2022.12.28
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学校の常識が見直される時代、自分をアップデートする難しさ

「学校珍百景」という造語があります。これは、学校では常識と思われている日常の風景を、第三者的に珍妙で面白い風景として捉えるという意味です。学校には、様々な独特のルールがありますが、改めてこうした学校の日常について考えていきたいと思います。

浦安市立美浜北小学校 教諭 齋藤 大樹

学校のルールといえば

学校には、独自の校則が残っていると言われています。スカートの丈や髪型、髪の長さなどが例として挙げられるでしょう。「風紀維持のため」というのが理由の一つでしょうが、ニュースなどではいわゆるブラック校則として否定的に扱われることも少なくありません。

小学校現場ではこうしたブラック校則の典型的な事例が話題になることは少ないですが、「シャープペンシル」の使用を許可するか否かが問題になる場合があります。

「なんだか認めたくない」という感情はどこから

先日、同僚とこのシャープペンシルの是非について議論になりました。その際に「何だか分からないけれども許可したくない」という妙な感情が生まれました。この感情が生まれた理由が何だったのか、それは私自身のこれまでの慣習が原因でしょう。

私は人生の大半を「学校」という社会の中で生きています。大学も教育学部でしたから、周囲も教員志望者ばかりで、「学校の香り」がするような環境でした。こうした人生の中で、自然と「シャープペンシルは小学校では禁止すべきもの」という固定観念が生じていきました。

これまでの教え子たちには、様々な理由を説明してきました。「芯をなくすから」「分解して遊んでしまうから」「高価だから」などです。今振り返ると、これらの理由は、あくまで禁止させることを前提にして、無理に取り繕ったような気もしてきます。

ところで、学習塾でのシャープペンシルの扱いはどうなのでしょうか。以前紹介した某有名塾では、入塾時に校則のような「入塾のしおり」というものをもらうそうなのですが、シャープペンシルは許可されているそうです。そのため、多くの子どもたちがシャープペンシルを使っています。それでも特にトラブルなどは起きていないので、こうしたルールになっているのでしょう。なお、模擬試験の時などには鉛筆を推奨される場合も多いそうです。

学校を俯瞰的に見るという視点

さて、冒頭で紹介した「学校珍百景」という言葉は、本市で長く小学校教員として活躍した「塩崎義明」先生の造語です。教員を退官後は、千葉大学や都留文科大学などで講師としてご活躍しています。数多くの教育書を出版されているので、ご存知の方も多いと思います。

『学校珍百景』という著書の中で、学校内で当たり前になっている風景も、一般社会の観点から見ると珍百景として捉えられると紹介されています。

例えば、「図画工作の作品で海賊や戦闘機を描くのはなぜ悪いのか」や「日直は本当に必要なのか」など、長く教員を務めていると当たり前の慣習に対して、あえて一石を投じています(著書である『学校珍百景』及び『学校珍百景2』を参考図書に記載します)。

私は、塩崎先生がちょうど退官される年に学年団を組んでいたのですが、常に子どもファーストで物事を捉え、子どもの人権を尊重する姿に感銘を受けたことを覚えています。これまで当たり前だと思っていたことを押し付けず、子どもたちと共に話し合っていくことを大切にされていました。

生徒指導提要の改訂~校則の公開~

先月、12年ぶりに生徒指導提要が改訂されました。その中では、校則をホームページに公開することが示されています。学校の校則を「見える化」し、その是非について子どもたちと共に検討していくことが求められているのが、これからの生徒指導なのだと感じます。

昨今では、学校のホームページどころか、校則を比較検討しやすいように県ごとに校則がまとめられているホームページも登場しています。児童生徒がアップロードした校則が集約されています。児童生徒たちはこうしたホームページを参考にしながら、学校選びをしていくのでしょう。

悩みながらも前へ進み続ける

話をシャープペンシルに戻します。今回の記事で、結末をまとめるとしたならば、「児童生徒と共に校則について考えてみましょう」になるのでしょう。一方で、シャープペンシルの話に戻ると、今ひとつ言いたくない自分自身の感情があります。学級が荒れる原因になるのではないか、トラブルが起きないかという根拠のない不安が訪れます。

新しい時代の流れに合わせて不合理なルールは見直さなければならないことは承知していても、これまでの自分の価値観を見直し、乗り越えることは容易ではありません。これは教員としての年数が経過すればするほど、難しい行為になるのだなと感じます。

これまでの価値観に苦しみながらも、子どもたちの成長を第一に考える。そして、どちらが良いのか悪いのかを先入観抜きで、冷静に考えることができる教員になりたいものです。

齋藤 大樹(さいとう ひろき)

浦安市立美浜北小学校 教諭


一人一台PC時代に対応するべくプログラミング教育を進めており、市内向けのプログラミング教育推進委員を務めていました。
現在は小規模校において単学級の担任をしており、小規模校だからこそできる実践を積み重ねています。

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