2022.12.19
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先生にとっての 『何だかとても大切なもの』子どもとの教育相談の技術  イライラしている君へ※明日の○○さんに語りかけるということ(後編)

先生が、イライラ(小学生ならプンプンという感じ)している子どもに応じているとき、顔は笑顔でも心は真剣そのもの。とても詳細にその子の表情を読み、心を分析し雰囲気を感じつつ、展開の流れを見極めようとしている時だと思います。なぜなら、答えは論文や本やネットの情報にはないのです。本当の答えは今そこ、目の前の現実の中に必ずあります。

静岡市立中島小学校教諭・公認心理師 渡邊 満昭

あしたの○○さんの効果

今は目の前でイライラしているその子に、なんとしても伝えてしっかり受けとめてもらいたい大事なことがある。そんな教室の一場面ありませんか。だけど、今言ってもちょっと受け止めてもらえそうもない。ではどうしたらよいのでしょう。もちろん何もしないでまず見守るのも一手ですが。

そのときも、目の前のその子はプンプンして近寄りがたい感じでした。話しかけてもとりつく島もありません。トラブルの原因はその子自身にあることは明らかなのですが、自分なりに理由もあり納得がいかないようでした。でも私はその子に、そんな些細なことで立ち止まってもらいたくないと考えています。せっかくその子が今まで積み上げてきたものは何だったのかと思っています。

そこでふと思いついたのは、明日(あした)の○○さんに語りかけるという方法でした。

「ねえ、あしたの○○さん」

あいかわらず、ぷんぷんして「うるさい」などと言ってはいますが、いつもと違う問いかけに「おやっ」と思ったようでした。かまわず続けて語りかけます。
「きみのいいところは気持ちの切り替えがうまいこと。きっと明日になればけろっとしてくれる。だから今日の○○さんではなく、あしたの○○さんに話しているんだよ」

するとまたまた「あれっ」という態度が見えてきたので、私の伝えたいことを丁寧に伝えてみました。ただその日は気持ちの回復までには至らなかったようでしたが。
明くる日その子は、また元気に登校してきました。あえて聞きませんでしたが、少しは自分のあり方や周囲からの願いについて受け止められたのではと思っています。

ちょっとしたやりとりの中から効果のあるもの見つかる

 私にとってこの方法は他の子にも実は有効でした。前提としては、その子との関係性や信頼感がある程度は積み重なっていることが必要なのかもしれませんが。

明日の○○さんに語りかけるというのは、目の前にいるその子を通してその子の中にある別の心(良心)に語りかけるというかんじでしょうか。詳しいシステムはちょっと分からないけど、次の日になると意外にその子たちは立ち直っていて、昨日のことは置いてきたかのように、すっきりと次の行動に入ってくれる気がします。

未来志向アプローチというものかもしれませんが、そんなにはっきりしたものじゃありません。でも、こういうちょっとした子どもとのやり取りの中で少しずつ効果が見えてくるものって、実はたくさんあるんじゃないかと思います。皆さんにもこうした体験がいろいろあるのでは。

これから先生を続けていくためにも、ぜひ教えていただきたいなあと思います。

渡邊 満昭(わたなべ みつあき)

静岡市立中島小学校教諭・公認心理師・学校心理士・環境教育インタープリター・森林セラピスト


いつの間にか、小中学校全学年+特別支援学級+特別支援学校+通級指導教室での担任を経験し、生徒指導主任+特別支援教育コーディネーター+教育相談担当経験も10年を超えていました。すると担任を離れたとたんに何かを忘れてしまって、担任に戻ってみると忘れていたことに気がつくということがたびたびありました。それはうまく言えないけど何だかとても大切なもの。先生を続けていくための糧のようなもの。
その大切なものについて、自分の実践と合わせお伝えしていこうと思います。

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