2026.06.19
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なぜ今、「自走する学習者」が求められるのか?~外部との接続がもたらすもの ~(第3回)

これまで、生徒の小さな違和感や関心を教室の外へ少しずつ開いていくために、日常の授業や学校生活の中でどのような土壌をつくるかを考えてきました。
今回は、実際に外部とつながることが、生徒の問いや進路にどのような変化をもたらすのか。自身の実践を振り返りながら、具体的に考えてみたいと思います。

ここで言う「外部」とは、大学、企業、NPO、地域、卒業生、専門家、大学生・大学院生、あるいは学校とは異なる学びの場などを指します。ただし、外部とつながること自体が目的なのではありません。大切なのは、外部との出会いによって生徒の問いが少し深まり、学校の中だけでは得にくい手応えが生まれることです。

花園中学高等学校 社会科教諭 伏木 陽介

「外部連携」のイメージを問い直す

自分の問いを外部の方々の声を通して見つめ直していく

「外部連携」という言葉を聞くと、大がかりな講演会や企業との協定、大学との組織的なプログラムを思い浮かべる先生も多いのではないでしょうか。もちろん、そうした機会が生徒に与える影響は大きいものです。

しかし私が日々の実践を通して感じているのは、外部接続の本質は規模の大きさにあるのではないということです。生徒の問いに対して、学校の外から、学校では得にくい、別の視点を差し込むことが大切だということです。

たとえば教育に関心をもつ生徒が、学校づくりに関わる方、オルタナティブスクールを運営する方、教育系NPOや企業で働く方、大学で教育を学ぶ学生と出会うとします。すると教育という言葉の輪郭も学校内で探究しているそれとは形が変わっていきます。

単に情報量が増えるのではなく、外部の方々からの声をもらうことで、「自分もこの問いを持ち続けてよいのだ」という感覚が生まれる。その感覚が、次の一歩を生み出していくのだと実感しています。今まで伴走した生徒たちも、揺れ動いている時に外部の大学の先生や団体の方に会いに行くこともありました。専門知識を獲得することだけが外部の方々とつながることではないことを実感してきました。

ある卒業生の歩みから見えたこと

 

外部接続が動かす学びの事例(筆者作成)

例えば私自身の伴走の実践を振り返ると、外部との接続が生徒の学び、あるいはキャリア意識を大きく動かした事例もいくつもあります。その中でも印象に残っているのが、教育に関心をもち続けたある卒業生の歩みです。

彼女は在学中、探究活動を通して教育や学びのあり方に関心を深めていきました。ただし、最初から「学校の先生になりたい」「将来はこの分野に進みたい」と明確に語っていたわけではありませんでした。出発点は、学校が大好きな一生徒なりの、学校生活の中で感じた小さな違和感でした。「自分が好きな学校をみんなにも好きになってもらいたい、なんでみんなは学校を好きにならないんだろう」という考えと、「そもそも、学びの場とはどうあるべきなんだろう」という素朴な問いでした。

教師として私がそのとき大切にしていたのは、すぐに生徒が出してきたテーマを整えたり、進路に結びつけようとしたりしないことです。たとえば、この場合、教員になることを指します。まだ言葉になりきっていない関心を、教員も先回りせず、丁寧に置いておける環境をつくること。それがまず必要なのだと感じていました。

そんな彼女の関心が少しずつ形を変えていきます。その背景には、複数の外部との接点がありました。グローカル(グローバル&ローカル)な視点から社会課題を考えるプログラムに参加したり、イエナプラン教育を取り入れた長野県の中学校の教頭との対話、東京でオルタナティブスクールを開校したカリキュラムディレクターの話を聞いたりしました。

また、教育関連の出版社や企業の方と出会い、教育が学校の中だけで完結するものではなく、多様な人々によって支えられている営みであることにも触れていきました。そのような中で、彼女の中で、はじめに出した問いは明らかに変化していきます。

