2026.08.08
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わざわざ、 の価値

効率化やデジタル化が進み、「もっと簡単に」「もっと便利に」が当たり前になりました。学校現場でも、タブレットを活用した学習が日常の風景になっています。
そんな中、外国語の授業で見かけた「わざわざ」に考えさせられました。
今ならもっと簡単な方法もあるはずです。それでも先生は時間をかけて準備をし、子どもたちはその中で夢中になっていました。
授業の様子や最近流行っているシール交換を見ながら、少し遠回りに見えることの価値について考えてみました。

兵庫県西宮市立総合教育センター 指導主事 羽渕 弘毅

そこまで準備するの?

先日、外国語活動の授業を見ていて、少し考えさせられました。買い物をテーマにした学習です。

教室には商品が並んでいました。お菓子の箱や値札、実物に近い模型などが置かれ、小さなお店のようになっています。正直なところ、最初に教室を見たときは、ここまで準備しなくてもできるのではないかと思いました。

お菓子の箱を集めたり、値札を作ったり、商品を並べたりするのは、なかなかの手間です。今ならタブレットがあります。商品の画像を映し、画面上で買い物のやり取りをすることもできます。準備にかかる時間を考えると、そのほうが効率的かもしれません。

実際、自分が授業をするなら、そうしていた気がします。けれども、授業が始まると、その考えは少し変わりました。

子どもたちは英語を練習しているというより、お店屋さんになっていたのです。

・商品を手に取る。
・友達に見せる。
・どれにしようか迷う。
・買ったものをうれしそうに持ち帰る。

そんな姿が教室のあちこちで見られました。

もちろん、英語を使うことが活動の目的です。けれども、子どもたちを動かしていたのは、英語そのものではなかったように思います。

お店屋さんになること。買い物をすること。友達とやり取りをすること。

そうした活動の面白さが、結果として英語を使うことにつながっていたように見えました。

「もう一回やりたい」

印象的だったのは、活動が終わったあとでした。子どもたちから、「もう一回やりたい」という声が聞こえてきたのです。

外国語活動の授業で、こうした声を聞くことは珍しくありません。けれども、そのときの様子は少し違って見えました。

英語をもっと話したいというより、お店屋さんをもっと続けたい。そんな雰囲気だったのです。英語を使うこと「だけ」が目的であれば、こんな雰囲気は出なかったと思います。

商品を並べたり、選んだり、友達とやり取りしたりすること自体を楽しんでいるようでした。

シール交換の楽しさ

その授業を見ながら、最近子どもたちの間で流行っているシール交換のことを思い出しました。私の子どもも、家や近所でよくしているので、その姿を観察することがあります。

お気に入りのシールをファイルに並べて見せ合う。

「そのシールいいな」「どれと交換する?」「これちょうだい」

そんなやり取りをしながら、交換したシールをうれしそうに眺めています。話を聞いていると、シールそのものと同じくらい、その時間を楽しんでいるように見えます。

効率だけを考えれば、不思議な遊びかもしれません。画像を見せるだけなら、もっと簡単な方法があります。

それでも子どもたちは、わざわざ集まり、わざわざ見せ合い、わざわざ交換する。そこには、物を介して人と関わる楽しさがあるのかもしれません。

わざわざ、の中にあるもの

考えてみると、私たちの周りにも、そんな「わざわざ」がたくさんあります。

手紙を書く。作品を見せ合う。お土産を渡すために直接会いに行く。写真を見せながら話をする。

効率だけを考えれば、もっと簡単な方法があるのかもしれません。それでも私たちは、ときどき「わざわざ」をします。

最近の子どもたちは、デジタルに慣れている世代だと言われます。けれども、シール交換をしたり、カードを見せ合ったりしている姿を見ると、人と関わることの楽しさは今も変わらないのかもしれません。

買い物の授業で見た商品模型も、そんな関わりを生み出すためのものだったのでしょう。

それでも……

・わざわざ準備をする。
・わざわざ集まる。
・わざわざ話をする。

そうした少し遠回りな時間の中に、子どもたちが夢中になる理由があるのかもしれません。

あの授業を見ながら、そんなことを考えていました。

羽渕 弘毅(はぶち こうき)

兵庫県西宮市立総合教育センター 指導主事
専門は英語教育学、学習評価、ICT活用。高等学校や小学校での勤務経験を経て、現職。これまで文部科学省指定の英語教育強化地域拠点事業での公開授業や全国での実践・研究発表を行っている。働きながらの大学院生活(関西大学大学院外国語教育学研究科博士課程前期)を終え、「これからの教育の在り方」を探求中。自称、教育界きってのオリックスファン。

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