妻と娘と愛犬の次に人生の中で大切な相手 それは愛する教え子たち
どの先生方も学級担任や教科担任を受け持つと、必ず教え子という存在がいます。
あなたはどれだけ教え子を大切に想っていますか?
沖縄県那覇市立さつき小学校 教諭 石川 雄介
前提として
私は教え子をとても大切にしています。というよりも、1年間共に過ごした子どもたちに情がうつらない訳がありません。なので、自然と大切にしています。
まず前提として、どの教え子も大切です。それは絶対です。そこに気持ちの差がついてはいけないとわかっています。しかし、教員だって人間です。相性や共に過ごした思い出などもあるため、どうしても多少の差は生まれてしまいます。もちろん仕事上で差はつけません。それを前提とした上でお話します。
今回、私がなぜこのようなお話を書こうと思ったのか。それは、これだけ素晴らしい私の子どもたちを文章として永遠に残したかったからです。そして、日々の業務の忙しさに飲まれて、子どもたちとの強い絆に気づけていない先生方もいるかもしれません。これを読まれている先生方にもご自身の子どもたちへの愛情を自覚していただけたらと思って、パソコンに向かっています。何かしらの刺激を得ていただけたら幸せです。
初めての教え子たちとの繋がり
今から13年前、私は教員の世界に入りました。大卒の私は何もわからず、とりあえず毎日を一生懸命に生きて、とにかく子どもたちを楽しませる授業やわかりやすくするための工夫、学級づくりを惜しまずに求め続けました。当時の私は学級づくりの目標として「Smile」というのを掲げていました。その目標に向かって、毎日笑顔で本当に笑いのある授業をつくり続けました。若いだけあって、時にはふざけたり、教育課程から少し外れたことを実践してしまうこともありました。(今ではもうできない…)
そんな13年前の教え子と今でも交流があります。今では24歳になる彼らとお酒を酌み交わしながら当時のことを思い出して語っています。
「先生が作ってくれた学級通信を今でも持っています」
「仕事を始めた今だからこそ先生の凄さがわかる」
「教室にSmileってありましたよね?」
など、聞いている私の方が恥ずかしくなるほど慕ってくれる言葉を浴びせてくれます。そして私も、当時の教え子たちが誕生日プレゼントでくれた青いペンや歯ブラシのコップなどを、今でも現役で使っています。アロマキャンドルは勿体無くて今でも使わずに持っています。
最近も、大学の卒論として「育児休暇の良さなどについて教えてほしい」とお願いをされました。ふとした時に、今でも彼らの頭の中に私の存在があることを心から嬉しく思っています。
宮古島での運命の出会い
宮古島での教え子たちは島の特性なのか、大人との距離がとても近く、とてもフランクに話す子どもたちでした。
10年前に宮古島に赴任した私は5年生、6年生と持ち上がりで担任をしていました。初めての持ち上がりでした。最初、持ち上がりにマイナスの気持ちを持っていました。「先生、その話聞いたことある」と言われたり、別の角度の教育の仕方を身につけていなかったため、同じ教育論を語って伝えることに恥ずかしさを感じたりしていました。
しかし、これが運命の出会いの序章でした。持ち上がりだからこそできる阿吽の呼吸がそこには存在し、2年分の愛情が目に見える形で蓄積されていきました。
今では彼らも20歳となり、成人を迎えます。私は今でも多数の子と連絡を取り合っています。私と一緒に娘の散歩に付き合ってくれたり、休日に遊びに行ったりもしています。私の結婚披露宴にも出席してもらいました。わざわざ東京から飛んで来てくれる子もいれば、二次会に30分だけ来て帰る子もいました。家庭の諸事情で披露宴への出席が叶わないことを家族内で大げんかする子もいました。
大学進学をして夢を追いかける子もいれば、職に就いた子もいます。さらに、芸能活動をしている子もいます。その全ての子どもたちを私はとても誇らしく思い、今でも絶大なる愛情を抱いています。
私は当時の教え子が大好きすぎて、小学校卒業式の前日、シャワーを浴びながら「今日出勤したら最後の授業をしないといけないのか」と気づき、涙しながら出勤しぶりをしたのを今でも覚えていますし、今でも思い出して泣きそうになります。
過去から今へと繋ぐ想い
