2026.09.07
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スマホやAIの時代に考える、変わらない子育ての基本

私、アグネス・チャンが学んだ教育学の知識や子育ての経験をもとに、学校や家庭教育の悩みを考える連載エッセイ。
今回は「スマホやAIの時代に考える、変わらない子育ての基本」をテーマに、今の子育てで変わったこと、そして、どんな時代でも変わらない大切なことについて考えます。

子育ての基本は、いつの時代も変わりません

時代が変わっても、子育ての基本は、そんなに変わらないのです。条件なしで愛情を注ぎ、自己肯定力を高め、子どもの底力を発揮できるように応援する。溺愛することなく、正しくないことをしたときには、なぜやってはいけないのかを根気よく説明します。心身ともに健康に成長できるようにする。

ただし、時代の流れとともに、子どもを取り巻く環境が変わり、子育ての問題も変わってきました。親や教育者はそれらを認識し、対応する必要があります。

今は少子化が進み、一人っ子のご家庭も増えました。子どもの数が少ない家庭では、大人に囲まれて成長し、周りから過度にかわいがられることもあります。そうした中で、家の中では威張り、外では友達に好かれたいために人にこびてしまうなど、人間関係がうまくいかない場合があります。精神的なプレッシャーを感じ、性格にまで影響するかもしれません。だからこそ、小さい時から積極的に、人を思いやる心を育むことがとても大切です。子どもに愛情を注ぐことは大切ですが、溺愛は禁物です。

もう一つ、スマートフォンや電子機器をベビーシッター代わりに使うことも増えました。インターネットを通して、学べるものも多いので、絶対に使ってはいけないとは言いません。でも、使いすぎると、子どもの目や集中力だけでなく、脳の成長や人との関わり方にも影響が出るといわれています。

オーストラリアやイギリスでは、16歳未満の子どものSNS利用を制限する動きがあり、中国でも18歳未満のオンラインゲームの利用時間は厳しく制限されています。政府が動かなければいけないくらい、深刻な問題になっているのです。携帯やタブレットを与えて、子どもがおとなしくなるから便利だと思ってはいけないのです。

そして、子どもが知識を得るところが変わりました。昔は、親や先生がいろんなことを教えてくれました。だから、そこにリスペクトがあったのです。でも今では、AIやインターネット検索で、答えが出てきます。親や先生を頼らず、子どもはAIから必要な情報を手に入れられるのです。でも、AIが間違っている時もあります。それを疑わずに子どもが信じてしまうことが、みんなが一番悩んでいることです。

どう育てれば、この子はAIの時代に自立して、自分で生計を立てられるようになるのか。私も孫を見ながら、どうすればいいのかつい考えてしまいます。親なら、もっと悩みます。今はみんなが探りながら、一歩ずつ進んでいるのだと思います。

家庭の味は、愛情を伝える

  

  

お嫁さんの子育てを見ていると、私のころとは変わっていると感じることもあります。うちの孫は、赤ちゃんのころ、ベビーチェアのテーブルに食材を置いて、手づかみで食べていました。自分で選んで、自分で味わう。食べ物で遊んだら、「遊んじゃダメ」と言うと、二、三回で覚えます。

話せるようになると、何が好きなのか、何を食べたくないのかをきちんと言えるので驚きました。そして、とても早く自分で食器を使って食べるようになったのです。自分で食べ物を選び、自分で食べ、お腹いっぱいになったらやめる。とても良い方法だと感心しました。大人が食べ物を口元まで運んで食べさせるより、断然良いと思いました。

ご飯を作らなくなった家庭も増えました。今は買った方が安いこともあるし、家まで届けてくれるサービスもあります。栄養バランスもよく考えられていますから、頼ってしまいます。でも、それによって家庭の味が失われてしまうのは、残念だと思うのです。

この前も、別々のところに住む息子たちが集まったので、彼らが大好きな料理を作ってあげました。「ママのご飯は、やっぱりめちゃくちゃおいしい」と言ってくれました。他の人が食べたら、おいしいかどうかは分かりません。でも、母親の味は、愛情です。その子にとっては、いくつになっても一番おいしいものなのです。それを食べたら、「ああ、お母さんだ」「家だ」と安心します。

全部を手作りしなくてもいいのです。何か一つ、「ママの味」「パパの味」を作ってほしいです。うちの孫は、「ナイナイ(私のこと)は世界一のシェフ」と言ってくれます。私が遊びに行くたびにご飯を作るからです。お嫁さんはパンやケーキを作るのが上手で、孫も「ママのチーズケーキが一番」「ママのバナナケーキ大好き」と言っています。

一品、二品でいいから、「それを食べたくて、みんな家に戻ってくる」というものを持っていてほしいです。栄養だけでなく、愛情が伝わる、心が温まる料理は大切です。

どんな形でも、つながっていればいい

社会が複雑になり、子どもの居場所を確認できるようにしたい親が増えています。子どもの居場所が分かる見守りグッズも、いろいろあります。アメリカでは万が一、子どもが連れ去られたときに備えて、靴の中敷きの下に位置情報タグを挟んでいる保護者もいます。安全のために使えるものは、積極的に活用していいと思います。

私は、幼い子どもがスマートフォンを持つことには慎重な立場です。でも、良い面もあります。中学生くらいになるとスマートフォンを持つ子が増えます。そうすると、普段あまりしゃべってくれない子でも、メッセージならやり取りできることがあります。スタンプや写真を送り合うだけでも、コミュニケーションはとれます。口で言えることは限られています。昔は手紙を書くしかありませんでしたが、今はアプリがあります。どんな形でも、コミュニケーションが取れるのはとてもいいことです。

時代が変わっても、一番大事なのはコミュニケーションです。親と子ども、先生と生徒のパイプが詰まっていなければ、いつの時代でも大丈夫です。

相手のことを思い込みで決めず、できるだけ理解する。自分がどう考えているのかも、伝える。どんなに時代が変わっても、コミュニケーションが一番の基本なのです。


アグネス・チャン

1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)

AGNES CHAN OFFICIAL SITE ~アグネス・チャン オフィシャルサイト

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