「個別最適な学び」を考える
「個別最適な学び」は「指導の個別化」「学習の個性化」に分けられます。今回は、「個別最適な学び」を算数科の指導を通して、具体的に考えます。
東京都品川区立学校 平野 正隆
「指導の個別化」とは
子どもの習熟度に応じた効果的な指導をすることです。個別の支援、指導方法や教材の工夫、学習時間の設定の仕方を変えるなどが考えられます。
算数科における「指導の個別化」一提案
習熟度に大きな開きが出やすい算数科の学習においては、習熟度別クラス編成による授業展開が有効だと考えます。しかし、それだけでは意味がありません。「指導の個別化」は、授業者の視点で、単元及び各時間の計画を立てる必要があります。
例えば、4年「面積」では、単元の終わりにL字型の図形の求積を扱います。ここで高めたい力は、
◆図形の特徴(構成)をとらえ、既習の長方形・正方形を生かす力
◆自らの考えを他者が理解できるように、図や式に表現する力
◆図や式を用いて、考えを分かりやすく伝え合う力
です。「指導の個別化」を図るために、まず考えられるのは、習熟度に応じた問題を設定することです。
様々な解決方法(分解、等積、倍積など)が導き出せる学習内容ですが、習熟度が違う子に、それら全てを求めません。算数を苦手とする子には、いくつかの考え方に焦点を絞れるような図形を与えます。得意とする子には、様々な解決方法が導き出せるような図形を与えます。(※問題例を参照)

取り扱う問題例
次に考えられるのは、指導法の工夫です。算数を得意とするような子には、友達が書いた図や式から、どう考えたのかを読み、それを説明する方法が考えられます。一方、苦手とする子には、つまずいている部分を全体に共有しながら、共に解決法を考えさせるなどの支援が考えられます。
適用問題もこうした配慮に応じて工夫する必要があります。
最後に個別の支援の仕方ですが、私の場合、子どもに委ねます。教師はグループでの協働的な学びを生むように、子どもたち同士をつなぐ役割に徹します。
「学習の個性化」とは
教師が子ども一人一人に応じた学習活動や学習課題に取り組む機会を提供することです。興味・関心・キャリア形成の方向性等に合わせた学びの場を提供する必要があります。
算数科における「学習の個性化」一提案
大きな課題を提示し、その中で学習課題や学習方法、そのまとめ方を子どもが自分自身で決めて取り組むことが必要です。
「学習の個性化」は、自ら学び方を選び、学びをデザインことが求められているため、学習者の視点に立って考えることが大切です。
例えば、6年「資料の調べ方」では、ドットプロットや度数分布表、柱状グラフを学習します。単元の終末で、それらをどう生かすかを子どもたちが自ら考える時間をとります。「握力の結果をクラスごとにまとめて、どのクラスが握力があるのかを分析したい」「一日あたりの家庭での学習時間をクラスのみんなに聞いて、学習状況を把握してみたい」などの意見が出ました。

自ら課題を決め、表やグラフに表したうえで考察し、それを根拠が伝わるように発表していきます。そのため、ドットプロットや度数分布表、柱状グラフには、どんなデータを表すと良いのか、分析にどう生かせるのかを深く理解させることができました。タブレットでアンケート機能を使うことで、情報も素早く集まり、集計作業もすぐにできます。
算数科においては、自らの解法をノートやワークシートにどう表現するかなど、普段からやっているような活動も「学習の個性化」に含まれるのではないでしょうか。
最後に
「個別最適な学び」は、「協働的な学び」とともに充実させ、主体的・対話的で深い学びを実現させていく必要があります。「教師による個別指導」≠「個別最適な学び」であり、「教師による個別指導」は、一手法にしかすぎません。そして、それは子ども同士が協働的に学ぶ場を失う可能性があることも念頭に置くべきだと考えます。個別指導は、協働的な学びを補助するために行うということです。次回以降、私がすすめている「学び合い」について、紹介していきたいと思います。

平野 正隆(ひらの まさたか)
東京都品川区立学校
研究会での実践報告や校内での若手教員育成などの経験を通して、自分の経験や実践が広く皆様のお役に立てるのではないかと考えております。大人・子どもに関わらず、「明日から頑張れそうです」「明日が来るのが楽しみです」と言ってもらえるのが私の喜びです。
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