オランダで見てきた教育が、日本でかたちになった日 ― 公立初のイエナプランスクールの挑戦
オランダで出会ったイエナプラン教育。
その考え方が、日本の公立小学校の中で形になろうとしていた。
帰国後、その現場に立つことになりました。子どもたちや先生、保護者や地域の方々とともにつくられていく学校の姿を、当時感じたこととあわせて綴ります。
合同会社Toyful Works 代表社員・元公立小学校教員 川崎 知子
イエナプランスクール誕生への道
2020年4月から、私は広島県福山市の常石小学校で働くことになりました。
常石小学校は、福山市の最南端、海沿いにある小さな小学校です。2022年には周辺の5つの小学校と2つの中学校が統合し、大きな義務教育学校ができることが決まっていました。同時に、常石小学校を閉校し、新しくイエナプランスクールとして開校することになっていました。
日本初の認定イエナプランスクールは、2019年に長野県南佐久郡佐久穂町に開校した学校法人茂来学園大日向小学校です。オランダのイエナプランスクールの認定要件を参考に、日本イエナプラン教育協会が日本版の認定要件を定めました。認定要件は全部で8つあります、異年齢学級の採用や保護者の学校運営への参加などが求められます。詳細は日本イエナプラン教育協会のホームページに掲載されています。
「一人一人が違う」が当たり前になる教室
常石小学校では、2020年からの2年間を移行期間とし、1・2・3年生の異年齢学級が始まりました。
異年齢学級の良さは、「一人一人が違う」ということを当たり前として学べることです。誰かと比べて、学習が得意か苦手かと感じる必要がありません。さらに、異なる学年の子がいることで、上の学年で学ぶことに興味をもったり、下の学年の内容を学び直したりすることも自然に起こります。さまざまな活動を異年齢で行なっているので、卒業式では1年生から5年生が本気で泣く姿も見られます。
移行期間には、教室が居心地のよい場となるように、壁をカラフルにし、ベンチを置くなどの改装も行われました。 新しい学校名を募り、「共に生きる」「共に学ぶ」という言葉が繰り返し話し合われる中で、「常石ともに学園」という名称に決まりました。
常石小学校では、もともとチャイムがなかったそうです。子どもたちは時計を見て行動していて、とても素敵だと感じました。
同学園では、2019年に児童会を中心に話し合い、通常は持ち物や服装など数十個ある学校生活の約束を、
「みんなが安心して過ごせる学校にするために、みんなが成長できる学校にするために、自分と相手を大切にした行動をしよう」
という一つにまとめました。
この一つにしたことで、子どもも大人も、疑問に思ったときや悩んだときにこの一つの「約束」をもとにとことん考え、話し合うことができるようになりました。
イエナプランの20の原則にあるように、ワールドオリエンテーションと呼ばれる探究学習や、ブロックアワーと呼ばれる自立学習が行われています。ベンチを置き、対話中心の授業も行われています。 その中でも私は、「約束を一つにしたこと」が、この学校の一番の特徴だと感じています。
学校をつくるのは、誰か
一つの約束のもと、子どもたちは生き生きと生活しています。
福山市内から希望して入学する子が多く、全国から移住してくる家族も増えました。一時期は60人だった児童数が、今では160人まで増えています。保護者の中にも、イエナプランをしっかり学びたいという方が多く、日本イエナプラン教育協会の会員になったり、研修に参加したりする姿も見られます。
また、常石ともに学園のホームページを見ると、保護者や地域の方々が積極的に関わっていることがよく分かります。子どもが卒業した後も、学校のために毎年夏祭りやクリスマスイベントを開催してくれています。
勤務していた頃、息子を連れて行ったことがあります。それ以来、息子が「毎年行きたい」と言うほど楽しみにしています。さらに、保護者の方はサポートリーダーとして、読み聞かせや「トイレの神様」と題したトイレ掃除など、保護者のアイデアによる活動も行われています。
学校は、先生だけでつくるものではありません。 子どもはもちろん、保護者と、地域とともにつくっていくものなのだと、改めて実感した時間でした。
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川崎 知子(かわさき ともこ)
合同会社Toyful Works 代表社員・元公立小学校教員
元公立小学校教員。東京・広島の小学校で約20年勤務。
2017年からは家族とともにオランダに渡り、イエナプラン教育を学ぶ。日蘭イエナプラン専門教員資格を取得し、現地のイエナプランスクールでアシスタントとして2年間勤務。20校以上の小中学校を視察した。
帰国後は、広島県福山市立のイエナプランスクール開校に携わり、現在は日本イエナプラン教育協会理事。
不登校支援や特別支援教育、保護者との関係づくり、対話・探究・遊びを通して、子どもも大人も、安心できる学びの場づくりに取り組んでいる。
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