大人たちの余裕が教室を変える――今年度のモンテッソーリ教室
アメリカ・モンタナ州のボーズマンという町で、モンテッソーリ保育士として働くかたわら、大学院でも学びを深めています。
今回は、昨年9月から始まった1年の終わりを今月末に迎えるいま、振り返りを綴ります。
ボーズマン・モンテッソーリ保育士 城所 麻紀子
試してみること
6月に入りました。
モンタナは先月も雪がどかっと降りましたが、やっと本格的な春らしくなってきました。
今月から、新たな試みとして、朝8時半から教室の外遊びで一日を始めることにしました。
ひそかに、うまくいくのか半信半疑でしたが、大成功でした。
振り返ると、以前のクラスでは、こういう試みがごく日常的なことでした。
チームで話し合いながら、「やってみようか」「どうだった?」を繰り返す。
わたし自身、試したり実験したりすることが好きで、それが普通の感覚でした。
ところが、昨年9月からは、そういうことがぱたりとなくなっていました。
余裕のなさからか、何事も完璧を目指すあまり、新しいことを試す空気がなかったのです。教室の中がどこか窮屈に感じていたのは、そのせいもあったかもしれません。
こうして「試してみよう」と思えるようになったのは、最近のことです。
変化の多かった一年
今年度は、先生たちの顔ぶれがよく変わった一年でした。アメリカの園でも、こんなに短い期間に何人もスタッフが入れ替わることは、普通はないでしょう。
急な入れ替わりのたびに教室の空気が揺れ、先生やスタッフ同士のぎくしゃくも続きました。
チームミーティングでは、子どもたちのことが議題にのぼった記憶がほとんどありません。教室の掃除、台所の整理、教具の管理——大人たちの業務改善ばかりが問題視されてきました。
余裕がないと、試してみよう、という気持ちにはなれないものです。当たり前のことですが、この一年でそれを痛感しました。
大人たちの問題
他のクラスの先生たちから、「大変そうだね」「大丈夫?」などと声をかけられることが何度もありました。
そのたびにわたしは、「子どもたちはすごく穏やかで平和なの。子どもたちには全く問題がないと思う。問題があるとすれば、私たち大人の側なのかもしれない」と答えてきました。
子どもたちが先生の入れ替わりにさほど動じなかったのは、彼らの順応性が高かったからでしょうか。それとも、混乱続きの一年の中で、先生との深いつながりがそもそも育ちにくかったからでしょうか。
おそらく後者の影響のほうが大きいように思っています。
子どもたちは常に穏やかでした。それは、大人たちが十分に子どもたちと向き合えていなかったことの表れでもあるような気がします。
新しい体制へ
先月、新しい主任の先生が就任しました。今は2人の主任と前任の主任(今月末で退職予定)、そしてわたしの4人体制です。
この一年、業務改善を一緒に頑張ってきた主任の先生が今月で園を去ります。前向きで積極的な彼女の存在に、どれほど助けられてきたかわかりません。その分、送り出す気持ちも複雑ですが、新しい体制がしっかり動き始めていることが、せめてもの支えです。
新しい主任と話していると、これからのクラスをどうしていくか、少しずつ形が見えてくるような気がします。
「試してみよう」という外遊びの案が生まれたのも、この体制になってからのことです。
余裕があるから、試せる。試せるから、場が育つ。そんなことを感じています。
卒園式を前に
今は25人の子どもたちが毎朝やってきます。
もうすぐ卒園する子どもたちの顔を思い浮かべながら、残り少ない日々を過ごしています。この賑やかさが、もうすぐ一区切りを迎えます。
来てくれる子どもたちのために
気になっている数字がひとつあります。夏セッションのエントリーが今のところ少ないことです。わたしの今までの経験では、こんなにがくっと参加者が減るのは初めてです。
この数字が何を語っているのか、簡単には言えませんが、今年の大人たちの混乱が、保護者の気持ちに影響しなかったとは言えないでしょう。実際に、不満を抱えて去っていった家族もいました。
ただ、ここに来る子どもたちがいます。その子どもたちのために場を整えることに、変わりはありません。
場を紡ぐということ
来月、この教室はまた新しい朝を迎えます。先生も、子どもも、顔ぶれが変わります。
でも教室という場は続いていきます。
環境を整えながら、子どもと大人が一緒に育っていける一年にしたいです。大人も試し、子どもも試す。その積み重ねの中で、よい場が紡がれていくような。

城所 麻紀子(きどころ まきこ)
ボーズマン・モンテッソーリ保育士、元サンディエゴ日本人向け補習校講師、モンタナ州立大学院家族消費者科学科 修士課程
2020年からアメリカのモンタナ州の人口5万人の町で、モンテッソーリ保育園の保育士をしています。
アメリカといっても、白人約90%、アジア人約2%(最近増えました!)という環境です。
あまり日本人の方に知られていない、アメリカの田舎での教育や生活の様子などを共有できたらいいなあと思っています。
同じテーマの執筆者
ご意見・ご要望、お待ちしています!
この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)
この記事に関連するおススメ記事
「教育エッセイ」の最新記事













アグネスの教育アドバイス
映画と教育
震災を忘れない














この記事をクリップ
クリップした記事
ご意見・ご要望






