2024.07.29
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「個別?協働的?何をさせたらいいの?」 これらの謎を解明する「ベストセレクション」(1)

「個別最適」「協働的」と聞いて、どのような授業展開を想像しますか? 教育界では有名なキーワードを私なりの捉え方と実践をお伝えします。我慢できないので結果を先に言うと、子どもたちが生き生きと学び合う姿があり、楽しく学習する学級づくりができます! 私自身も驚きました。

沖縄県那覇市立さつき小学校 教諭 石川 雄介

なんだそりゃ?

現在、教育現場でよく耳にする「個別最適」「協働的」というキーワードがあります。これらを校内研究として取り組んでいる学校も多いのではないでしょうか。

最初このキーワードを聞いたとき、語句の意味は分かったけど何をしたら良いのか戸惑いませんでしたか? 研修などを受講しても、大まかな内容や取り組み方しか提示されず、結局具体的に何をしたら「個別最適」なのか、何をしたら「協働的」なのかを私は理解ができませんでした。そのため、「一人で学習させたら個別最適」「グループ活動をしたら協働的」「とにかくICTを活用したら良い」と間違った捉え方をしていました。

そこから私なりの解釈で個人研究を進め、「これをしたら個別最適、これをしたら協働的」という授業感覚を徐々に身につけ始めてきました。まだ研究途中ではありますが、私なりの解釈と具体的な取り組みをお伝えしようと思います。

「個別最適な学び」を目指すためにすべきことは?

「個別最適な学び」とは、一人ひとりが自分に合った学習形態で学んでいく学びの方法だと周知されています。しかし、「一人ひとりが自分に合った学習形態で学んでいく」と言われても、授業者として何をしたら良いのか戸惑うと思います。そのため、授業者は子どもたちに「とりあえず自分が好きな方法で問題を解いてみて」と投げ出す形になってしまい、子どもたちもどうしたらいいのかわからず、とりあえずいつものように一人で問題を解き、先生の板書を待つという展開になってしまうのではないでしょうか。

ズバリ、「個別最適な学び」を目指すために最初にすべきことは、授業者が学びの方法・思考パターンを児童に提示することです。
子どもたちは学びの選択肢をたくさん持ち合わせていません。そのため、授業者が学び方を指導・提示し、様々な学び方を経験させなければ子どもたちが学び方を選択することはできません。選択肢を提示することで子どもたちの思考も整理され、「自分はここにいるから、次はこんな選択をしたらいいのか」と思考・判断・表現させることができます。

ここでのポイントは提示するだけでなく、実際に全て経験させることです。例えば「一人学習」と「ペア学習」「グループ学習」をそれぞれ経験させ、どの学習方法が自分に合っているのか認識させる必要があります。それぞれの学習方法の良さを経験させ、臨機応変に選択できるようにしたいです。

文部科学省は上記のように、子どもたちが目標達成に向けて子どもに応じて異なる方法などで学習を進めることや、自分自身で自らの特徴やどのように学習をすすめることが効果的であるかを学んでいくことを「指導の個別化」と提示しています。我々教師は、この「指導の個別化」を目指さなければなりません。

学びの方法・思考パターンをご紹介

個別最適をつくる思考の流れ

では、実際に私が提示している学びの方法・思考パターンを紹介します。私はこの図を場面に合わせて子どもたちに提示しています。
まず前提として、子どもたちには「個別最適な学び」という名で教えず、「ベストセレクション」という名前でお伝えしています。子どもたちに提示するいかなる活動も、言いやすく、愛着が持てそうな名前に変えて伝えることもとても大切です。
私は大まかに次の4つに分けて提示しています。