当時小学3年生だった宮古島の教え子が、中学3年生になりました。これまで連絡を取っていなかった彼らから、つい最近連絡が届きました。しかも動画で。
「先生、中学校の卒業式に来てください」と。
高学年の時の担任だったのなら呼ばれるのはなんとなく想像できますが、小学3年生の頃の担任を中学校の卒業式に招待する彼らに驚きました。もちろん私も年数を数えて卒業式があることに気づき、卒業式に行こうかと悩んでいました。しかし、8才の時の担任を15才になった彼らの方から呼ぶなんて正直想定外でした。しかも、沖縄本島と宮古島で離れて住んでいるのに。
こういう子どもの姿から、私は子どもたちにとても愛されているなと感じると同時に、今でも私も彼らを愛しているんだなと改めて感じさせられました。
また、当時5年生の教え子が高校3年生になった今も、「今日、高校の持久走大会がありました」「先生、誕生日おめでとうございます」などの連絡が届きます。7年前にもらったコップを今でも教室で毎日使っています。
教え子との強い繋がりを作れた理由
なぜ、こんなにも教え子を大切にできて、教え子からも大切にされたのか。それは、心の底から全力で子どもたちのことを愛し、それを具現化してきたからだと思います。もちろん、どの先生も今読まれている先生も子どもへ愛情を注いでいます。しかし、大切なことはそれを具現化することだと思います。私は、特別な取り組みや掲示物作成などをとても多く取り入れてきました。
特別な取り組みとは、例えば、合唱の曲のプロモーションビデオをみんなで撮ったり、修学旅行の思い出をDVDにしたり、毎週金曜日の朝に子ども主体のレクをしたりなど、授業以外の取り組みにもとても力を入れて愛情を注ぎました。掲示物としては、「未来予想カレンダー」や「合唱の歌詞づくり」などに取り組みました。(これらについての説明は長くなるので別の機会に紹介できたらと思います)
このように、授業ではない場面に対しても授業と同じぐらいの力を注ぎ、それを形にしてきました。恋愛と同じように想うだけでは伝わらない。その考えがあったからこそ、子どもたちに私の深い愛情が届いたのではないでしょうか。
私が私らしくあるための譲れない信念
私が私らしくあるために絶対に譲れない信念があります。それは、「他の先生がやらなくても、子どものためであれば私はやる」ということです。周りの学級に合わせることは大切ですし、統一することもとても大切です。しかし、それに合わせすぎると自分のやりたい教育を見失ってしまい、「自分」を忘れてしまうと思います。それでは自分が届けたい愛情も子どもたちに届きません。「面倒だから」、「時間がないから」と言って諦めてしまう雰囲気に飲まれずに、可能な限り自分のやりたい形を子どもに届けることが大切だと思います。その気持ちを具現化したものが、上記のような他にはない私なりの取り組みです。
自分のやりたいことを形にすることはとても時間がかかりますし、多大なる労力が必要です。時には周りから批判を浴びることもあります。しかし、それでも子どもたちにはちゃんと届いて、ちゃんと応えてくれます。それは、私と教え子たちとの繋がりが10年以上かけて証明してくれています。
人それぞれの幸せがあると思いますが、私にとって教員人生の中でこれらの教え子たちと出会えたことが、何よりの幸せです。この長く続く繋がりこそ、私が教員になった時の夢でした。それが叶った今、私は何を求めて走っていけばいいのか。これから愛する教え子と悩み相談をしたいと思います。
何卒
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石川 雄介(いしかわ ゆうすけ)
沖縄県那覇市立さつき小学校 教諭
沖縄県の小学校教員として10年以上、子どもも担任も楽しむ学級づくりや授業づくりを研究しています。
私のモットーは「合いのある学級づくり」で、特に『思い合い、支え合い、学び合い』に重きを置いています。
また、授業や生活の中で他者尊重の心を育む仕掛けや子どもの興味を惹くアイディアを考えるのが大好きです。
効果的な掲示物の作成や子どもも担任も楽しめるアイディアなど、多種多様な教育場面について伝えていきたいと思います。
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