2023.05.21
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子どものモチベーションを保つために(その1)

ゴールデンウィークが終わりました。教師の皆さんも子どもたちも、新学期の緊張感や不安感による疲れを、多少は癒すことができたと思います。気分を一新して、夏休みに向けて充実した一学期にしていきたいものです。

特定非営利活動法人TISEC 理事 荒畑 美貴子

さて、新学期が始まったばかりのころのように、子どもたちが心身ともに疲れているときには、学習への集中力が下がりがちです。教師が普段以上に奮闘したところで、なかなか成果が上がりません。
そんなとき、子どもはつくづく正直だなと思います。教師に対して、決していい顔をしないからです。特に、学習に苦手意識のある子どもたちは、教師に気を遣って学習に向かっているような素振りを見せることはありません。

では、どんなときでも、子どもたちの学習へのモチベーションを高めるためには、どのようなことができるのでしょうか。

アクティビティを取り入れる

6年生の算数で、「ならべ方と組み合わせ方」の学習をしたときのことです。子どもたちとは出会ったばかりで、面白い話を取り入れても、ノリが悪いと感じることがありました。

そこで、ならべ方を実体験してもらうために、コイン投げをしました。組み合わせ方のときには、腕相撲大会を取り入れました。いずれも5分間程度の短いものでしたが、教室からは楽しそうな声が響き渡りました。

もしかしたら、そんな時間を取る余裕はないとか、活動しても知識は残らないと思う先生もいらっしゃるでしょう。しかし、ねらっているのは、そこではありません。新しい教師や友達との出会いでの緊張感を取り除き、人との関わりを豊かにすることによって、学習に対するモチベーションを上げることが大切なのです。

対話の時間を取り入れる

授業の中では、どうしても教師の説明が多くなり、発言する子どもも限られてしまいます。そうすると、数十分間をずっと黙っている子どももいるのです。黙っているのは授業規律を守っているわけですし、辛抱強い努力家と言えなくもありません。

しかし、黙って他人の話を聞くばかりでは受け身になりがちで、学習の成果は高いものとはならないのです。それに、人が話を集中して聞き続ける時間には限界があります。インプットだけではなく、アウトプットする時間があった方が、より主体的に学習に取り組むことができます。

そこで、まずは一人一人に課題に向かわせた後、考えを交換できる場を積極的に設けていきましょう。隣同志で考えを伝え合う、必要に応じてグループの中で考えを共有するなどのやり方は、ご存知の方も多いと思います。伝えることで自分の考えが明確になり、友達の考えを聞くことで考えの幅が広がったり深まったりするのは、言うまでもありません。

感染症の対策が緩和されてきたので、これまで取り入れにくかった活動を、ぜひ意識してやってみてください。

自分のことを話す

自分について話すことによって、心を開いていることや、大人も苦労していることがあることなどを伝えるきっかけになります。実は次のような話をしたところ、想像以上に成果があったのでご紹介します。

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私は教師をしているので、教えることは好きだし、得意な方だと思います。でも、書類を書くのは、とても苦手です。
先日、引越しをしたので、どうしても住所変更の手続きをする必要があり、書類を提出しました。1日目は、間違っているところを教えてもらって帰宅し、翌日修正したものを持って再度訪ね、ようやく受け取ってもらうことができました。これで終わったと思って喜んでいたら、3日目に電話が来て、役所を訪ねなければならなくなったのです。数か所のミスがあったからです。遠くの場所にある役所だったので、流石に心が折れそうになりました。しかし、泣いてみたところで解決はしないので、頑張って行ってきました。
そのとき、間違えても自分の席に戻って考え直す、みんなのことを思い出しました。投げ出さずに頑張る力は、こうやって子どものころから育つのだと思います。
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私はこれを、モチベーションを上げようと意図して話したわけではありませんでした。前述したように、大人も間違うことがあることを知らせ、親しみをもってほしいといった軽い気持ちがあったにすぎなかったのです。

ところが、普段はおしゃべりが多くて学習に身が入らないように見える子どもも、「今日は頑張ったよ」とノートを見せてくれました。とても嬉しくなりました。

子どものスイッチはどこにあるのか分からない

ご紹介した以外にも、子どもたちのモチベーションを上げる工夫はたくさんあると思います。どうぞ、目の前の子どもたちに応じて、様子を見ながら取り入れてみてください。おやっと思うところに、ヒントが隠れていると思います。

ただ、すぐに成果が上がらないこともあると思います。そうであっても諦めたり、焦ったりは禁物です。そっけない態度であったとしても、きっと子どもたちは熱心な教師の姿勢を感じ取るでしょう。それが信頼関係を築くきっかけになるかもしれませんし、いつか花を咲かせ実を結ぶことにつながるかもしれません。

荒畑 美貴子(あらはた みきこ)

特定非営利活動法人TISEC 理事
NPO法人を立ち上げ、若手教師の育成と、発達障害などを抱えている子どもたちの支援を行っています。http://www.tisec-yunagi.com

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