2024.07.08
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単元テスト、解き終わったら何させる? 〜単元テストを学級づくり、目指す児童像育成に生かす〜(1)

時々、「子どもが単元テストの答えを書き終えたら何をさせる?」という質問を聞くことがあります。
先生方の考えによって様々な取り組みをする時間になっていると思います。
今回は、
単元テスト解答記入後の取り組み方や単元テストの時間を学級経営に生かすというお話です。

沖縄県那覇市立さつき小学校 教諭 石川 雄介

単元テストは学級づくりに生かせる

「単元テストが終わったら何をさせるのか?」という話の前に、単元テストを始める前の話からしたいと思います。
授業が始まりテストを配布しますが、私が子どもたちに必ず伝えるお話があります。
「テストをもらって名前を書いたら、テストを見ないように黒板や掲示物を見ていてください」

これには私の学級づくりに向けての意図があります。
少し伝わりづらいかもしれませんが、最初にテストをもらった子と最後にテストをもらった子にはタイムラグがあります。つまり、最初の列の一番前の子と最後の列の一番後ろの子では、テストを受け取る時間には差があるということです。その時間差を失くし、テストと向き合う時間を平等にしたいので、先にテストをもらった子にはテストを見ないように黒板や掲示物を見て待たせています。その時間差は、たかが数秒、数分かもしれません。しかし、私の真のねらいは時間の話ではなく、「最後にもらう人の気持ちを大切にしたい」ということです。
最後にもらった子は、「早くもらいたい」「最初の人は早くもらえて良いな」という気持ちが少なからずあると思います。この「いいなぁ」と羨ましがる気持ちをみんなで理解し、救う必要があります。そのため上記の言葉掛けをし、最後にテストを受け取る子の気持ちを救っています。

この取り組みのポイントは、なぜこの活動をしているのかを子どもたちに伝えることです。
生活や学習場面で、子どもたちは「なぜこの活動をしているのか」「なぜ合わせないといけないのか」ということをあまり考えずに、ただ先生に言われたからやっているというときがあります。そうすると子どもたちは活動の意味を理解せず、とりあえず行動するだけになってしまいます。思考と行動のバランスが崩れ、ちぐはぐ状態となり、行動に意味を見出せません。
私たちが育てたいのは、「主体的に思考・判断し、それを表現する心・行動力」だと思います。なので、私が何か活動をする時にはどうしてこの活動をするのかという「活動に隠れた裏テーマ」を必ず伝えています。

今回の単元テストの場面だと、早めにテストを受け取った子には「座席の配置から受け取りが仕方なく遅くなってしまう子もいるので、その子の気持ちを大切にしよう」という私の意図を伝えています。さらに、相手の気持ちに寄り添う心を大切にしたいという裏テーマも伝えています。
私の目指す学級づくりの一つとして、「立場の弱い人の気持ちに寄り添える心」「まわりの人に対して心を向ける姿勢」など、「寄り添い合う」ことを掲げています。

解答が早く終わったら何をさせる?

単元テスト解答記入後の話についてです。
まず「テスト終わり」とは、終了のタイマーまたはチャイムが鳴った時だと考えています。テスト終了の合図があるまではテスト時間であり、自分が全て解答を埋めたから終わりではないということです。
これは、大学受験などの試験活動に向けた考え方です。大学受験などで問題を解き終わったから早めに提出する人はいないと思います。早めに解き終わったら見直しを行うと思います。私が目指しているのは、「解答を書き終えても、終わりたい気持ちを我慢して合図があるまで粘り強くテストと向き合う心」です。この心は、勉学以外にも精通すると考えています。

では、何をさせるのかです。
私は以下の活動を順番に行わせています。
「①自分の解答を隠しながらもう一度解く」
「②自分の解答をきれいな字に書き直す」
「③テストにある漢字全てにルビを打つ」

「①自分の解答を隠しながらもう一度解く」のポイントは、「隠しながら」というところです。自分の解答を見ながら活動をすると何も効果がないと思います。なぜなら、脳が騙され、思考が止まってしまうからです。当然ですが、最初に答えを書くときに「これが正解」と思いながら書きます。自分の脳では正解だと信じて書いています。その正解と信じている解答を見ながら再度解く活動をすると、「当たっている」と頭が思い込み、間違いを見つけるのが困難になります。なので、私は消しゴムや線引きなどで解答を隠しながらもう一度解かせています。
ここでさらに重要なポイントは、「見直す」ではなく、「もう一度解く」と表現しているところです。「見て直す活動」は上記のように思い込みが発生するため、間違えを見つけることが困難になります。「もう一度解く活動」は文字通り、もう一度解きます。自分の答えを隠しながら解くため、先入観もなく少し新鮮な気持ちで解くことができます。再度解いて二度同じ答えになると、その答えの正確性・信憑性がより高められると思います。また、一度解いた問題なので大した時間もかからず、テスト終了時刻には間に合うことが多いです。

「②自分の解答をきれいな字に書き直す」に取り組ませる目的は2つあります。
まず、「相手に読んでもらう字は特にきれいに書いて、相手を心地よい気持ちにさせよう」という心を教えたいからです。算数の単元テストなどで「0?6?何て書いているの?」という数字に出会ったことはないでしょうか。文字や情報を発信する人は、受け取る側が気持ちよく受け取られるように配慮しないといけないと思います。
もう一つが「自分の文字と対話するため」です。人は自分の文字に見慣れているため、自分の文字の乱れや崩れ、癖に気づきにくいと思います。自分の文字と見つめ合い、文字の訴えに耳を傾けることも大切だと思います。

「③テストにある漢字全てにルビを打つ」に取り組ませる目的も2つあります。
1つ目が、漢字力をつけるためです。何となく読んでいる漢字もルビを書くことで意識を持って読ませ、立ち止まらせることができます。ただし、担任はそのルビに対しての丸つけまではしません。子どもに漢字を正しく読む意識を持たせることを目的とした活動となっています。
2つ目の目的は、テスト終了時刻までテストと向き合う忍耐力を身につけさせるためです。解答の再確認などを終えると、誰しも楽をしたいと思います。しかし上記のように、「やることを終えた後、怠けたい気持ちに負けずに粘り強くそれに向き合う自分を自分でつくる」という意識を持たせることも大切だと思います。


「単元テストが終わったら何をさせますか?」
あなたの目指す学級づくり、児童像に合わせた答えを見つけてみてください。

何卒。

石川 雄介(いしかわ ゆうすけ)

沖縄県那覇市立さつき小学校 教諭


沖縄県の小学校教員として10年以上、子どもも担任も楽しむ学級づくりや授業づくりを研究しています。
私のモットーは「合いのある学級づくり」で、特に『思い合い、支え合い、学び合い』に重きを置いています。
また、授業や生活の中で他者尊重の心を育む仕掛けや子どもの興味を惹くアイディアを考えるのが大好きです。
効果的な掲示物の作成や子どもも担任も楽しめるアイディアなど、多種多様な教育場面について伝えていきたいと思います。

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