2023.05.25
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2つの小学生向け「全国」テスト

先日、文部科学省の全国学力・学習状況調査が行われました。2007年に全国学力・学習状況調査が再開されてから15年以上が経過し、もはや4月の風物詩にすら感じられるほど、教育界では馴染みのあるものです。
しかしながら、保護者に全国学力・学習状況調査について伝えると「テレビやネットのCMでたくさん放送されているテストですね」と言われることがあります。今回は、首都圏の小学校では多くの児童が受けている民間テスト「全国統一小学生テスト」について紹介します。今年度も昨年度に引き続き、首都圏での中学受験の様子を定期的に扱っていきたいと思います。

浦安市立美浜北小学校 教諭 齋藤 大樹

全国学力・学習状況調査について

改めて、私たち教員にとって馴染みのある全国学力・学習状況調査ですが、小学校6年生と中学校3年生を対象にして、主に国語と算数(数学)、英語で行われています。

令和4年度の国立教育政策研究所の全国学力・学習状況調査に関するデータを見ると、国立や私立の小学校も含めて、98.7%の学校で実施をしており、ほぼ全ての小学生が受験をしていることがわかります。受験者数は、一学年およそ100万人程度ということで、まさしく日本最大の受験者数を誇るテストでしょう。改めて、全国学力・学習状況調査の規模の大きさを感じます。

調査の目的として、子どもたち一人ひとりの学力の定着を見るという目的だけでなく、今後の学習指導の方針を決めるためのデータとして全国学力・学習状況調査の結果を用いた分析が行われています。私も教務主任を務めているので、全国学力・学習状況調査を学校全体の学習指導や生活面の実態の把握などに活用しています。

全国統一小学生テスト、受けるひと、この指とまれ!

さて、私達教員にとって全国的な学力調査というと前述した全国学力・学習状況調査を思い浮かべます。一方、SNSや検索サイトで「全国テスト 小学生」などと調べると、「全国統一小学生テスト」という株式会社ナガセと株式会社四谷大塚による民間のテストが提示されます。

インターネットやテレビでは数多くのCM映像が流れるようで、保護者の認知度も高いようです。私も以前6年生の担任を務めていた際に、年度当初に4月中旬に全国学力・学習状況調査があると伝えたところ、全国統一小学生テストと混同された経験があります。水泳などの習い事や学校にいる子どもたちが数多く受けているような映像のCMもあり、中学受験をする児童だけではなく、様々な児童を対象にしていることがわかります。

全国統一小学生テストの規模について

全国統一小学生テストの規模については毎年の増減はあるものの、受験者数は年間31万人程度だそうです。小学1年生から6年生を対象にしたテストとなっています。年に2回実施されており、全国約2600もの会場で6月と11月の年に2回も行われているそうです。年長の幼児もテストを受けることが可能で、全国統一中学生テストや全国統一高校生テストもあり、本当に幅広い年代が受けるテストだと感じます。

ざっくりと各学年の全児童数を100万人と仮定すると、最も受験者数が多い中学年ではおよそ3%程度の児童がこのテストを受けていることになります。全国学力・学習状況調査と比較すると規模の違いはあるものの、民間企業が行うテストにしては最大規模になっています。

学校での授業やテストに物足りなさを感じる児童の存在

様々な児童を対象にしていることが広告から伺えるものの、主催は「4大塾」といわれる学習塾の一つである株式会社四谷大塚ですので、中学受験に向けた内容や応用力を試す問題が多く出題されます。

首都圏における中学受験の人気の上昇については以前も記事にしました。学校によっては、2割から3割程度の児童が国立や私立の中学校へと進学する例も少なくありません。4大塾のカリキュラムは小学校3年生の2月ごろから本格的にスタートし、学校の進度に比べて先取りが基本となります。

先取り学習を進めた児童の中には、「学校の授業が簡単でつまらない」と感じる場合もあり、教材業者によるワークテストも簡単に100点が取れるので「つまらない」と考える子もいます。他の児童が40分近くかかるテストを数分で解いてしまう場面も多くみられます。

多くの児童は、きちんと待つことができるでしょう。しかしながら、私は暇を持て余してしまうがあまり、テスト中にふざけてしまう子も数多く見てきました。私たちのような首都圏の教員にとっては、こうした児童らをどのようにフォローしたり、言葉かけをしたりするかが学級経営に関わることも多いのです。

歯ごたえのあるテストの存在

全学年の全国統一小学生テストの問題例が、株式会社四谷大塚のホームページで見ることができます。中学受験指導の塾が作成したテストというと暗記重視の問題が多いのではないかという先入観をお持ちの方もいるでしょうが、意外にも思考力を試す問題が数多く出題されていることに気付きます。もちろん計算力などを求められるような問題も多いのですが、決して丸暗記だけでは解くことができません。

先のホームページによると平均点が55%として設定されているそうですが、難問や奇問ではなくオーソドックスな形式の問題が多いように感じます。それでも学校の授業を受けているだけでは得点を取ることが難しいと思います。特に算数では、特殊算などが頻出されたり、条件整理が複雑だったりするので訓練が必要だからです。

それ故、家庭などで参考書や問題集などに積極的にチャレンジするような子どもにとっては絶好の力試しの場になります。各学校で「かしこい」と言われている子どもたちも学校のテストと異なり、なかなか点数を取ることができません。主催者は普段中学受験対応の塾に入っていない児童に対して、こうした応用的なテストを受ける場を設定する機会を設定し、学習塾に興味を持ってもらうきっかけにしているのでしょう。成績上位者は東京で開かれる決勝大会に招待されます。さらに4年生の成績上位者はアメリカIvy leagueを視察できるのも意欲の向上につながっているようです。

終わりに

今回は、全国統一小学生テストについて紹介する記事にしました。このテストは前述した通り、中学受験の入口としての役割も持っています。思考力を問う問題に関しては、授業中の発問などに応用できる場合もあるかもしれません。

みなさんも全国統一小学生テストの問題を一度ご覧になってみてはいかがでしょうか。今回もお読みいただきありがとうございました。

齋藤 大樹(さいとう ひろき)

浦安市立美浜北小学校 教諭


一人一台PC時代に対応するべくプログラミング教育を進めており、市内向けのプログラミング教育推進委員を務めていました。
現在は小規模校において単学級の担任をしており、小規模校だからこそできる実践を積み重ねています。

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