2026.03.06
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社会科授業における生成AIとの付き合い方

生成AIの利用年齢制限の運用が見直され、姫路市でも本格的に導入されることになりました。
生成AIが学校現場に入ってくることで、授業はどのように変わるのでしょうか。
今回は、その点について述べたいと思います。

姫路市立白鷺小中学校 主幹教諭 竹内 哲宏

検索エンジンと生成AI

表1 筆者作成

現在もインターネットが教室で利用できるため、子どもたちが検索エンジンを自由に使うという状況があります。検索エンジンと生成AIの違いをまとめると、表1のようになります。

検索エンジンは自分で必要な情報を取りに行くものであるのに対し、生成AIは情報を整理して説明してくれるという違いがあります。また、生成AIには、分からない言葉を分かりやすく説明してくれるという特徴もあります。いわば、検索エンジンは必要としている本の場所を教えてくれる図書館司書であり、生成AIは本の内容を分かりやすく説明してくれる解説者であるといえます。

私たちは、子どもを自律的な学習者に育てる必要があります。そのために、さまざまな教育資源を活用して授業をデザインします。生成AIの活用も、その中の一つです。社会科においては、教科目標に到達し、資質・能力の育成を目指します。それでは、授業づくりに生成AIをどのように活用すればよいのでしょうか。

教師の活用

まずは、教師の活用です。生成AIに「これまで私があなたをどのように活用してきたかまとめてください」というプロンプトを入れ、出された回答を整理してみました。

① 思考を深める対話パートナーとしての活用

社会科の授業づくりにおいて重要なのは、子どもの思考が活性化する「問い」の設定です。
例えば、水道料金の値上げの可否を考える授業や、河合寸翁(すんのう)を取り上げた地域の先人学習を例に挙げます。これらの授業において、「子どもが主体的に多角的な視点から検討できる学習展開」や「異なる立場から意見を比較・検討できる設定」をAIに問いかけます。
自身の指導案をAIに読み込ませ、あえて反対意見を出させたり、子どもが陥りやすい誤解をシミュレートしたりすることで、授業の「揺さぶり」をより精緻に構築できます。このように自分の実践案をもとにAIと往還することで、視点を広げたり考えを整理したりしながら授業を磨くことができます。

② 授業準備の効率化と教師の専門性の維持

教材作成における活用も有効です。ワークシートの作成や、難解な歴史史料の現代語訳、図画資料の解説文作成などをAIに補助させることで、準備時間は大幅に短縮されます。
事務的な作業をAIに任せることで生まれた余力を、一人ひとりの子どもの実態把握や、深い教材研究に充てることが可能になります。もちろん、社会科における価値判断や、学習の方向付けといった「教育の核心」は教師が担うことが大切です。
AIとの対話を通して実践を省察し続けることは、授業観を見直し、社会科教師としての専門性を高める有効な手立ての一つです。

子どもの活用

次に、子どもによる活用です。生成AIを社会科の授業で子どもが活用する場面を想定します。

一つは、知識習得場面です。
予想を立て、資料を用いて調べているときに、分からない言葉や意味が理解できない場合に活用できます。
例えば、「なぜ神戸市は外国人にとって住みやすいまちになっているのだろう」という問いについて考えた場面です。「インターナショナルスクールが他市に比べて多い」という資料を見ていた子どもが、「インターナショナルって何?」と質問してきました。
その際、教師が説明するほか、AIに聞いてみることを勧めました。「小学生にも分かりやすく説明して」と指示すると、すぐに回答が得られます。こどもはその解説を読んで、調べる活動を進めていました。資料の読み取りにつまずいている子どもにとって、AIは優れたアシスタントといえるでしょう。

もう一つは、選択・判断場面です。
「神戸市にとって、外国とつながることにはどのような価値があるのだろう」という問いについて考えた場面です。
これまでの学習や神戸市の取り組みを表した複数の資料から、子どもたちは「学び」「交流」「環境」というキーワードで、神戸市が外国とつながる価値をまとめました。
そして、学習のまとめとして、外国とつながる最も重要な価値を一つ選び、その理由を記述する活動を取り入れました。自分の考えを文章で表現した後、AIにそれを読み込ませて助言を求めます。そうすることで、自分の考えをブラッシュアップできます。このように、AIは子ども一人一人のアドバイザーにもなり得ます。

生成AIとの付き合い方

AIが普及することによって、最も懸念されるのは「AIの答え=自分の考え」としてしまう思考の停止です。しかし、これはAIに限った話ではありません。かつて「塾で聞いたから」「テレビで言っていたから」という発言があった際、私たちはその「根拠」を問い直してきました。
AIに対しても同様の姿勢、すなわち「情報の真偽を確かめ、自分の文脈で解釈し直す力」を育む必要があります。

これからの教育においては、最終的な「成果物(レポートや回答)」だけで評価を行うことは難しくなっていくと感じています。大切なのは、子どもが成果物に至るまでにどのようなプロセスを経たのか、そこでどのような学びを得たのかを自覚し、自分の言葉で語れるようにすることです。
教室にAIが当たり前に存在する風景になったとしても、AIを子どもたちが自律的な学習者へと成長していくための伴走者の一つとして位置付け、教師はその学びの過程に丁寧に関わっていきたいものです。

竹内 哲宏(たけうち てつひろ)

姫路市立白鷺小中学校 主幹教諭


世界遺産姫路城の目の前にある姫路市初の義務教育学校に勤めています。
資質・能力を育成するための授業づくりを中心に発信できればと考えています。

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