日本語日本文化教師

  • 渡邊 満昭

    静岡市立中島小学校教諭・公認心理師

  • 山本 優佳里

    寝屋川市立小学校

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop