2022.11.17
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ポモドーロ・テクニックを活用した子どもたちを飽きさせない工夫

自分の席に座って学習に取り組めない子が増えているという話をよく聞きます。はたして本当に座っている必要性があるのかという意見もありますが、集中力を長時間保てない児童はどの学級にもいるのではないでしょうか。
昨今、短時間の学習と休憩を繰り返す「ポモドーロ・テクニック」が注目されています。今回は、ポモドーロ・テクニックを教育現場でも応用できないかを考えてみたいと思います。

浦安市立美浜北小学校 教諭 齋藤 大樹

授業に集中できない子どもたち

各学級には、なかなか学習に集中できない児童がいると思います。学習内容を理解することが難しかったり、学習障害を抱えていたりする場合など様々な理由があるはずです。こうした子どもたちからすると、45分間以上座席に座ることは負担が大きいでしょう。

一方で、私が勤務している首都圏では、以前の記事で述べたように通塾率が高いため、既に大半の児童が教科書の内容を理解しているような場合も多いです。分かりきっている内容を何度も繰り返される中で、徐々に学習意欲が減っていきます。

私たち教師は、こうした子どもたちが飽きないように工夫を凝らします。アクティブラーニングを進め、主体的に対話をするような場面を作ったり、課題を工夫して提示したりします。このように教師側の学習の場づくりや課題提示、指導言などを工夫してきました。そうした工夫の中でも、今回は「時間」ということに着目し、子どもたちの集中力を向上させることができないかを考えていきたいと思います。

オーソドックスな授業時間について

横浜市の一部で1時数を40分間に削減したニュースが話題となりましたが、多くの学校の教育課程では、小学校は45分間、中学校は50分間と設定されているでしょう。

この1時数の授業を大きく「導入・展開・まとめ」の3つに分けている方が多いと思います。導入部分で課題を把握し、展開で自力解決を図り、グループ討議、集団での議論、そして終末部分で本時の振り返りをするというのがオーソドックスな時間の使い方でしょう。もちろん私も、主体的・対話的で深い学びを実現するためには、ある程度のまとまった時間が必要ですから、45分ないし50分間という時間は必要だと思っています。

ポモドーロ・タイマー動画の流行

ところで、近年動画投稿サイトでは「ポモドーロ・テクニック」というものを活用した動画が人気になっています。ポモドーロ・テクニックとは、イタリアの作家であるフランチェスコ・シリロ氏が考案した学習テクニックです。ポモドーロとは「トマト」という意味のようで、元々はキッチンタイマーを活用して行っており、その形がトマトだったことから名付けられているそうです。シリロ氏の執筆したポモドーロ・テクニックに関する書籍も出版されています(『どんな仕事も「25分+5分」で結果が出る ポモドーロ・テクニック入門』フランチェスコ・シリロ、CCCメディアハウス)。

ポモドーロ・テクニックを実際に活用し、学習用のタイマー形式にしたものがポモドーロ・タイマーと呼ばれるものです。ポモドーロ・タイマーで検索すると、20分~25分程度の学習と5分間の休憩を1セットとし、それが4セットほど繰り返される動画がたくさん見つけられます。こうした動画は、学習の度に見られるので再生数が取りやすいのでしょう。何百万回も再生されている動画も多く、人気の高さが伺えます。新型コロナウイルス感染症の流行と関連があるのでしょうか、2020年ごろから海外も含めて似たような動画が急に増えています。

ポモドーロ・タイマーの動画のコメント欄を見ると、小学生から大人まで様々な年代の方が学習をするときに利用していることが分かります。短い時間に集中して学習することを繰り返すので、疲れを感じにくいというコメントが多く見られました。実際に多くの方が、短時間の学習と休憩を繰り返すことで、学習や作業を長時間続けることができているのだと感じました。

場合によってはオーソドックスから離れることも大切かも

前述したように、先人たちは45分ないし50分という時間をどうやって活用するかを考えてきました。しかしながら、一方で最近では45分間かけて課題に取り組むことに困難さを感じる児童もいるのではないかと考えています。問題解決型学習などを実施することがあまり適しておらず、ささっと技能を身につけさせて反復練習を繰り返すことが求められることもあるはずです。

こうした場合には、ポモドーロ・テクニックを活用できるのではないかと考えました。先日、算数科の学習で45分間の授業を二つに分け、20分、20分で活動内容を設定しました。途中に休憩を入れても良いですが、さすがに少々勿体ないので間の5分間を友だちと自由に立ち歩いて意見交流をする時間にしました。45分という学習時間を更に細分化して学習に取り組ませました。

初めの20分間を友だちと協働的な学びを行うような内容を設定し、合間の5分間でお互いのノートを見ながら自由に意見を交換できるようにしました。その後の20分間で、タブレットやドリルを活用した問題演習などに取り組ませるなど、個別に最適な学びができるようにしました。

既にペア学習や近くの人の考えを紹介し合うことはやられている方も多いでしょうが、子どもたちに感想を聞いてみると、途中で自由に歩いて友だちの考えを見ることができる時間が楽しかったようです。体育科などは水分補給時間とすることも考えられるでしょう。

子どもたちの様子を見て、集中力がないような場合には、短時間の課題を次々に提示したり、途中に自由に動けるような時間を作ったりすることも一つのテクニックとして活用できるのではないかと思います。

終わりに

今回の実践は、算数科の「かけ算の筆算」で行いました。くり上がりの回数が少しずつ変化するなどの内容が繰り返される単元です。毎回の授業でじっくりと時間をかけて学級全体で考え方を検討するのも良いでしょうが、色々と時間の使い方を工夫することも大切ではないかと考え、記事にしました。

先に述べた中央教育審議会の答申には、「『二項対立』の陥穽に陥らず」と示されています。一斉授業か個別授業か、履修主義か修得主義か、詰め込みかゆとりかなどという二項対立的な考え方ではなく、状況や実態に応じて適切に選択することが大切なのでしょう。オーソドックスな時間の使い方だけではなく、短い時間で学習を繰り返したり、休憩を挟んだりするなどすることも子どもたちにとって学習意欲を高める刺激になるかもしれません。あえて学習時間の終わりに「個の学び」に戻すなど、時には変化を加えて硬直化しないことで、子どもたちが楽しんで学習に取り組むことができるのではないでしょうか。

今回もお読みいただきありがとうございました。



齋藤 大樹(さいとう ひろき)

浦安市立美浜北小学校 教諭


一人一台PC時代に対応するべくプログラミング教育を進めており、市内向けのプログラミング教育推進委員を務めていました。
現在は小規模校において単学級の担任をしており、小規模校だからこそできる実践を積み重ねています。

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