「一度の出会いで答えを出させない」という意識

そのような彼女の伴走の最中にも意識していたことがあります。それは、一度の外部との出会いで答えを出させない、ということです。

外部の方と出会うたびに、「何が面白かったか」だけではなく、「自分の考えとどこが違ったか」「次に誰の話を聞いてみたいか」「自分が見てみたい学びの場はどこか」を言葉にしてもらい、記録に起こしました。こうした小さな振り返りを重ねることで、外部接続は単発のイベントではなく、生徒自身が問いと考察を更新していく過程になっていきます。

さらに、外部コンテストへの参加や、大学生・大学院生との交流、さらには、探究に関する教員研修の場に、ある種飛び込みで生徒として参加する経験も重なりました。大人が学び合っている場に高校生が入り、自分の考えを述べ、時には問いかけられる。その経験は、彼女にとって、通常の授業や進路面談だけでは得にくいものとなりました。

特に印象的だったのは、彼女が外部の大人に説明する中で、自分の言葉を少しずつ選び直していったことです。「教育に興味があります」という言い方が、やがて「どのような学びの場なら一人ひとりが安心して問いを持てるのか」「学校以外の場は、子どもの育ちをどう支えられるのか」という問いへと、焦点が少しずつ具体化していきました。

この変化は、教師があらかじめ用意した進路指導の線路の上では起きづらい変化です。むしろ、学校内の単線的な指導だけでは見えにくかった景色が、外部との出会いによって少しずつ開けていったのだと思っています。

彼女は、教育学部に進むかどうかという選択の前に、「自分はどのような学びの場に関わりたいのか」「どのような子どもたちの育ちを支えたいのか」を考えるようになりました。進路を決める前に、将来向き合っていきたい大きな「問い」の輪郭が見えてきた。そのような変化でした。

彼女は結果として、教育を社会学からのアプローチで開拓することを選択していきます。単線的な「教育といえば、教育学部」ではない、自分で選択したキャリア選択を探究を通して行ったことに彼女の探究を通しての学びがあったと言えます。

この事例の中から、参考にできる手がかりがあるとすれば、特別な連携先を最初からたくさん用意することではないこと。生徒とともに探していく姿勢が大切だということ。そして、生徒の関心を進路名や研究テーマに教員が急いで変換したり、変換を急かさないこと。

次に、その関心に対して、モヤモヤしている場合でも、学校の外にいる人や場を一つだけでも紹介してみること。そして、出会いの後に問いの変化を言葉にする時間を置くこと。外部接続の効果は、出会いそのものよりも、その前後で生徒が自分の問いを持ち直すところに現れるのだと感じています。

次回 「少し先を歩く他者」と、教師のアンテナについて

今回は、外部との出会いが生徒の問いをどのように動かすのかを、一人の卒業生の事例を通して考えてきました。

次回は、ゼミ活動に大学院生や研究者、大学生メンターといった「少し先を歩く他者」が入ることの意味と、そうした外部とのつながりをつくるうえで教師に求められるのは何かについて、引き続き考えていきたいと思います。

また、外部との出会いの前後をどう設計するか、また、こちら側が持つ「探究的な生徒の問い」と外部の方々の厚意をどのように教員がつなぎ合わせていくかという実践的な視点についても取り上げ、現在の所感を述べていきたいと思っています。

伏木 陽介(ふせぎ ようすけ)

花園中学高等学校 社会科教諭/中高一貫(ディスカバリー)コース統括・ICT担当、東西探究交流会代表


長年にわたり、探究学習のプログラム策定や実践に携わってきました。
学校や授業の改革には何が必要かを考え、現場でのチーム作りや実践を重ねております。
また、大学などの「学術知」を中高の教科指導とどう結びつけるかを追求し、共通テストの分析やICTとの接続等の教材開発に取り組んでおります。
こうした経験を活かし、未来の学びの創造に貢献したいと考えています。

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