2023.06.03
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子どものモチベーションを保つために(その2)

私ごとですが、現在、算数少人数を担当しています。昨年度は担任をしていて、ほとんどの時間を全力で走っているような感じだったのに、今は気持ちにも時間にも、そして体力的にも余裕があります。忙しさに慣れてしまっている私にとっては、少し物足りないと思うこともありますが、本来はこれくらいの感じで働くべきではないかとも思います。

特定非営利活動法人TISEC 理事 荒畑 美貴子

子どものモチベーションを保つためのコツ

私の勤務地は東京都になりますので、学校を設置する自治体によって異なる面はあるものの、大規模校の方が人手が多く、担任の持ち時間数も少ないという傾向があるかもしれません。裏を返せば、小規模校では、いつもめいっぱい働かなくては学校が回らないという実態があるように思います。教師の皆さんの働き方は様々なのですから、無理をしすぎないでいただきたいと願っています。

さて、前回、子どもたちのモチベーションを保つために3つのヒントをお伝えしました。しかし、毎日の授業を見つめていると、コツと呼べるものが他にもあることに気づきましたので、続きを書いていこうと思います。


1 授業のゴールを明確にする

黒板の横などに授業のスケジュールを書き、今はどれをやっているかを示したり、あと何をすれば終わりかをはっきりさせたりするやり方があります。算数を例に取ると、「めあてを知る」「例題の解き方を考える」「発表する」「まとめを考える」「練習問題を解く」「振り返りを行う」などを示しておくというものです。これは、通級指導学級などでも使われる手法です。
しかし、教師が日常的にこの作業を組み入れることは、難しいかもしれません。算数のようにある程度決まった手順であればカードを作っておくことも可能ですが、教科によってはその都度考えたり、書き込んだりする必要があるからです。ですから、子どもたちには、もっと単純にゴールを示してみてはいかがでしょうか。

私がよくやる手は、学習内容を定着させようと思う終盤近くに、「では、今のやり方を使って教科書問題を2問解きます。その後、プリントの問題を5問解けたら、今日の算数は終わりになります」といった話をすることです。
そんなことは子どもでも予想できることだし、わざわざ話す必要はないと思われるかもしれません。しかし、45分間という授業を長いと感じる子どもたちもいます。私がそう話すと、何人かは、「やったー」と反応しますし、課題を早く終わらせようと猛烈に取り組み始める子どもたちもいます。
そんな様子を見ていると、授業のペースというのは平坦であればいいというのではなく、ときに速くしたり遅くしたりすることで気分転換を図ることも効率がいいのではないかと考えさせられます。

2 課題が終わったあとの時間の使い方

算数に限らず、漢字の練習であっても、絵を描いたり物を作ったりであっても、課題を終わらせるまでの時間には個人差があります。しかし、小学校の場合には、終わったからといって教室を離れ、好き勝手に行動することはできません。ですから、余った時間を有効に使うための知恵を使わせることも必要になってきます。
私は、事前に何をやりたいかを聞き、それが相応しいかどうかを判断して伝える時間を取ります。例えば、「読書をしたいです」と言われたら、国語の授業などではOKを出します。「友達にアドバイスしたい」「タブレットで追加の問題を解きたい」といった考えにも賛同します。
ただ、「友達とおしゃべりしていたい」とか、「ぼーっとしていたい」という考えに、皆さんはどのように反応されるでしょうか。私は短時間で授業の妨げにならないときには、OKを出すことがあります。子どもだって一日中時間に追われていたのでは、たまったものではないと思うからです。
先日、先輩の先生とお会いしたときに、この話をしました。「他の教師が、廊下を通りすがりに教室内を見たとき、遊ばせているのではないかと後ろ指をさされそうで葛藤があります」と伝えると、先輩は「そういう時間に、友達と仲良くなったりリラックスしたりするのでしょう。必要な時間だと思いますよ」と言ってくれました。救われたような気がしました。

3 授業の中で一度はほめる

授業中に全員を褒めることは、とても難しいものです。発言のあとに、「自分の考えを伝えることができて素晴らしいです」などと伝えることはできても、全員に対しては時間的に不可能だからです。でも、子どもたちは褒められたいと思っているのではないでしょうか。
私は授業のあと、ノートやワークシートを集めるときに、一人一人から直接受け取れるように並んでもらうことがあります。受け取るときに、「最後までがんばったね」とか、「文字を丁寧に書きましたね」といった短い言葉であれば伝えることができるからです。
全問正解のプリントを示したときには、「すごいね」などと、声を張って伝えることもあります。そうすると、高学年の子どもたちであっても、嬉しそうな笑顔を返してくれます。また、ガッツポーズをする姿に、自分も嬉しくなります。

4 プラスアルファを用意する

授業内容が予定より早く終わってしまったときを想定して、予備的な教材を用意しておくことも大切です。
低学年であれば折り紙をさせる、色画用紙を切っておいて簡単な工作をさせるなどでもいいでしょう。高学年ならば、クイズ形式の問題を準備しておくなど、少しの手間で子どもたちを楽しませる材料があります。
印刷用紙を小さめに切っておいて、「次の作品のデザインを考えてね」とか、「問題を作ってみましょう」と活用していくやり方も便利です。

子どもたちが一日を振り返って、楽しかったと思えるような学校生活となるよう、授業にも工夫を重ねていきたいものです。

荒畑 美貴子(あらはた みきこ)

特定非営利活動法人TISEC 理事
NPO法人を立ち上げ、若手教師の育成と、発達障害などを抱えている子どもたちの支援を行っています。http://www.tisec-yunagi.com

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