「リスキニング」でアップデート
気が付けば師走になり、今年もあとわずかとなりました。今年は「民間企業で導入されている技術を教室で応用してみる」ことをテーマの一つとして執筆してきました。学習塾の指導技術やポモドーロタイマーなどで話題の学習スキルを、教育現場に応用できないか試行してきました。
このようにそれぞれの職場で「新しいスキル(技術)」を取り入れ続けることの重要性が、ダボス会議で提唱されています。こうしたスキルを新しく取り入れ続ける「リスキル(Re skills)」または「リスキニング」について、考えていきたいと思います。
浦安市立美浜北小学校 教諭 齋藤 大樹
人格の完成を目指して学び続ける
教育基本法第1条では、教育の目的を「人格の完成」と示しています。教員を志したときに、真っ先に出会うのがこの言葉だと思います。私は、この言葉に出会った際に「人間が人格を完成させられるのだろうか。」と感じました。人格の「形成」ならば到達できるでしょう。しかしながら、「完成」を目指すとなると、もはや人間を超越した存在すら感じさせます。
教育基本法は、教育法規の一丁目一番地です。様々な機関や研究者たちが解説をしています。私のような一教師が語るような言葉ではないことは重々承知の上で、私見を述べると「学び続ける人になろう」ということを言いたいのではないかと思っています。まさに「リスキニング」し続けることこそ、人格の完成を目指し続けることに他ならないのではないでしょうか。
リスキニングとは
「学び続ける」という点に着目すると、これまでも生涯学習やリカレント教育などの言葉が多数ありました。教育界でも、退職後に再就職をしたり、大学院修学休業制度を活用して専修免許状を取得したりするなどの学び直しは行われてきました。こうした言葉とリスキニングは、何が異なるのでしょうか。
経済産業省のHPを参照すると「リスキニング」とは「職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得すること」を指すそうです。参考ホームページにリンクを載せておきます。生涯教育やリカレント教育は、学習内容が定められていない一方で、リスキニングは、仕事をしながら今後の仕事で必要になるスキルを学ぶということだそうです。
仕事のために学ぶということは、初任者研修のようなOJT(オン・ザ・ジョブトレーニング)と似ていますが、「今後必要となるスキル」という点がポイントです。リスキニングしていくためには、今後必要になるだろうスキルを想像していくことが重要になります。
未来を想像して、必要なスキルを習得する
新型コロナウイルスが流行し始めた2020年、オンラインでの学びが広がっていきました。私は、オンライン上ではこれまで対面型で行ってきた授業とは異なる形にしなければならないと考えていました。画面上では、子どもたちの集中力を保持させにくかったり、評価がしにくかったりすると感じたからです。
放送大学の存在をご存じの方は多いと思います。当時、自分のスキル不足を感じた私は、eラーニングのスキルを学ぶため、放送大学の大学院に通いました。通うといってもオンライン上で完結するので、仕事をしながら大学院で新しい時代のスキルを学ぶという、まさにリスキニングができます。
私は、「eラーニングの理論と実践」という科目を履修しました。実際にeラーニングを受講する中で、オンラインのメリットとデメリットを体験でき、適宜ミニテストを実施するなど、学習者の活動を評価する工夫を学ぶことができました。学んだことを学級閉鎖などオンライン学習で活用することができ、改めてリスキニングの大切さを感じたことを覚えています。
私の住んでいる千葉県には、放送大学の本部が置かれています。図書館や食堂なども利用できるため、オンラインだけではない学びもできます。なお、全国にも学習センターがあるそうです。最長10年間在籍できるような全科履修生という制度もあれば、1年や半年単位での在籍もできます。
未来の学校を想像してみると
先日、若年層の先生方と18年後の学校の姿を想像する機会に恵まれました。近未来の学校を想像していくと、ホログラムが実現しているのではないかとか、ドローンが各学校に配備されるようなっているのではなど、様々なアイデアが浮かんできました。近未来を予測すると、自分には何が必要で、リスキニングすべきかが分かってくるような気がします。
今年の7月に教員免許更新制に変更があったので、今後はそれぞれの課題に応じて、私たちは「新たな教師の姿」を追求することになります。環境の変化が加速する中、未来の社会を想像し、それに適合していくことが大切なのではないでしょうか
関連リンク

齋藤 大樹(さいとう ひろき)
浦安市立美浜北小学校 教諭
一人一台PC時代に対応するべくプログラミング教育を進めており、市内向けのプログラミング教育推進委員を務めていました。
現在は小規模校において単学級の担任をしており、小規模校だからこそできる実践を積み重ねています。
同じテーマの執筆者
-
京都教育大学付属桃山小学校
-
福岡工業大学附属城東高等学校 教務主任
-
北海道札幌養護学校 教諭
-
元徳島県立新野高等学校 教諭
-
栃木県河内郡上三川町立明治小学校 教諭
-
京都教育大学附属特別支援学校 特別支援教育士・臨床発達心理士・特別支援ICT研究会
-
大阪市立堀江小学校 主幹教諭
(大阪教育大学大学院 教育学研究科 保健体育 修士課程 2年) -
大阪市立放出小学校 教諭
-
長野県公立小学校非常勤講師
-
東京都東大和市立第八小学校
-
静岡市立中島小学校教諭・公認心理師
-
北海道旭川市立新富小学校 教諭
-
尼崎市立小園小学校 教諭
ご意見・ご要望、お待ちしています!
この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)
この記事に関連するおススメ記事

「教育エッセイ」の最新記事