 ①問題と対話
 ②わからなくて困った
 ③書き終わった
 ④さらにレベルアップ

この4つの項目について、このコラムを読んでいただいている読者の皆様が納得し、実践できるように少し細かく説明していきます。

①問題と対話

「①問題と対話」では、問題への取り組み方を提示しています。まず、問題をもらって自分のベストの力が出る学びの方法は何かを自分で選択させます。

一人で…周りの助けをもらわず、一人で取り組みます。特に、学習に得意意識がある子が選択します。
ペアで…隣の席の子と一緒に問題に取り組みます。特に、学習に苦手意識がある子が選択します。しかし、苦手意識がある子はペアと学習するという選択をすることさえも選べない可能性もあります。そのため、授業者や隣の席の子の声掛けが必要になります。この経験から、学習面だけでなく自分の苦手なことはペアの力を借りると良いという思考を生み出したいです。
グループで…近くの席の人とグループを組んで一緒に問題に取り組みます。特に、図工の授業や理科の実験など、活動する学習の場面で選択されることが多いです。

なぜ「問題を解く」ではなく、「問題と対話」という言葉を使っているのかは、別の実践編でお伝えします。

②分からなくて困った

「②分からなくて困った」では、自分の学びを支える方法を選択します。選択する項目から、自分が理解しやすい方法や、やる気に合った方法、自分の性格に合った方法を選択し、自分の学びを支えるベストな方法を選択し、実践します。

ペアから教えてもらう…隣の席の子が終わっていたら解き方を教えてもらいます。これは事前に座席配置を工夫し、学習の得意な子と苦手な子がペアになるように担任の配慮がある程度必要になります。
終わっている人を呼ぶ…問題を解き終えている人を呼び、解き方を教えてもらいます。後述する「③書き終わった」でも説明しますが、解き終えた子は黒板の前に出て教室を見回したり、机間巡視をしたりするので、この子たちを呼んで助けてもらいます。
パドレットからもらう…Padletを見て、解き終えた子の投稿を見て自分で学びます。私の学級では「Padlet」を活用しています。今回のテーマからずれてしまうのでPadletの使い方は別の機会で紹介します。Padletには解き終えた子の解き方が写真で投稿されています。それらを見て解き方を学びます。ここで特に救われる子は、自分のわからないを人に表現できない、人との交流に苦手意識がある子です。声はかけられないけれど、投稿を見れば様々な子の考え方に触れられ、そこから学ぶことができます。私の学級では、特に人気のある学習方法です。詳しくは実践編で写真付きで説明します。
先生からヒント…授業者が事前に準備したヒントになる紙を貰って問題に取り組みます。例えば算数科であれば、授業者は教科書に書いてある空欄補充になっている解き方などを紙に印刷して準備します。または、解き方を途中まで書いた紙を準備します。これらは、特定の机に置き、自由に取れるように事前に準備する必要があります。さらに、授業者の授業ノートを見せるのも良いと思います。
教科書を見る…教科書を見て解き方を学び、再度教科書を閉じて解きます。特に算数科で問題を解くときに選択される方法です。また、自分で教科書のQRコードを読み込んで学ぶ方法もあります。

まだまだ、「③書き終わった」や「④さらにレベルアップ」「提示する時に気をつけることや提示に頼る危険性」についてお伝えしたいことが盛り沢山です。
次回からは数回に分けて、上記の項目や「協働的な学びについて」、さらに私の「実践編」をお伝えしようと思います。
心と体がリフレッシュできる良い夏休みをお過ごしください。
沖縄に旅行される方は日焼け止めやサングラスなどをお忘れなく。


何卒。

石川 雄介(いしかわ ゆうすけ)

沖縄県那覇市立さつき小学校 教諭


沖縄県の小学校教員として10年以上、子どもも担任も楽しむ学級づくりや授業づくりを研究しています。
私のモットーは「合いのある学級づくり」で、特に『思い合い、支え合い、学び合い』に重きを置いています。
また、授業や生活の中で他者尊重の心を育む仕掛けや子どもの興味を惹くアイディアを考えるのが大好きです。
効果的な掲示物の作成や子どもも担任も楽しめるアイディアなど、多種多様な教育場面について伝えていきたいと思います。

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